〜Children's Day〜
“コンコン”
理事長室のドアがノックされ、石塚が部屋に入って来た。
「和希様、そろそろ休憩になさいませんか?お茶とお茶菓子をお持ちしました。」
「う〜ん、そうだな。そうするか。」
理事長の椅子に座って仕事をしていた和希は、腕を伸ばした。
そして立ち上がると、中央にあるソファに座った。
和希が座ると石塚はテーブルの上に持ってきたお茶とお茶菓子を置いた。
「あれ?珍しいな、日本茶に和菓子なんて。いつもはコーヒーだけなのに。」
和希が不思議そうにそう言うと石塚は微笑んで答えた。
「今日は端午の節句ですので、美味しいと評判の和菓子屋で柏餅を買ってきました。柏餅にはコーヒーよりも日本茶の方がお口に合うと思いまして。」
「そうだな、和菓子には日本茶の方が合うな。ありがとう、石塚。」
「どういたしまして。」
「今日は端午の節句か…ごめんな裕輔、こんな日まで仕事をさせてしまって。」
理事長の顔から恋人の顔になる和希。
そんな和希を石塚は優しく見詰め、
「構いませんよ、和希。和希は一生懸命頑張っているんですから気にしないでくださいね。」
「う…ん、でも…休日出勤ばかりさせて悪いと思ってるんだ。」
「和希…」
石塚は和希の隣に座ると優しく頬を撫でる。
「たとえ仕事でもこうして和希の側にいられるだけで、私は幸せ者です。いくら側にいたくてもさすがに学園の中までは側にいられませんからね。」
「そうだな。それとも裕輔も学園に入るか?生徒は無理だから先生としてさ。」
「私はそれでも構いませんが、仕事はどうなさるんですか?岡田1人では到底さばききれる量ではないと思いますが?」
「それはそうだな。」
2人は顔を見合わせて笑った。
ひとしきり笑った後、和希はテーブルの上の柏餅に気が付いた。
「裕輔。この柏餅なんで色が違うんだ?普通は白だろう?」
「この時期だけの特別なんです。白はこしあん、緑はヨモギ餅につぶあん、ピンクはみそあんなんですよ。」
「美味しそうだな。」
「和希はどれがいいですか?」
「う〜ん、迷うなぁ?」
「なら、一口づつ味見でもしますか?」
「えっ?でもそれってお行儀が悪いんじゃ…」
「今は2人だけですから構わないでしょう?」
石塚はそう言うと1つ柏餅を取り、葉を取ると一口分口に含むと和希に口移しで食べさせた。
いきなりの事で唖然としたまま、それでも口に入った柏餅を食べる和希。
「どうですか?美味しいですか?」
和希は真っ赤な顔をしてコクンと頷いた。
石塚は満足そうに微笑むと、
「それじゃ、次はこれですね。」
そうして3つとも口移しで食べた後、石塚は和希に聞いた。
「どれが1番美味しかったですか?」
真っ赤な顔のまま和希はボソッと言った。
「そんなの…解るわけないじゃないか…」
「おや?どうしてですか?」
「裕輔の意地悪…」
和希は軽く拳で石塚の胸を叩く。
その手を石塚は優しく握り返すと、
「本当に貴方って人は…どうしてそんなに可愛いんですか?」
「なっ…可愛いってなんだよ。」
少し不貞腐れて言う和希の額に触れるだけのキスを落とす石塚。
「まったく、どこまで惚れさせれば気が済むんですか、和希は?」
「永遠に。ずっと俺に惚れてろよ、裕輔。」
嬉しそうに言いながら和希は石塚の胸に顔を埋めた。
遅くなりましたが石塚さん、お誕生日おめでとうございます。
お誕生日話にならなかったけどいいですよね?
熱々の和希と石塚さんを書いてみました。
5月という事なので柏餅を食べてもらいました。
この話に出てくる柏餅ですが、うちの近所の和菓子屋でこの時期だけ売っている柏餅なんです。(普段は白いこしあんの柏餅だけなんです)
ちなみに岬悠衣はピンク色をしたみそあんが1番好きです。
2008/5/1