Trick or treat

「だから、嫌だって言ってるだろう!!」
「ふう〜、和希、お前って本当に諦めるのが悪いよな。」
ため息をつきながら言う啓太に、和希は叫ぶ。
「なんで、啓太は平気なんだよ!!」


事の起こりは数分前、啓太が和希に言った事が始まりだった。
「そう言えば和希、今日ってハロウィーンだな。」
「そうだな。」
「折角だから俺仮装してみたかったな。それで“トリック・オア・トリート”って中島さんに言いたかったな。」
和希はクスッと笑うと、
「啓太は可愛いな。」
「なんだよ、可愛いって。和希だって王様に言ってあげたいだろう、“トリック・オア・トリート”ってさ。」
「えっ?俺?俺は別に…」
「無理するなよ。本当に和希って照れ屋だよな。」
和希は苦笑いをする。
ちょうどその時そこを俊介が通り掛かった。
「なんや、二人そろうて。楽しい話かいな?」
「俊介、違うよ。今日ハロウィーンだから仮装したいなって和希と話てたんだよ。だけど、今からじゃ、衣装が間に合わないから仕方ないなって思ってたんだ。」
「ふ〜ん、衣装ねえ。何でもええのか?」
「俊介?」
「心当たりあるで。着るか?」
「えっ?いいの?」
啓太の目は輝く。
そして和希は嫌な予感がしていた。
「ああ、今持ってくるから。」
そして俊介が持ってきた衣装を見て喜ぶ啓太と、真っ青になる和希。


“コンコン”
学生会室のドアをノックして、返事も待たずに俊介は中に入る。
「まいど、おおきに。会長と副会長にお届け物です!」
「へっ?俺にか?」
「誰からだ、滝?」
驚く丹羽と、めんどくさそうに答える中嶋。
「まあまあ、今回はサインをもろうたら、直ぐに渡すので、先にサイン下さいな。」
仕方なしにサインする丹羽と中嶋。
サインを貰うと、俊介はドアを開ける……
そこにはメイド服を着た啓太と和希がいた。
にこやかに笑う啓太に、ふて腐れて下を向いている和希。
それでも啓太に突かれると仕方なしに和希は啓太と一緒に言った。
「トリック・オア・トリート!」
「ほお〜、ハロウィーンか?」
「はい、中嶋さん。俺似合いますか?」
啓太はクルッと回る。
ピンク色のスカートがふわっとする。
「ああ、可愛いぞ。」
「へへ、良かった。この間の鈴菱祭の時俊介のクラスでやった喫茶店のウェートレスの服貸して貰ったんです。」
「そうか。」
楽しそうに会話する啓太と中嶋。
一方、丹羽と和希は…
無言で和希を見詰める丹羽。
下を向いたまま、やはり無言の和希。
『やっぱりこんな服きなきゃ良かった。哲也は呆れて何にも言ってくれないし。俺馬鹿みたいだ。』
和希は泣きそうになったがグッと堪えると、
「王様、俺もう着替えてきますから。」
和希がそう言って学生会室を出ようとした時、丹羽が和希の腕を掴む。
「王様?」
和希は不思議そうに丹羽の方を向く。
「あっ…まだ着替えなくていい。」
「えっ?」
「そのままでいろ…」
「何で?」
和希は丹羽の顔をのぞき込む。
顔を赤くして丹羽は答える。
「可愛いからそのままでいろ!」
「えっ…」
「今日は一日その格好でいい!」
「王…様…?」
丹羽は和希を抱き上げると中嶋に言った。
「ヒデ、俺は部屋に戻るぞ。いいな。」
中嶋はため息をつきながら言う。
「仕方ないな。今日の分は明日しっかりとやって貰うからな。」
「おう。」
そう言うと、そのまま学生会室を出て、寮に向かって行く。
抱き上げられた和希は、
「王様恥ずかしいから下ろして下さい。それと着替えさせて下さいよ。」
「駄目だ!今日は一日そのままだ。」
「嫌ですよ。こんな格好。」
「今日はハロウィーンだろう?俺は和希にはお菓子なんてやらないぜ。だから代わりにいたずらをしてくれるんだろう?」
「王様?」
「さっき、言ってくれただろう?“トリック・オア・トリート”ってさ。どんないたずらをしてくれるか楽しみだな。」
「ええと…」
困った顔をした和希に丹羽は悪戯っぽく笑った。






『as2』の桂笹実様より頂きました。

今日は、ハロウィーンですね。もうすぐ11月1日になるけど…
やっぱり書きたくなったハロウィーンネタ!
下書き無しに書いた小説です。(汗)
以前シュウに原稿をあげて貰っている時たまたま踏んでしまったキリ番。
身内でリクエストやるのは何だけど、とりあえず聞いてみようと思い聞いたら「和希のメイド服!」
その場で抹殺したその案で今回書いてみました。
シュウ、リクエスト書いたからね(^^)


『as2』の桂笹実様がご自分のサイトにこの話のメイド和希と王様を描いて下さったんです。
しかも、以前私が日記にピンクのメイド服がいいなぁと書いたのを見て下さって、ピンクのメイド服姿の和希なんです!!
その上、格好いい王様まで一緒にいるんです!!
ありがとうございます。
しょぼいお礼ですがこの小説、桂笹実様に差し上げます。
素敵なイラストを描いて下さって、本当にありがとうございました。(幸せです)