和希のお誕生日まで後2日
ある放課後の出来事(西園寺×和希)
「…あの…西園寺さん…?」
和希は困った顔をしながら、西園寺を見つめて言った。
西園寺はさっきから黙ったままじっと和希を見つめている。
和希はどうしようかと悩んでいた。
事の起こりは数分前の出来事だった。
体育祭が近いのでクラス対抗の競技の練習の為、放課後に残って練習をした後教室に戻ろうとした和希は運悪く西園寺と七条の2人に会ってしまった。
この2人に会う事が嫌だった訳ではなかった。
今の姿を見られたくなかったのだ。
今の姿…
和希は半袖の体操着に短パンを履いていた。
普段は滅多に履かない短パンを履いていたのには訳があったのだが、短い間だしいいかと軽い気持ちでいた。
だから、まさか練習が終わって啓太と一緒に教室に戻る途中で会計部の2人に会うとは思わなかったのだった。
「おや?遠藤君。随分と艶めかしい姿で歩いているのですね。」
「なっ…艶めかしいって…」
「七条さんもそう思いますか?実は俺も思ってたんです。」
「け…啓太…?」
「だって、和希っていつもジャージばかりで滅多に短パンを履かないだろう?俺、和希の短パン姿を一度見てみたかったんだ。」
「そういえば、僕も初めて見せて頂きました。遠藤君の生足は綺麗ですね。」
クスクスと笑いながら言う七条に和希はムッとして答える。
「何を考えているんですか?七条さんは。な…生足なんて…そんな言葉を使わないで下さい。」
「おや?これは失礼しました。少し品が無かったですね。」
「品とか、そういう問題じゃないかと思うんですが。」
そこまで言った和希はさっきからジッと和希を見ているだけで黙っている西園寺に気が付いた。
「あの…西園寺さん。どうかなさったんですか?」
いつもと様子が違う西園寺に和希だけでなく、七条も気が付いた。
七条は啓太の側に行くと、
「さあ、伊藤君。伊藤君にはこれから会計部で手伝って欲しい仕事があるんです。今すぐに僕と一緒に来てくれますか?」
「えっ?今すぐにですか?」
「はい。もちろん着替えを終わらせて帰り支度をしてからで構いません。さあ、行きましょう。」
七条はそう言うと啓太の背中を押すようにその場を去って行ってしまった。
後に残った和希は不機嫌そうな西園寺を前に困っていた。
暫くした後、西園寺は大きいため息と共に一言言った。
「和希…これ以上私を惑わして何がしたいんだ?」
「は?惑わすって?どういう意味ですか?」
真面目な顔で聞いてくる和希にもう一度ため息を付きながら、
「無防備にそんな格好を人前に姿をさらすな。」
「は?そんな格好って…俺そんなに変な姿をしてますか?」
和希は身体を捻りながら自分の姿を確認する。
その姿に西園寺は目眩がした。
和希は自分の容姿に無頓着である。
和希自身は自分は普通だと思っているが、世間では西園寺と違う意味で綺麗な姿をしている。
それだから、普段から気を付けてもらいたいと西園寺は思っているのだが、その思いは和希には届かない。
今だって半袖、短パン姿でいる事がいかに危険だか分かっていない。
そんな色気のある姿でこの学園の中を歩き回って欲しくはないのだ。
現に放課後に練習していた時もその姿に見とれていた人物は少なくない。
だが、鈍い和希がそれに気付くわけもなく普段と同じように過ごしていたのだった。
途惑った顔で西園寺を見つめている和希に西園寺は言った。
「和希。すぐに私の部屋に来い。」
「今すぐにですか?俺、教室に着替えと鞄を置いてきてますのでそれを取ってからでいいですか?」
「そんなものは既に臣が持って会計室に行っているだろう。夜にでも私の部屋に届けてくれるからそれを受け取るがいい。」
「七条さんがですか?でも、どうして?」
「今の和希に言っても分からないだろうから、部屋に戻ってその身体に直接教えてやるから覚悟するんだな。」
フッと綺麗な微笑みを浮かべる西園寺だが、今の和希にはそれが恐ろしいものに思えた。
「あの…西園寺さん…酷い事なんて…しませんよね?」
「さあな。和希しだいだな。さあ、行くぞ。」
寮に向かって歩き出した西園寺の後を、和希は慌てて付いて行く。
なぜ、こういう事になったのかと不思議に思いながら…
あちらこちらで体育祭が行われています。
体育祭と聞いて思いついた話です。
体育祭当日でも良かったんですけどね。
短パン姿に焦る西園寺さん…
和希の生足は恋人以外には見せてはいけないと思ってます(笑)
2009/6/7