和希の携帯が鳴った。名前を見ると丹羽哲也が表示されている。自分の顔がほころぶのがわかる。一呼吸入れて電話に出る。
「おっ、仕事中わりぃな。一緒に流れ星見ようぜ。なんとか流星とかいうやつだよ。」
「ペルセウス座流星群ですか?」
「おおっ、それそれ。」
「哲也、ペルセウス座流星群の見ごろはもう終わりましたよ。」
「えっ?そうなのか。なんだせっかく流れ星見ようと思ったのにな。」
ガッカリした声だ。
きっと肩をがっくり落としているんだろうなと電話の向こうの姿が目に見えるようだ。
「いいですよ。流れ星見ましょう。ペルセウス座流星群じゃなくても流れ星見えるかもしれませんから。たまにのんびり星空を見るのもいいですよね。それじゃ、仕事が終わったら連絡しますね。」
丹羽との電話を切ってから天気予報を見た。
夜から雨になっている。
「これじゃ、星は見られないなぁ。」
そう呟いていると、心配した石塚が
「和希様どうかしましたか?」
「今夜は雨になりそうだから、星を見るのは無理だなと思って…」
「そうですね、夜までには雨が降り出しそうですね。丹羽君との約束ですか?」
「そうなんだ。」
和希はふっとため息をついた。
最近仕事が忙しくてゆっくり会う事も出来なくて、そんな俺のために哲也は喜ばせようとしてくれてるんだよな。
どうしたものかと悩んでいたら石塚がほほ笑みながら、
「和希様私にいい考えがあります。お任せ下さい。」
「いい考え??わかった。石塚頼むよ。」
一方丹羽は、和希との約束できた嬉しさで顔がにやけていた。
「王様嬉しそうですね。何かいい事あったんですか?」
「おう、啓太か。今夜和希と流れ星を見るんだ。」
「それは良かったですね。でも…王様今夜は雨ですよ。」
「えっ、雨!まじかよ。」
丹羽はがっくり肩をを落とした。
「王様そんなに落ちこまないでください。星を見るのはやめて、他の事をしたらいいじゃないですか。」
「伊藤君そんな困った顔をしてどうかしたんですか?」
「あっ、七条さん。王様が今夜和希と星を見る約束したんですが、夜の降水確率は100%なんですよ。それで王様ががっかりしているんです。」
「そうなんですか。」
七条は少し考えると何かを思いついたようで
「なんとかできないこともないですが。丹羽会長僕に考えがあります。一つ借りですよ。」
「くっ〜七条ちゃっかりしてるな。ここはひとつおまえに任せるからよろしく頼むぜ。」
「わかりました。それじゃ僕は準備がありますから。伊藤君も手伝って下さいね。」
夜の8時に和希から仕事が終わったとメールが届いた。
よっしゃと丹羽は気合を入れると和希に返信した。
《俺の部屋に来てくれ。待ってるぜ。》
和希はメールを受け取ると石塚が準備してくれた荷物を持って丹羽の部屋へとむかった。
外にでると天気予報通り雨だった。
雨が降ったから哲也がっかりしているだろうな。
でもこれを持っていけばきっと喜ぶだろうな。
これを見たらどんな顔するかなと想像するだけで楽しくなってきた。
丹羽部屋の前に来るとコンコンコンとノックした。
と同時に部屋のドアが開いた。
「待ってたぞ。早く入った入った。」
和希を部屋に招き入れた。いつもに増してテンションが高い丹羽を見て
「哲也どうしたんだ。妙にはしゃいでいるみたいだけど、何かいい事でもあったのか?」
「いい事そりゃ久しぶりにこうやって和希に会えるんだから嬉しいのは当然だろ。和希は嬉しくないのか?」
「お、俺ももちろん嬉しいですよ。でもせっかく星を見ようと誘ってくれたのに、あいにくのお天気で星は見えなくて残念でしたね。」
「そのことなんだが、和希ちょっと目をつむってくれないか。」
「えっ?どうしてですか?何が始まるんですか?」
「まぁいいから、開けてもいいと言うまであけるんじゃないぞ。」
「わかりました。」
いったい何が始まるんだ?哲也の事だから色々考えたんだろうな。目をつむりながら色々考えたがいっこうに思いつかなかった。
「もう目開けてもいいぞ。」
ゆっくり目を開けるとそこは星空が広がっていた。
「うわっ!!凄い。哲也これどうしたの?」
「驚いたか?凄いだろ!俺が考えたんだぞ。」
「哲也これ本当に哲也が考えついたのか?」
じっと和希に睨まれたら、丹羽はそわそわしはじめた。
「和希そんな目で見るなよ。かぁ〜お前にそんな顔されたら俺弱いんだからさぁ。和希の御察しのとおり俺が考えたんじゃねぇーよ。」
きまり悪そうな顔して、頭を掻きながら答えた。
「和希と星が見れると喜んでたらよ、啓太が今夜は雨ですよと言うじゃないか。どうしたもんかと悩んでいたら七条と啓太が力を貸してくれたんだ。」
「なるほど、納得いきました。」
「まあ、そんなことどうでもいいじゃないか。星空を楽しもうぜ。」
「そうですね。とってもおしゃれですよ。」
「そう言えば和希そのでっかい箱なんだ?食いもんか?」
「違いますよ。哲也には関係ない。」
「あん、なんか怪しいだよな。和希俺の目を見ろ。」
「なんですか怪しくなんかないですから。ちゃんと見れますよ。」
そう言って和希は丹羽の目をじっと見つめた。
すると丹羽はいきなり変な顔をした。
その顔があまりにもおかしくて和希は吹きだして大笑いした。
「急になんですか。そんな顔をしたら可笑しくてお腹が痛くなるよ。」
また和希は大笑いしている。
その隙を見計らって和希の持ってきた荷物を奪い包みを開けると、なんと今丹羽の部屋にある物と同じものだった。
「和希一体これはなんだよ。」
和希は頬をポリポリ掻きながら
「それは、雨で星が見れないとぼやいたら石塚が準備してくれたんだ。」
二人は顔を見合わせると大笑いした。
「俺達恵まれてますよね。困ったり悩んだりしてると、手を貸してくれる人達がいる。ありがたいですね。」
「そうだな。俺達幸せにならないとな。なあ和希2週間ぶりなんだからいいよな。」
「そんなに慌てなくても、夜は長いですよ。俺明日は仕事休みだし、せっかくのプラネタリウム楽しみましょうよ。」
「いや、もう我慢できない!!それじゃ星見ながらしようぜ。ロマンチックで盛り上がる事間違いなし!」
「哲也…お手柔らかにお願いしますよ。」
顔を真っ赤に染めて俯きながら言った。
二人は満天の星の下で、求め合い一つになって愛を確かめ合った。
甘い甘い二人の夜に星たちも祝福しているようだった。