考える事は一緒

「和希。今日授業が終わったら橋向こうのコンビニまで一緒に行かないか?」
「コンビニ?それって購買じゃ駄目なのか?」
不思議そうな顔をする和希に、
「うん。購買じゃ売ってないんだ。」
「そうか。それじゃ、一緒に買いに行こう。」
「ありがとう、和希。」
啓太は嬉しそうに笑って言った。


そして放課後、コンビニに向かいながら、
「啓太。今日はコンビニで何を買うんだ?」
「ポッキーだよ。」
「ポッキー?チョコレートの?」
「うん。」
「それなら、購買で売っているんじゃないか?」
「普通のポッキーならね。でも、俺が欲しいのはメンズポッキーなんだ。」
「メンズポッキー?」
「チョコレートがビターチョコレートなんだ。だからほろ苦いんだ。これなら中嶋さんも食べてくれると思ってさ。」
「ふ〜ん。でも、どうしてポッキーなんだ?他にもお菓子はあるだろう?」
疑問に思った和希がそう聞くと、
「和希、明日は何の日か知ってる?」
「明日?明日って11月11日だろう?何かあったけ?」
「やっぱり。知らないと思ったんだ。あのね、明日はポッキーの日なんだよ。」
「ポッキーの日?ポッキーってあのお菓子のポッキーの事か?」
「うん。」
「どうしてポッキーの日なんだ?」
「ポッキーの形が数字の“1”に似ているからって平成11年11月11日の“1”が6個並ぶおめでたい日にポッキーを作った会社、江崎グリコが『ポッキー&プリッツの日』って決めたんだって。」
「へえ〜。面白いな。」
「でね。そのポッキーの日にポッキーゲームをする恋人達が多いんだ。」
「ポッキーゲーム?」
「和希、知らない?」
「ああ。どういうゲームなんだ?」
「2人が向かいあって、1本のポッキーの端を互いに食べていくんだ。で、先に口を離したほうが負けになるゲームなんだ。」
「それって、そのまま食べ続けていたらどうなるんだ?」
「もちろん、キスをする事になるよ。」
「キ…キス…!!」
和希の顔が真っ赤になる。
そんな和希を見て啓太は、
「何赤くなってるんだよ、和希。王様とのキスを思いだしたの?」
悪戯っぽく笑う啓太に、
「ち…違うよ。」
顔を反らしながら答える和希。
啓太はクスクスと笑いながら、
「分かった。そういう事にしとくね。」
「そういう事って何だよ。」
ムッとした和希を誤魔化すように啓太は、
「ほら、コンビニに着いたよ。折角来たんだから和希も王様の為にポッキーを買えば?」
「啓太〜」
上手く誤魔化されたような気はしたが、和希はそのまま啓太と一緒にコンビニに入って行った。

「随分たくさんの種類があるんだな…」
和希はポッキーが置いてある棚を見ながら呟いた。
「そうだね。季節限定のモノもあるから種類は多いかな。」
そう言いながら啓太は青い箱のポッキーを取ると嬉しそうに言った。
「よかった。この店にあって。なかったらバスに乗って駅前のスーパーまで行かなくちゃならない所だった。和希はポッキーを買わないのか?」
啓太に言われ、和希は悩んでいた。
明日は仕事があるので、寮に戻るのは夜遅くなる。
それに、啓太も言っていたけれども俺はポッキーの日もポッキーゲームも知らなかった。
当然、王様だって俺がそんな事を知っているだなんて思ってないだろう。
だから、きっと普段の日と変わらなく過ごすと思う。
でも…
知ってしまったからには俺だって王様にポッキーを渡したい。
迷っていた和希は1つの箱を手に取った。
「和希はそれにするの?」
「ああ。美味しそうだし。」
和希が手に取ったのは季節限定のポッキー冬のくちどけ〜ココア仕上げ〜だった。
「俺、季節限定とかに弱いんだよ。」
「俺もだよ。それ、もう食べたけど、ココアが掛かっていて普通のポッキーよりも柔らかいチョコレートなんだ。美味しいから俺もお勧めするよ。」
「啓太のお勧めなら、大丈夫だな。」
そう言った後、レジに向かった和希と啓太だった。


次の日の夜…
消灯時間もとっくに過ぎた時間に寮に帰ってきた和希は自室に向かわずに丹羽の部屋に行った。
もう眠っているかとも思ったが一応小さめにドアをノックした。
「王様、遠藤ですけど、まだ起きていますか?」
小声で言ったのに、すぐに勢いよくドアが開く。
「和希?どうしたんだ?こんな時間に?」
「迷惑でしたか?」
「馬鹿。迷惑な訳ないだろう。とにかく中に入れ。話はそれからだ。」
「お邪魔します。」
そう言って和希は丹羽の部屋に入った。
和希に触れた丹羽は、
「今帰って来たのか?」
「あっ、はい。どうして分かったんですか?」
「服が冷たいからな。すぐに分かったんだ。」
そう言いながら、和希の手を包み込んだ。
丹羽の大きな手はとても温かくて和希は自分がかなり冷えていた事に気が付くと同時に暖めてくれている丹羽に感謝をしていた。
「ありがとう、哲也。それよりもごめんね。こんな遅い時間に来て。」
「何時だって和希が来てくれれば嬉しいぜ。」
ニカッと笑って言う丹羽に和希も嬉しそうに微笑む。

「哲也。今日ってポッキーの日だって知ってるよね。」
「ああ。和希も知っていたのか?驚いたな。知らないと思っていたからよう。」
「俺も昨日啓太に教えてもらって初めて知ったんです。それで哲也と一緒に食べようと思ってポッキーを買ってきたんです。」
和希はポケットからポッキーを取りだして丹羽に見せた。
丹羽はそのポッキーの箱を見て複雑そうな顔をしていた。
そんな丹羽を見て、
「…もしかして…迷惑でしたか…?」
「えっ?」
丹羽は慌てて答えた。
和希が泣きそうな顔で丹羽を見ていたからだ。
「俺…ちょっと浮かれていたかもしれません。もう帰りますね。」
そう言って方向転換をした和希を後ろから丹羽は抱き締めた。
「て…哲也…?」
「まったく。どうしてお前はそう早とちりなんだ。」
「だって…哲也…困った顔をしていたから…迷惑だったと思ったんだ…」
「それはなあ…」 丹羽は先程よりも強く、ギュッと和希を抱き締めた。
「和希が俺と同じ事を考えていたから驚いたんだ。それとな、まさか同じものを用意されるとは思わなかったんだ。」
「同じもの?」
「ああ。」

丹羽は和希を離すと机の引き出しから1つの箱を取り出した。
それはポッキーの箱。
しかも普通の赤い箱のポッキーではなく、和希と同じポッキー冬のくちどけだった。
驚いて目を見開く和希に丹羽は苦笑いをして言った。
「和希は季節限定品のお菓子が好きだろう。だからどうせ買うならこれがいいと思ったんだ。まさか同じポッキーを選ぶだなんて思わなかったから驚いたんだ。」
和希は丹羽を見つめながら、
「もう…脅かさないでよ。俺、悲しくなったんだから。」
「悪い。」
そう言いながら丹羽は触れるだけのキスをする。
「さてと。折角ポッキーがあるんだからポッキーゲームをしようぜ。2箱もあるんだから何度もキスができるな。」
嬉しそうに言う丹羽に和希も微笑んで言った。
「2箱も食べたら胸焼けを起こしそうですから、程々にして下さいね。」
「ああ。俺もだ。それにキスだけじゃ我慢できなくなりそうだしな。」
丹羽はニヤッと笑いながらポッキーの箱を開けていた。








啓太に教えてもらったポッキーの日とポッキーゲーム。
王様は和希が知らないと思いつつも密かにポッキーを買っています。
以外と可愛い所がある王様です(笑)
和希と王様のポッキーゲームも気になりますが、中嶋さんと啓太のポッキーゲームも気になっています。
                                        2009/11/13