Heat

久々に熱を出した。
39度の熱は身体にきつく、息もしずらい。
先程作ってもらった氷枕も熱ですぐに暖かくなってしまう。
「はぁ〜、辛い…」
「大丈夫か?和希。」
ふと漏らした言葉に返事が返ってくるとは思わなかった和希は、驚いて声のした方をむいた。
そこには心配そうな顔をして和希を見つめる丹羽の姿があった。


「哲也?どうして貴方がここに?」
「さっきからずっとここにいるぜ。ったく、何にも覚えちゃいないんだな。」
呆れた顔をした丹羽は和希の頬を優しく撫でると、
「まあ、仕方ねえか。この熱じゃな。どうだ?まだ気分が悪いか?」
和希は丹羽の手にそっと触れると、
「何だか、意識がはっきりしません。それに身体中痛いんですけど。」
「それは熱のせいだな。頭がぼお〜としているんだろう?それに熱があると身体の節々が痛むんだ。」
「そうなんですか…」


和希は何とか返事をするとまた目を閉じた。
今は口を聞くのも目を開くのも辛い。
とにかく早く熱を下げないと仕事に差し障りがでるな…とぼんやりと考えていた。
そして、こんな時でも仕事の事ばかり考えてしまう自分が可笑しくてつい笑ってしまった。
「何が可笑しいんだ?」
すかさず丹羽が聞いてくる。
和希は目を開くと心配そうに和希を見つめる瞳とぶつかった。
和希はニコッと笑うと、
「なんでもないです。」
「お前、何でもないのに笑うのか?」
「はい…ってそれって変ですよね。」
「まったく、熱で少し可笑しくなったんじゃないか?」
「そうかもしれない。」
否定もせずにそう言った和希をさらに心配そうに丹羽は見つめた。


「頼むからこれ以上無理をするなよ。石塚さんから連絡をもらった時は焦ったんだからな。」
「石塚から?」
「覚えてないのか?」
和希は首を縦に振った。
「そうか。和希は理事長室で倒れたんだぜ。すぐに医者に見てもらったら風邪だと診断されたそうだ。ただし、過労というおまけ付きだったけどな。また、無理したんだろう?」
「無理なんか…」
そこまで言った和希は丹羽の真剣な目に押されたのか、熱のせいか、つい本音をポロッと言ってしまった。
「9月から学園生活を楽しみたくて前倒しでかなりのスピードで仕事をしてたから。確かに無理してる所もあったけど、俺…少しでも長く哲也と一緒にいたかったから…」
「和希…」
「ごめんなさい。結局迷惑掛けちゃって。でも夏休みの間殆ど会えなかったから、どうしても一緒にいる時間が欲しかったんだ。迷惑だった?」
丹羽は和希の頭を軽く叩くと、
「馬鹿やろう。そんな事で無茶しやがって。俺はどこにもいかねえから。ここにいて和希の事をずっと待っててやるからもうこんな無茶はするなよ。」
「哲也…」


和希の頬を流れる一筋の涙。
でも、その顔は幸せに微笑んでいた。
「もう、無茶しないって約束するから、今夜はここにいてくれる?」
「ああ。もとからそのつもりだ。」
そう言った後丹羽は立ち上がると氷枕を取り替えてくると言って部屋を出て行った。
1人残った和希は丹羽が出て行った扉をジッと見ながら呟いた。
「ありがとう哲也。そして心配かけてごめんね…愛してる…」
そう呟くと、再び深い眠りに付いた。





久々に熱を出して寝込んだ岬悠衣です。
とりあえず熱が下がったので小説を書いてみたのですが…
頭はぼぉ〜としてるし、身体はだるいし、こんな話になってしまいました。
和希、病気にさせてしまってごめんね。
でも、和希には優しく看病をしてくれる王様がいるから安心だよね。
でも、和希が治ったら、今度は王様が風邪をもらって引いていそうで少し怖いです(笑)
                     2008年9月4日