Congratulation

「丹羽の誕生日?」
「はい。中嶋さんは王様の親友でしょう。だから毎年どんなお祝いをしているのかなって思って。」
渋い顔をした中嶋に対して、ニコニコ笑顔の和希。
今日は8月12日。
王様こと丹羽哲也の誕生日まで後3日。
8月15日は丹羽の誕生日だ。
確かにそうなのだが、なぜ恋人でもない男の誕生日の事を聞いてくるのだろうかと中嶋は面白くなく思っていた。
「特に何もしていない。」
「えっ?何もですか?」
「ああ。誕生日おめでとうくらいは言ったような気がするがな。」
そっけない中嶋の態度に和希は驚きながら、
「だって、折角の誕生日なのに…」
「あいつのせいで俺がいつもどれだけ大変な思いをして仕事をしていると思っている。それにお祭り好きなあいつが自分の誕生日に何もしないわけないだろう。毎年部屋で誕生日祝いと言って飲み会をしているからな。その時間が来るまでしっかりとここで仕事をさせているさ。」
「はあ…」


何とも言えない顔をした和希に中嶋は聞き返す。
「和希、どうしてそんな事を聞くんだ?」
「王様の誕生日に何かお祝いをしてあげたくて。王様にはいつもお世話になってますし。」
「お世話だと?迷惑を掛けられているの間違いだろう?」
和希は苦笑いをする。
「確かに王様の脱走癖には困ってますけどね。でも王様もやる時はちゃんとやってくれているし。それよりも俺これから外に王様の誕生日プレゼントを買いに行ってきますね。」
「丹羽の誕生日プレゼント?どうしてお前がそんなものを用意するんだ。」
「だから、さっき言ったじゃないですか?王様にはお世話になっているからって。」
中嶋は眉間に皺を寄せ、心底いやそうな顔をする。
そんな中嶋の様子を気にもせず、和希は学生会室から帰ろうと帰り支度をしている。


「それじゃ、中嶋さんまた明日。」
笑顔でそう言って学生会室から出て行こうとする和希の腕を中嶋は掴む。
「中嶋さん?」
不思議そうな顔をする和希に、
「どうして丹羽の為にそこまでするんだ?そんなに丹羽が大切なのか?」
「当たり前じゃないですか。だって王様は中嶋さんの親友なんですよ。中嶋さんの大切な人は俺にとっても大切な人に決まってるじゃないですか。」
「…俺も一緒に行ってやる…」
「えっ?」
「俺も一緒に買い物に付き合ってやるから少しだけ待ってろ。」
中嶋はそう言うと和希の腕を掴んでいた手を離し、帰り支度をする。
和希は驚いた顔をして中嶋に尋ねた。
「どうして?どうして急に一緒に行こうなんていうんですか?」
「お前1人だとどうせクマの絵がついたものしか買ってこないだろう。あいつにはそんな物は似合わないからな。和希が変な物を選ばないように見張っててやる。」
「俺、そんなに趣味悪くないですよ。」
頬を膨らませて和希は答えるが、その顔はどこか嬉しそうだった。


「折角外に行くんだ。食事でもするか?」
「いいんですか?」
「ああ。だが仕事はいいのか?」
「はい。今日の分は終わらせてきましたから。」
和希は嬉しそうに微笑む。
そんな和希の頭を優しく中嶋は撫でると、
「さあ、行くぞ。」
「はい。」
夕日が差す学生会室のドアを閉め、和希と中嶋は楽しそうに話ながら歩いていた。




王様のお誕生日をお祝いしたいと言う和希にヤキモチをやく中嶋さんを書いてみたくて書きました。
滅多にヤキモチなどやかない中嶋さんってきっと可愛いんだろうな…
でも、鈍い和希は最後まで中嶋さんがヤキモチをやいていた事には気付かないと思ってます。
その鈍さが好きですよ、和希。
この後の2人のデート話、いつか機会があったら書いてみたいなぁと思ってます。
                           2008年8月18日