誕生日カード
「あれ?これってなんだ?」
BL学園の制服からいつもの理事長スーツに着替えた和希は机の上にいつもは置いてない封筒を見つけた。
青い…晴れた夏の空の色をしたその封筒には名前も何も書かれていない。
封筒を持ち上げると封はしていなかった。
和希が中を見ると封筒と同じ色をしたカードが入っていた。
カードを取り出し中を開いて読んだ瞬間、和希の顔が真っ赤になった。
「な…なんで…」
耳まで赤くして和希はうろたえた。
その時、理事長室の扉がノックされ石塚が入って来た。
和希は石塚の顔を見るなり、
「石塚、これは?」
「和希様のお誕生日カードです。」
サラッと言う石塚に、
「石塚、俺の誕生日は今日じゃないけど。」
「はい。存じております。和希様のお誕生日は6月9日です。」
「なら、どうして今頃誕生日カードをくれたんだ?」
不思議そうな顔をする和希に石塚は微笑みながら、
「和希様のお誕生日当日は学園の生徒さん達にお祝いして頂いてお忙しいそうでしたので、私からのお祝いはできませんでした。」
「そうだけど…」
和希は6月9日を思い出していた。
啓太が中心になって王様の部屋で、お祝いしてもらったんだ。
和希の誕生日と言う名を借りた飲み会だったけれども。
けれども、鈴菱としての誕生日しか知らない和希にとってはとても嬉しいものだった。
「俺は…石塚が…祐輔が俺の側にいてくれるだけでいいんだ。」
「和希様…」
「違うだろう?祐輔。様はいらない。」
「和希…貴方の誕生日を祝わせてもらっていいですか?」
黙ったままうなずいた和希を、石塚は優しく抱き締めた。
カードに書かれていたのは…
『お誕生日おめでとうございます。
咲き誇る薔薇のような笑顔を拝見するために私はこの世に生を受けました。
いつまでもその笑顔を私に見せて下さい。』
最後のカードの内容を書きたくて思いついた話です。
和希のお相手を誰にするか悩んだのですが、カードの内容から石塚さんに決まりました。
書いていて私の方が恥ずかしくなりました。
2009/8/22