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ケーキの後は…

「わ〜。美味しそう。」
嬉しそうな顔をして啓太は言う。
その笑顔は周りを魅了してしまう。
そう、側にいた七条は当然だが、和希まで見とれてしまっていた。
「和希もそう思うだろう?」
屈託のない笑顔を和希に向けた啓太は不思議そうな顔をした。
「和希?どうしたの?」
「えっ?い…いや…何でもない。」
「でも…」
「いや、本当に何でもないから。それよりも美味しそうなマロンケーキだな。さすが、七条さんが選んできたケーキですね。」
「この秋の新作だそうです。ネット注文のみの数量限定品だったのですが、手に入って僕も驚いているんですよ。」
「数量限定品なんですか?凄いです、七条さん。」
啓太は驚いた顔をした。
そんな啓太に微笑みながら、
「僕には伊藤くんが付いていますからね。」
「俺ですか?」
「はい。伊藤くんは強運の持ち主ですからね。伊藤くんの側にいる僕にも強運が付いてきたようです。」
「そんな…」
嬉しそうに頬を赤らめる啓太。
「今日は暖かいですから、外でのティータイムにして丁度良かったですね。」
そう言いながら七条はポットの中の紅茶をコップに入れた。
「どうぞ、伊藤くん、遠藤くん。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうございます。七条さん、俺まで誘って下さってありがとうございます。」
「美味しいものは大勢で食べると美味しさが増しますからね。ご一緒して下さって僕こそ嬉しいですよ。本当は郁も誘いたかったのですが、郁は甘い物が苦手なので断られてしまいました。」
残念そうに七条は言った。

「おや、伊藤くん、頬にクリームがついていますよ。」
「えっ?どこに?」
「ここですよ。」
そう言いながら、七条は指で啓太の頬の生クリームを取った。
「ありがとうございます。」
「おや、これでは足りませんか?」
七条は啓太に近づきと頬をペロッと舐めた。
一瞬、何があったか理解できなかった啓太だったが、七条のごちそうさまです、の一言でハッとすると頬を片手で抑えながら、
「もう!七条さん!何するんですか!」
「何って…頬に付いた生クリームを取ってあげただけですよ。」
「取るだけなら指だけで十分でしょう?それをな…舐める…なんて。」
「おや、お嫌いでしたか?」
悲しそうな顔をした七条を見て啓太は慌てて、
「違います。嫌いじゃないです。」
「本当ですか。無理して言ってるのではありませんか?」
啓太は首をブンブン振ると、
「違います。そんな事ありません。」
「そうですか。ホッとしました。」
嬉しそうに笑う七条に啓太も笑い返す。
幸せな気分の啓太はその時は気づいていなかった。
和希がその場にはもういなくなっていた事に…
七条が啓太の頬を舐めた時、和希は席をソッと立ち上がった。
いつもの事なので、この後の2人の様子は簡単に想像ができる。
このままここにいても2人だけの世界に入ってしまうので、その前にお邪魔虫は消えた方が無難だと判断したからだ。
七条は和希が立ち上がった時に気が付いていて、目で合図を送ってくれた。
だから、自分がいなくなっても七条が啓太にうまく言ってくれるだろうと和希は思っていた。

「もうちょっとあのマロンケーキを食べたかったなぁ…」
「相変わらず甘い物が好きだな。」
「英明?」
突然姿を現した中嶋に和希は驚いていた。
「どうしてここに?」
「偶々通りかかっただけだ。」
「偶々ですか?」
どう考えても中嶋が偶々通りかかる場所ではない。
でも、それ以上詮索してもきっと中嶋は何も言わないと分かっているのでもう聞かなかった。
「英明はこれから学生会の仕事?」
「ああ。その前にこれを和希に渡そうと思っていた。」
「えっ?」
和希は目の前に差し出された包みを受け取った。
「開けてもいいですか?」
「ああ。」
綺麗に包装されている包みを丁寧にはがす。
「あっ…綺麗…」
中を見た和希は感嘆の声を出す。
中身は上生菓子だった。
さざんかの花、千代菊、もみじ、そしてくまの顔をした菓子まで入っていた。
「気に入ったか?」
「あっ…はい。でも、これどうしたんですか?」
「親の知り合いに和菓子職人がいてもらったんだ。だが、俺は甘いものは好きじゃないからな。和希なら喜ぶと思って持ってきたんだ。」
「はい。嬉しいです。俺、くまの上生菓子って初めてみました。」
「そうか。」
「はい。食べてもいいですか?」
「ここでか?時間があるなら学生会室で食べたらどうだ。日本茶はないが、コーヒーなら入れてやる。」
和菓子にコーヒーは合うかどうかは分からなかったが、中嶋の気持ちが嬉しかった。
「お言葉に甘えて、お願いします。」
嬉しそうに微笑む和希に中嶋も微笑み返すと、2人して学生会室に向かって歩き出したのだった。

中嶋さんお誕生日月間第2話は中嶋さんがちょっとしかでないお話です。
いつも啓太や七条さんとお茶をする和希。
七条さんに対抗したのはどうかは定かではありませんが、和菓子を和希にプレゼントしました。
学生会室での甘〜いティータイムvv
和希の頬に餡が付いて、それを取る中嶋さんを想像して頂けたら幸いです。
和希、中嶋さん、2人きりの世界を存分に堪能して下さい。
                  2011年11月14日

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