Sweet Sweet Home

「な、中嶋さん・・・」
キッチンに立っていた和希は不思議な状況に首を傾げながら背後の人物に声をかけた。


「何だ?」
「えっと・・・」
「言いたい事があるならはっきりと言え」
「はあ、それじゃあ」
和希はごほんっと喉を鳴らすと中嶋に振り向いた。
「離して下さい」
「嫌だ」
即効で返ってきた返事にフッと顔に影を落とすと、腰に巻きついている中嶋の腕を無理やりに剥がそうと力を入れるがびくともしない。
「いったい何なんですかっ!」
「何を怒っている?」
「怒りたくもなりますよ、いきなり後ろから抱きつかれたと思ったらそれっきりで微動打にしないんですよ!何がしたいんですか!わけ分かりませんよ!!!!」
目じりを吊り上げて怒る和希の頬に形の良い唇を付けると、ふっと優しく微笑んだ。
「・・・何なんですかぁ」
頬を赤くして大人しくなった和希にクスッと笑みを零すと、中嶋は和希が持っていた包丁を取り上げまな板の上に置く。
「料理はしなくていい。また、お前の指に傷を作らせたくは無いからな」
「っ!」
以前包丁で切ってしまった人差し指の薄い傷痕に唇を寄せる中嶋に、和希はカァッと全身を赤く染めた。
「な、中嶋さんってそういうキャラでしたっけっ!?」
「どうだったかな」


出会った頃は冷たい感じの人だと感じていたが、付き合いが深くなればなるほど心根は優しい人なんだと感じる事が出来ていた。
そして、一緒に住み始めた今、和希は物凄く甘やかされている。
と、思わずに居られないほど過保護に愛されている事を感じていた。
「何か・・・成瀬さんみたいですね・・・」
「・・・」
一瞬の内に中嶋の目に冷たい光りが宿ると、和希は、アッと声を漏らし苦笑しながら頬をかいた。
「俺が卒業した後に、随分と成瀬と仲が良かったらしいな。成瀬にもこんな事されたのか?」
「ち、違いますよ!!されてませんし、仲も良く無かったですって!!向こうが勝手に付きまとってきていただけで」
「それでも、今だに連絡を取ったりしているだろ」
「連絡を取っているというか、勝手に電話が掛かってくるんですからしょうがないでしょ!?」
「出なければいい」
「出なければいいって、成瀬さんからは仕事の連絡も来ますし、出ないなんてできませんよ!」
「チッ、まったく、お前の立場というのを疎ましく思う日が来るとはな」
「・・・俺の事、嫌いになりました?」
「・・・はぁ。そんな訳ないだろう。できる事なら何処かに監禁して部屋から動けなくしたいくらいだ」
「監禁って・・・せめて閉じ込めてって言えないんですか?」
「同じ意味だろう」
「そうですけど・・・」
苦笑する和希に、中嶋はクスッと微笑むと和希の耳元に唇を寄せた。
「逃がしたくないと思うほど、お前を愛しているという事だ、和希」
囁かれた声と言葉にゾクッと身震いさせると、少し照れながら微笑を返した。
「・・・俺も、愛してますよ」
幸せそうに微笑んだ中嶋を見て、和希もより一層柔らかな微笑を返したのだった。





『香煉』の由羅セリカさまより頂きました。
以前由羅セリカさまのサイトのエチャに参加させてもらってその時に「私、王様のお誕生日の1週間後が誕生日なんですvv」と言ったらお誕生日お祝いに新妻和希の話を中和で書いて下さると仰って下さいました。
その時に頂いたお話です。
もう…和希ってば中嶋さんにこんなに愛されて羨ましいです。
中嶋さんも和希の前だと可愛くなってしまうんですね♪
の由羅セリカさま、素敵なお話をどうもありがとうございました。
              2009/1/10