Come Across
初めて出会ったのは桜の花の舞う4月の入学式。
入学式に在校生代表として出席する為、講堂に向かっていた俺は今日も桜が綺麗だろうと思って桜の木の方を向いた途端、足が止まった。
そこには…
桜の花よりも綺麗な青年が立っていた。
あんなに綺麗な人がこの学園にいたなんて今まで知らなかった。
その時、風が吹いてその青年がこちらを向いた。
息をするのも忘れるくらいの美しさだった。
こんなにも美しい人を神はこの世に誕生させる事ができるだなんて感動してしまった。
ふと目に止まったその人のネクタイの色は緑だった。
そう…彼は新入生だったのだ。
この美しい人と自分はたった1年しかこの学園で一緒にいられない。
けれども、この1年を短く感じさせるのも長く感じさせるのも全て自分なのだから。
俺はこの出会いを大切にしたいと思っていた。
入学式の後、偶々その青年と会った。
「君…名前を聞いていいかな…」
「あっ…はい。遠藤和希です。今日からこちらで先輩方と一緒に学ばせてもらいます。」
「俺は…」
「3年の岩井先輩でしょ?」
「どうして俺の名を?」
驚く岩井に和希はニコッと笑って答えた。
「だって、さっきの入学式でクラブ部長の紹介があったじゃないですか。」
「…ああ…そうだった…」
クスッと和希は笑うと、
「面白い方ですね、岩井先輩は。」
和希に笑われ、岩井は困った顔をした。
けれども気を取り直して、
「遠藤は絵に興味はないか?」
「絵ですか?好きですけれども。」
「もし良かったら美術部に入らないか?」
和希は困った顔をして、
「すみません。俺手芸部に入ろうかと思ってるんです。」
「手芸部?」
「はい。俺一応そっちの能力をかわれてここに入学したんです。」
「そうか…で、特技は何なのか聞いても構わないだろうか?」
「いいですよ。編み物なんです。」
「編み物…」
「はい。」
「…そうか…可憐な遠藤らしいな…」
「可憐ではないと思いますが…岩井先輩って面白い事を言うんですね。」
「変…だろうか?…」
「いいえ。芸術家は言う事が違うなあと思いました。」
にこやかに微笑みながら言う和希を岩井はじっと見ていた。
「あの…俺そろそろ行かないといけないので、これで失礼します。」
「…ああ…引き留めて…その…悪かった…」
「大丈夫です。」
和希は岩井に頭を下げると1年の教室に向かおうとしたが、岩井の方に振り返った。
「岩井先輩。俺、絵を描くのはできませんが、絵を見るのは好きなんです。今度美術室に遊びに行ってもいいですか?」
「ああ…待ってるから…」
「ありがとうございます。」
そう言うと再度頭を下げ和希は行ってしまった。
後に1人残った岩井は和希が去って行った方をジッと見つめていた。
「…遠藤…和希…」
そう呟きながら…
そして月日は流れ、今日は卒業式だった。
和希と出会って1年も経っていない。
けれども、この1年はこの学園で過ごした中で1番素晴らしかった。
その素晴らしさを教えてくれたのは和希だった。
どんな時にも変わらぬ笑顔で自分に接してくれた。
その優しさに何度自分は救われただろうか?
その和希とも今日でお別れだ。
「卓人さん!」
名前を呼ばれて振り返ればそこにいるのは愛しい恋人の和希だった。
「和希。」
「卒業おめでとうございます。」
「ありがとう、和希。」
「これからは今までみたいに側にいられませんから、何でもめんどくさがらないで自分でやって下さいね。特にどんなに忙しくても食事だけは手を抜かないで下さい。」
「ああ、分かった。」
「本当に分かってますか?はぁ〜心配だなぁ。」
「和希は心配性だな。」
岩井の一言に和希は頬を膨らませて、
「心配させてるのは卓人さんでしょ。」
岩井はクスッと笑いながら和希の頭を撫でて言った。
「悪かった。だから笑ってくれ。俺は和希の笑顔が好きだから。」
「もう…それって殺し文句ですよ。卓人さんは無自覚なんだから手に負えません。」
和希はそう言った後、
「でも…俺はそんな貴方が大好きです。」
和希は微笑んで言った。
その笑顔は去年の入学式に見た笑顔よりも数倍綺麗な笑顔だった。
初の岩和でした。
書くのに緊張してしまいました(笑)
出会いの後、いきなり別れになった話でした。
でも別れと言ってもそれは学園での事。
これからは学園の外と中ですが2人して愛を育んでいくと思ってます。
岩井卓人さん、お誕生日おめでとうございます!!
2009/3/2