和希のお誕生日まで後1日

パラレル小説『島での生活』の番外編(丹羽×和希)

緑の美しいこの島で丹羽と和希が一緒に生活するようになって数ヶ月が経っていた。
季節はもうすぐ夏を迎えようとしている。
『俺は和希と一緒に住みたい!!』
散々ごねる丹羽を無視して今だに和希と丹羽は別々に暮らしている。
と言っても、殆ど同棲していると言って過言ではない。
和希は学校が終わると、夕食を作る為に丹羽の所に行くのが日課になっていた。
和希の手作りの夕食が食べられるので丹羽は毎晩ご機嫌だった。
恥ずかしがりやの和希はそんな丹羽に、
『哲也先輩は1人暮らしですし、駐在所のお仕事が忙しいので俺が仕方なく作ってるんです』
そういつも言っていた。

昔から家事全般をやっていた和希は家事については何でも一通りの事は完璧にできていた。
その中でも料理は得意な方で、丹羽の好みを把握した和希は丹羽の健康を考えながら美味しい料理を作っていた。
実は料理だけでなく、洗濯も和希はしていた。
放っておくと丹羽は何日も洗濯物をためてしまう。
だから和希は毎日夕食を作るついでに自分の洗濯物を持って丹羽の所に行き、一緒に洗濯をするのであった。

「なあ、和希。」
「なんですか?哲也先輩。」
駐在所の奥の部屋で洗濯物にアイロンをかけている和希に丹羽は言った。
「毎日ここで俺と和希の分の洗濯をして、それを取り込んでアイロンかけるのってめんどくさくないか?」
「別に…苦にはなりませんよ。」
何でも無い顔をして和希は答える。
「でもよう。洗濯してアイロンをかけた和希の服を毎日持って帰るのはめんどくさいだろう?」
「いいえ。それにほおっておくと哲也先輩、洗濯しないでしょ?」
丹羽は頭を掻きながら、
「まあな、めんどくさいからつい…」
「でしょう?ついでですから気にしないで下さいね。」
和希はクスッと笑いながらアイロンがけが終わった服を畳んでいた。
「そろそろ夕ご飯にしましょうか?」
「おっ!その言葉待ってたぜ!」
子供みたいに嬉しそうな顔をする丹羽を和希は微笑んで見つめていた。

そんなある日…
「あっ、和希先生。ここ虫に刺されているよ。」
「ホントだ。真っ赤になってる。痒くない?」
休み時間に生徒達に聞かれ和希は首を傾げる。
虫さされ?
どこに?
痒い所はないんだけどな?
和希はそう思って生徒達に聞き返した。

「特に痒くはないけど…どこか赤くなってるの?」
和希がそう聞くと生徒の1人が指を指して、
「うん、ここ。和希先生、ホントに痒くないの?」
生徒が指を指した所は首の付け根の所。
こんな所に虫刺されの痕?
暫く考えた後、和希はハッと気付き、真っ赤な顔になった。
「和希先生?」
「先生、顔真っ赤だよ?どうしたの?」
生徒に聞かれて、和希は焦る。
「あっ…何でもないよ…そう…ここね…虫に刺されたんだけどつい掻いちゃったんだ。でも、強いクスリを付けたからもう痒くないんだよ。心配してくれてありがとう。」
そう答えた和希に生徒達は安心した顔を見せた。

その晩、和希は丹羽の頬を叩き二度と丹羽には抱かれないと激怒して言った。
そんな和希に丹羽はひたすら謝り続けていた。
そしてやっとお許しをもらった丹羽はホッとしながら心の中で呟いていた。
「まったく…キスマーク1つ付けただけでこんなに苦労するとは思わなかったぜ…」






アンケートで西園寺さんと同票だった王様。
王和は以前サイトで書いたパラレル小説『未来への扉』の続編『島での生活』の番外編を書かせてもらいました。
キスマークを生徒に指摘され焦る和希。
この話をいつか書いてみたかったので、今回書けてとても嬉しかったです。
王様は自分のものだって証にキスマークを付けたがるのですが、和希は凄く嫌がります。
人に見られたら困ると言って…
でもって、キスマークをつける、つけないかで喧嘩する王様と和希。
そんな話もいつか書いてみたいです(笑)
                     2009/6/8
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