和希のお誕生日まで後5日

こんな風に始まる恋もあるかもしれない(成瀬→和希)

「遠藤が好きなんだ。」
そう告白されて、
「俺も好きです。」
なんて言うと本気で思ったのだろうか。
この間まで『ハニーvv』と呼んで啓太を追いかけ回していた人物がいきなり、『実は僕の本命は遠藤だったんだよね』と言われて誰が信じると思うだろう。
でも、その事は啓太は知っていたようだ。

成瀬から告白された日の夜、啓太が和希の部屋に訪ねて来た。
「ごめんね、和希。」
「どうしたんだ、急に謝ったりして。」
「実は俺…成瀬さんに頼まれて協力してたんだ。」
「協力?」
「うん。実は成瀬さん、入学式の日に和希に一目惚れしたんだって。」
「ふ〜ん、それで?」
冷たく答える和希に啓太は慌てて言った。
「成瀬さんがね…こんなにも惚れた事がなくどうしようかと途惑ってしまったんだって。」
「へえ〜、あの恋愛に関して何の問題もなさそうな人が途惑うんだ。」

和希の棘のある言い方に啓太は困った顔をした。
「あのね、成瀬さんどうにか和希に振り向いてもらいたかったんだけど、いくらアプローチをかけても和希は無視して相手にしてくれないって困ってたんだよ。」
「俺、アプローチをかけられた記憶がないんだけどね。」
「だから!和希は成瀬さんの事相手にしてなかったからでしょ。」
「相手にって…第一それっていつの話だ?」
「俺が入学する前だって成瀬さんが言ってたよ。で…俺が入学してきて成瀬さんが俺にちょっとちょっかいを出したら和希が反応しただろう?それが成瀬さん凄く嬉しかったんだって。」
「何でそれが嬉しいんだ。」

怪訝そうな顔をする和希に、
「だって、和希の表情豊かな顔が見れたんだよ。成瀬さんは凄く嬉しかったんだって。だから俺に頼んできたんだ。和希にヤキモチをやかせたいからこうして時々ちょっかいを出させて欲しいって。」
「で…優しい啓太はその言葉を信じたんだ。」
「…和希…今の言葉、棘があるよ。」
「そりゃ、そうだろう。仮にその話が100%ホントだとしよう。俺はそんな卑怯な真似をする奴は嫌いだね。」
「和希〜!!」

啓太は焦って、うろたえた。
「本当に俺が好きなら直球で攻めてくればいいだろう?そんなまわりくどい事をする相手は俺は嫌だね。」
「でもね…成瀬さんは…」
「啓太。その話はもう終わりにしよう。」
和希にそう言われ、啓太は黙る事しかできなかった。

「あの時確かに直球で攻めてくればいいだろうと言ったけどさ。けど、いくらなんでもこれはやりすぎじゃないかな。」
和希はため息を付いて携帯を見つめた。
おそらく啓太から聞いたのだろう。
あの啓太との会話以来、成瀬は人が変わったように和希に言い寄ってくる。
「好きだ」「愛してる」「僕の想いを受け取って欲しい」etc…
それは人目を避ける事なく、成瀬が和希に毎日言い続けている言葉だった。

そしてつい口が滑って教えてしまった携帯のメール番号。
日々、入ってくるメールに和希はうんざりしていた。
大体、メールに『愛しいハニーvv』と打ってくる奴がいるなんて思わなかった。
けれども、もっと不思議なのはそんなメールをもらっても何とも思わない自分がいる事。
「もしかして慣らされてるとか?まさかな…」
和希は携帯を閉じながらそう呟いていた。






強引な成瀬さんの想いに押し切られそうになっている和希の話です。
和希はまだ、成瀬さんを好きだとは意識していませんが、かなり気にはなっています。
啓太は和希が幸せになるなら構わないと思っています。
さて…
これから和希と成瀬さんはどうなるのでしょうか?
皆様の中で想像してみて下さいね。
                      2009年6月4日