Happy Birthday Kazuki

大好き(七条×和希)

「何ですか!これ!」
七条から受け取った紙袋の中を見た和希は思わず叫んでしまった。
驚いている和希に比べ、いつもと変わらず冷静な七条。
「何って見ての通りの物ですが、説明いたしましょうか?」
「いえ…結構です。」
和希は首を振って答えた後、
「もしかして、俺にこれを着ろって言うんじゃないでしょうね。」
「もしかしなくても、和希が着るんですよ。」
七条は何を当たり前の事を聞くのかという顔をして、
「和希が言ったんですよ。何でも1つだけ僕のお願いを聞いてくれると。」
「約束?」
「ええ。もしかしてもう忘れてしまったのですか?やはり若く見えても歳は隠せませんね。」
「なっ…俺はそんな年寄りじゃありません!」
「それなら覚えていますか?」
「…うっ…」
言葉を詰まらせた和希に七条は助け船を出す。
「この間出かけた時に和希が言ったんですよ。」
「この間?……あっ!!」
「思い出して頂けましたか?」
「あっ、はい。思い出しました。」

それはつい先日の事だった。
その日は偶々授業が午前中までしかなく、運良く和希の仕事も夜に接待だけだったので、七条のお薦めのカフェに行こうという事になった。
だが、カフェの前まで来た時、和希の携帯がなったのだった。
その電話の内容は緊急なもので、和希はすぐに学園に戻らなくてはならなくなった。
店の前まで来たのに、仕事で帰らなくてはならなくなった和希に七条は気にしないように言ったのだが和希は申し訳ない思いでいっぱいだった。
早く学園に戻るように言う七条に、
「今日のお詫びに七条さんがしたい事を何でも言って下さいね。」
「それは嬉しいですね。でも本当に何でもいいのですか?」
「はい、もちろんです。楽しみに待っていますね。」
その言葉を聞いた七条は嬉しそうに微笑んでいた。
「あの…七条さん…俺、確かに言いましたけど。まさかと思いますが、それがこれですか?」
「ええ。そうです。お気に召しませんか?」
「…」
気に入りません…と喉まで出た言葉を飲み込みながら和希は言った。
「約束ですから。七条さん、着替えるのに脱衣所をお借りしますね。」
「はい、お願いします。」
和希は紙袋を持つと脱衣所に向かった。
脱衣所に入った和希はすぐに出てくると、
「七条さん!」
「何ですか?」
「あの…これって…」
「ああ、もちろんそれも着て下さいね。」
「…本気ですか?…」
「はい。」
「…変態…」
和希はボソッと言った。
「何か言いましたか、和希?」
「いいえ、何にも言っていません。」
和希は慌てて脱衣所に戻ると、紙袋の中のものを見てため息をついた。
「仕方がないか…約束は約束だからな…」
そう言った後、開き直ってその服を着たのであった。
「良く似合ってますよ、和希。」
「…ありがとうございます…」
嬉しそうに言う七条にふて腐れている和希。
七条が和希に渡した紙袋の中には服が一揃い入っていた。
中味はメイド服だった。
胸元に大きいリボンがついた黒のミニワンピース。
スカートの裾からは繊細なレースが零れている。
そしてメイド服といえばお決まりの真っ白なレースをふんだんに使ったエプロン。
白いメッシュのストッキングに黒のエナメルの靴。
七条は和希の側に来るといきなりぴらりとスカートを捲った。
「…なっ…」
和希は慌ててスカートを押さえると七条を睨んだ。
「何するんですか!!」
「ちゃんと下着も取り替えてあるかどうか確認しただけですよ。」
メイド服と一緒に入っていた下着(繊細なレースがついた真っ白な女性用)を着るかどうか和希は着替える前に七条に聞いたのだった。
「ちゃんと着替える前に七条さんに聞いたじゃないですか。」
「そうでしたね。」
そう言った後、
「思った通り、とても可愛いです。」
「気に入ってもらえて何よりです。」

既にやけになっている和希。
その様子がおかしくて七条はクスクスと笑う。
「何がおかしいんですか、七条さん?」
「いいえ。そうだ、折角ですからご主人様と呼んでもらいましょうか?」
「はい?」
呆れ顔の和希を気にせずに再度七条は言った。
「和希は僕のメイドですから。さあ、言って下さい。」
「…う゛…」
「どうしました?」
七条は和希を顔を覗き込む。
「…どうしても言わなきゃ駄目?」
「はい。どうしても聞きたいんです。」
「…ご主人様…」
囁くように言った声は聞き取りにくく、もう1度言って下さいと言われてしまう。
顔を真っ赤にしながら、
「ご主人様。」
「はい。よく言えましたね。」

「こんな事して楽しいんですか?」
「ええ。もちろんです。」
「……やっぱり変態だ……」
先程と同じ事を言ったのに、今度はちゃんと反応してくれた。
「おや、知らなかったんですか?僕が変態だって事を。」
「自覚しているんですか?」
「はい。そして変態な僕にベタ惚れな和希の事もね。」
チュッと音を立てて掠めるだけのキスをした七条に参ったと言う顔をした和希。
「どんな貴方でも大好きですよ、臣。」
「和希ならそう言ってくれると思ってました。僕も和希を愛してます。」






『和希聖誕祭』ラストはアンケートで1位の七条臣さんでした。 『変態プレイでおねがいします!』というコメントを頂きました。 今回で1番難しかったテーマです(笑) どうしようと悩んだ結果、和希にメイド服を着せてご主人様と呼ばせる事にしました。 この後ですが、もちろん七条さんに美味しく頂かれる和希です。 何しろ、男の人が服をあげるのは脱がせる為ですからね(笑)                      2010年6月9日