『Entrance Ceremony』に続き話
「何だって!?」
石塚からの電話に丹羽が声を張り上げた。
「和希…来てたのか!?」
『…と言いましても、10分しか時間を調節する事が出来ませんでしたが。』
受話器の向こうでは申し訳なさそうな、秘書の声。
和希を普段からよく見ている石塚の事だ、きっと上司の為にもきちんと時間を作りたかったのだろう。
「何言ってんだよ、石塚さん。石塚さんはこの多忙の中、時間調整したんだろ?」
『丹羽、君…』
「あんたの気持ち、嬉しいぜ。和希だってそう思ってる筈だ。」
上司の為に奔走してくれたのだろう秘書の気遣いが、嬉しい。
出来る事なら目の前でスーツ姿を見せたかったが、来ることすら想像していなかったのだ。
これ以上は、望まない。
忙しい時間の中、石塚が時間を作って…和希が自ら来てくれただけで充分だ。
『…そうですね、入学式から戻ってこられた時の和希様はとても嬉しそうでした。』
「マジっ!?ホントかよ?」
『ええ、車の中で恰好良かったと呟いていらっしゃいました。』
クスクスと受話器の向こう側から石塚の笑い声が聞こえる。
きっと、無意識のうちの、和希の独り言。
その後、2、3言話し、通話を終了させ丹羽は和希にメールを打った。
『入学式来てくれてさんきゅ、な。俺、かっこよかっただろ?』
簡潔に打って、送信する。
和希からメールが返ってきたのは、日付の変わった頃だった。
『哲也、入学おめでとう。哲也のスーツ姿?遠くて良く見えなかったよ。まぁ、馬子にも衣装って言葉もあるし、きっと似合ってたんじゃないか?機会があれば見せてくれよな。』
なんとも素っ気ない、メール。
だが…
「ったく、近くで見たいなら見たいって素直に言えばいいのに。」
メールの中に隠されたメッセージに気付いて、丹羽はにやける顔を抑える事が出来なかった。
おわり。
『star sapphire』の深月茶那さまより、頂きました。
小説『Entrance Ceremony』の続きの話です。
個人的なメールで頂いたのですが、この話を読んで気に入った私は即座に「ウチのサイトのGIFTにUPしますね」と言って無理矢理許可を取りました。
唖然としてしまった茶那さん、ごめんなさい。
でも、素敵なお話なんですもの。
私1人が読むのはもったいないですから…ね♪
照れ隠しで『きっと似合ってたんじゃないか?』と言う和希が可愛らしくて好きです。
茶那さま、本当にありがとうございました。
2009/4/20