FAN

「暑っ…」
丹羽は和希の部屋でうちわをバタバタさせながら和希に訴える。
「なあ、和希。冷房入れようぜ。」
「駄目です。今日はいつもよりも涼しいし、風も吹いてますからこれで十分でしょう?」
「だぁー。暑いものは暑いんだよ。」
「まったく。我慢って言葉を知らないんですか?丹羽哲也生徒会長。」
「ヒデの真似するなよな、和希。」
和希はクスクスと笑いながら丹羽を見る。

今日は夏にしては涼しい日だった。
夕方に雨が降ったせいもあるが、窓を開けると涼しい風が吹いてくる。
だから和希は部屋の冷房を切って、窓を全開にしているのだ。
窓からはそれなりに涼しい風が入ってくるので、和希は満足しているのだが丹羽は違うらしい。
さっきから『暑い』と何度もいい、うちわで扇いでいる。
「もう…そんなに暑いんなら自分の部屋に帰って冷房をガンガン入れればいいでしょう?俺はこのままがいいんです。」
そう言い切る和希に面白くなさそうに丹羽は言う。
「折角、俺もお前も寮にいるのに、何で別の部屋にいなくちゃならないんだよ。」
「だから、哲也がダダをこねるからでしょ?いつまでたっても子供なんだから。」
そう言った和希に丹羽は、
「どうせ俺はガキだよ。何だよ、和希こそ年寄りくさいじゃないかよ。」
「なっ…どこがですか?」
歳を気にしている和希には今の一言は許せなかった。
「だってよう。自然に優しくなんて言って冷房つけないしさ。鈴菱の後継者なんだからさ、ケチくさい事するなよ。」
「俺はケチだから冷房をつけないんじゃないんです。今日は涼しいから外の風だけで十分だと思ったんです。」

少し頬を膨らまして言う和希は可愛らしいと丹羽は思った。

その時、丹羽の頭にある事が思いつく。
「ならよう…冷房を付けたくしてやるぜ。」
「えっ…」
いきなりその場に和希を押し倒し、深いキスをする丹羽。
「…んっ…あん…」
和希の口から漏れる甘い声。
最初はほんの少し抵抗していたが、徐々に抵抗を止め丹羽の背中でみずから手を回す。
「好きだぜ、和希。いいだろう?」
「…後少しで夕食ですよ?食べ損ねても知りませんよ?」
「そんなもんより和希が食べたい。いいだろう?」
「…解りました…でも…窓閉めてもらえますか?このままだと外に声が漏れるから嫌なんですけど。」
「いいぜ。じゃ、冷房も入れるぜ。」
窓を閉める為に立ち上がった丹羽を見ながら和希は、
「はい、もう…素直にやりたいから冷房を入れたいって言えばいいのに…」
窓を閉めた丹羽は、
「うん?何か言ったか?和希。」
「ううん。何も言ってないよ。それよりも早く来て、哲也。」
「おっ!いやに積極的じゃねえか!嬉しいぜ!」
「哲也が大好きですからね。」
そう言って、哲也の額にそっとキスをする和希。
嬉しそうに笑う丹羽は、ギュッと和希を抱き締めて言った。

「俺もだ。愛してるぜ、和希。」
丹羽に服を脱がされながら、入ったばかりの冷房が少し寒いかなと思いながら、すぐにちょうどよくなるからいいか…と思った和希でした。



毎日暑いですね。
でも偶に涼しい風が吹く日は窓を開けて自然の恵みを感じています。
大好きなサイトさま『Smoky purple』のぱいんさまのMEMOに書かれていた王様を見て思いついた話でした。
暑くてうちわを仰ぐ王様にドキドキした岬悠衣でした。
素敵な王様なんですよ。
夏といえば王様!暑いから汗をかきながらうちわで扇ぐ王様は最高です。

                     2008年7月28日