和希のお誕生日まで後3日
片思い (成瀬→和希)
誕生日を知ったのは偶々だった。
しかも知ったのは誕生日の前日。
今から用意するのは至難の業だけれども、愛する遠藤の為なら僕にできない事はない。
そう思っていた。
遠藤はハンバーグが好きだから明日のお弁当のメインはハンバーグに決まりだ。
後はケーキだ。
お昼休みに食べるんだから生クリームたっぷりのケーキは無理だな。
そうなると、やっぱりフルーツケーキかな?
ドライフルーツと木の実をたっぷりと入れたフルーツケーキに決定だ。
そうと決まれば今日は部活を休んで外に買い物に行かないと…
成瀬はウキウキとしてバス停へ向う途中に、和希と啓太に会った。
「やあハニー、それとお友達君。」
「こんにちは、成瀬さん。」
「ハニーは今日も可愛いね。」
そう言って啓太の頬を撫でようとする手を和希が祓った。
「成瀬さん、啓太に触らないで下さいっていつも言ってますよね?」
思い通り和希は成瀬に噛み付いてくる。
そんなのは成瀬の計算のうちだ。
成瀬はわざとつれない風に言う。
「あのねぇ、お友達君。ハニーは嫌だって言ってないんだよ?それをお友達君があれこれ言うのはおかしくないかい?」
「啓太は優しいから言えないだけなんです。それに付け込んで啓太にベタベタ触らないで下さい。」
そう言って啓太を成瀬から隠すように啓太の前に立つ。
成瀬は心の中でほくそえむ。
遠藤、その立ち位置、解ってて立っているのかい?
啓太を隠すつもりで立ってるんだろうけど、そこだと僕のすぐ側にいるんだよ。
おそらく気付いてはいないんだろうけど…
僕はこの瞬間が大好きだ。
遠藤は本当に綺麗な顔をしている。
笑えばもっと素敵なんだろうけど、そこまでは今は望めない。
たとえ怒った顔であろうと本当に綺麗なんだ。
そんな顔が身近に見られるのはこの時だけだ。
一瞬でも見逃さないようにしなくては勿体ない。
そう思ってジッと遠藤を見詰めていると、
「和希、その態度成瀬さんに少し失礼だよ?」
「なっ…何言ってるんだ啓太。啓太がそんな優しい事ばかり言っているから成瀬さんが図に乗るんだよ。」
「そんな事ないよ。成瀬さんは親切なだけなんだよ。」
「あのなぁ、啓太。これのどこが親切なんだよ。下心丸出しだろう?」
「お友達君、それってあんまりだと思うんですけど?」
成瀬が口を挟むと和希がキッと睨む。
「人の話に入り込まないで下さい。」
「だってさぁ、僕は普通にハニーと会話をしているのに、お友達君が1人で怒ってるんだよ?それって何か変じゃない?」
「変じゃありません。まったく貴方って人は…人がこう言えばああ言うし。呆れてものが言えません。」
「和希、今の言い過ぎ。」
堪りかねて啓太が言った。
「だって、啓太…」
「だってじゃない。成瀬さんにこれ以上言ったら俺怒るからね。」
「啓太…」
情けない顔をする和希。
そんな和希の顔も可愛いなぁと思いながら成瀬は和希を見ていた。
啓太に怒られた和希は渋々成瀬に謝る。
「成瀬さん、すみません。言い過ぎました。」
「そんな事気にしてないから大丈夫だよ。ハニーありがとう。君は本当に優しいね。」
「いいえ。和希が酷い事言って本当にごめんなさい。」
「いいから。それじゃ、僕は時間がないからまたね、ハニー。」
2人に手を振って成瀬はバス停に向って走りだした。
今はまだ僕を見てない遠藤。
でももう直ぐ遠藤のハートを必ず僕のものにしてみせるからね。
その為なら僕は何だってするよ。
愛してるよ、僕の遠藤。
今、啓太にだけ見せているその笑顔を必ず僕だけに向けさせてみせる。
そして来年の遠藤の誕生日はきっと恋人として過ごしてみせる。
覚悟しておきなよ、遠藤。
僕は狙った獲物は逃がしはしないからね。
成瀬×和希ではなく、成瀬→和希でした。
成瀬さんは和希が大好きですが、和希はその気はさらさらありません。
実は和希が入学した日に和希に一目ぼれをした成瀬さんですが、あっさり振られてしまいました。
そこで啓太に頼んで和希を落とそうと頑張っている最中です。
ですが…なかなか手ごわいですよ、和希は。
成瀬さん、頑張れ!!ファイトだ!!
和希の誕生日には啓太と和希と3人でお昼を食べて下さいね。
そして…来年こそは2人でラブラブで食べて下さい。
2008年6月6日