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知略的愛論

夕焼けの優しい色に染まった生徒会室にカタカタとキーボードを打ち込む規則的な音が心地良い。
遠藤和希は生徒会室の自分の椅子にちょこんと座り、パソコンが奏でる音楽を頬杖をつきながら聞いていた。
機械音を奏でるのはBL学園生徒会副会長(鬼畜眼鏡の帝王とも言う)中嶋英明である。
連日の雨で見回り(さぼり)が出来ず仕方なく生徒会業務に勤しんでいた学園の王は、久しぶりの晴天に、それはもう喜び勇んでこの生徒会室から脱走した。
王様確保の任を受けた啓太はまだ戻ってこない。
まあ、本気で脱走した王様を見つけるのは至難の業だ。
これは当分帰って来ないだろう。
よって、取り残された副会長は眉間のしわを深くしたまま己の業務を黙々とこなし、特にすることのない、手伝う気のない遠藤和希は、中嶋の鋭利な美貌を鑑賞するかのように眺めていた。
「中嶋さんって、本当にきれいですよねえ…」
僅かに眉が動いただけで中嶋の返答はない。
和希は気にした風もなく、夕焼け色に照らされた中嶋の冷たく整った横顔を見惚れたように見入っている。
「人間じゃないみたい」
「…ほう。だったらなんだ」
中嶋から返答があったので、和希は空色の瞳をまるくし、次いでふわりと笑った。
「なんだ、聞いてたんですね」
「お前は…ずいぶん大きな独り言を言うんだな」
「中嶋さんが聞いてくれてたらいいな〜と思って」
どこか甘えを含んだ声で言った。
「…」
和希はしなやかな動作で席を立ち、ゆっくりと中嶋の傍に寄り、顔をのぞき込んだ。
それでも中嶋の視線がパソコンから外れることはない。
「ねえ、中嶋さん。俺、今日、誕生日なんです」
キーボードを叩く音が途切れた。
「誕生日プレゼント、貰っていいですか?」
中嶋が和希に視線を向けようとした瞬間、柔らかな感触が中嶋のそれに触れた。
「ありがとうございます」
さらりと歌うような声とは裏腹に、和希の長い睫毛は控えめに伏せられ目尻は仄かに染まっている。頬から首筋にかけて上気したような色だ。
オレンジと赤に彩られた光の渦の中でも一際鮮やかに中嶋の目に映った。
「おい」
すっと離れていく柔らかな光を左腕に抱き込む。
赤を吸い込んだ淡い茶色がさらりと流れ、ことりと首を傾げた顔は、どこか幼くあどけない。
驚異の童顔だと思う。
これが我が学園の理事長様とはな。
自分より年上の、自分より遙かに幼い顔したきれいな顔を引き寄せ、深く唇を合わせた。
「もっといいものくれてやる。もちろん、ベッドでな」
和希の甘く匂い立つ耳元に低い囁きを注ぎ込む。

「せっかくですから、貰ってあげます」
童顔に艶やかな笑みをのせ、和希が挑戦的に笑った。

――ねえ、中嶋さん。誕生日プレゼント、ちゃんとくださいね。

『ネロリの小箱』のさくらさまより頂きました。
ご自身のサイトの和希ハピバss第二弾として中和を書かれていました。
その中和小説を私に下さったんです!!!(超興奮)
さくらさまの初書き中和小説を下さったんですよ。
もう…感動してしまいました。
さくらさまは1番鈴菱色が出るのが中嶋さんだと仰っていましたが、その通りに素敵な和希を書かれています。
頂いてから時間が経ってしまって申し訳ありません。
さくらさま、本当にありがとうございました。
     小説頂いた日 2011年6月12日  サイトUP日 2011年9月12日  

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