和希のお誕生日まで後6日

めがね (石塚×和希)

「う〜ん…」
和希は理事長室でうなっていた。
そんな和希の様子を見て石塚は声をかけた。
「いかがなさいましたか?和希様。」
「裕輔…」
珍しく仕事中なのにその名で呼ばれて石塚は驚く。
公私混同を嫌う和希は仕事とプライベートをきちんと分ける。
だから、この時間にはめったにその名では呼ばないのに今日はどういった心境なのだろうか?
石塚は穏やかに和希に尋ねた。
「和希様、何か悩み事でもあるんですか?」
和希はじっと石塚を見詰めるとため息と共にボソッと言った。
「これなんだけどさ…」


和希は石塚に見せたのは先日作った和希のめがねだった。
仕事のしすぎで目の疲れが多い和希に医師が疲れが出た時だけかけるようにと言われ作っためがねだった。
めがねを作る時はそれは大騒ぎだった。
初めてめがね店に行きフレームを選ぶ和希は子供のようにはしゃいでいた。
一緒に行った石塚も呆れるくらいの喜びようだった。
1人では決められないからと散々色々なめがねをかけ、最後にはフレームを石塚に決めさせたのであった。
「和希のめがねなんですから、1番気に入ったのにしたらいいのですよ?」
「え〜、そんな事言わないで一緒に選んでよ。」
「ですから、どれも和希にはお似合いですよ。」
「裕輔のいじわる…」
「はぁ?どうしてですか?」
「だってめがねをかけた俺の顔を見るのは裕輔なんだぞ。俺は鏡を使わないかぎり自分の顔なんて見えないんだから。だから…」
「だから?」
「裕輔が1番俺に似合うのを選んでくれたっていいじゃないか…」
拗ねたように睨みながら和希は言った。
どういう理屈なんだか…石塚は呆れながらも1番和希に似合いそうなフレームを選んだ。


そうやって手に入れためがねなのに、何があったのだろうか?
不思議に思いながら石塚は尋ねる。
「そのめがねがどうかしたんですか?」
「うん…実はさぁ、啓太が…」
「伊藤君ですか?」
「ああ、啓太にね、言われたんだ。」
「何をですか?」
「めがねをかけていたら“和希、もしかして老眼?”ってさ。俺もうショックで立ち直れないよ…」
「はあ…」
ショックで立ち直れないのはこちらだと言いたい。
何も本気で伊藤君が和希の事を老眼と思っているわけではないだろう。
軽い冗談なのだろうが、言った相手が伊藤君だったので和希はショックを受けているのだ。
まったく単純なのだから困ってしまう。
まあ、そこが和希の可愛い所なのだが。


石塚は微笑みながら言った。
「きっと伊藤君も和希様のめがね姿を見て驚かれて冗談を言われたのではないのですか?」
「そうかな…」
じっと石塚を見る和希。
「ええ、私はそう思いますよ。和希様のめがね姿はとてもキュートですからね。」
途端に和希の顔は真っ赤になる。
視線を泳がせながら、
「馬鹿な事言ってるんじゃないよ、石塚。」
プイッと顔を背ける和希。
石塚はクスクスと笑いながら、和希の手からめがねを取り和希にめがねをかける。


「ほら、やっぱりよく似合ってますよ?」
「…そう…かな…?」
「はい。お似合いです。」
石塚にそう言われ、和希はやっと笑った。
「裕輔がそう言うならそれでいい。」
そう言って石塚に抱きつく和希。
そんな和希の額にそっと石塚はキスを落とした。






先日買った本…眼鏡和希本を読んですっかり和希のめがね姿に惚れてしまいました。
で、私もめがねをかけた和希の話を書きたい!!と思い書いてしまった話です。
和希がめがねをかけるとしたらやっぱり仕事中だと思ったので、理事長和希で書きました。
理事長ならお相手はやっぱり石塚さん♪という事で石塚さん登場です。
和希は石塚さんの前だと子供みたいに甘えます。
理事長の時とのギャップの激しさがポイントなんですが、今回はそれが書けなかったのが少し残念でした。
                 2008年6月3日