和希のお誕生日まで後2日

どっちが好き? (七条×和希)

お互いを求め合った後のひと時…和希はその余韻が好きだった。
身体は疲れてだるいけれども、心は幸せに満ち溢れている瞬間。
隣にはさっきまで狂おしいくらいに俺を求めていた愛しい人がいる。
しかし、今日はその至上のひと時は七条さんの一言でもろくも崩れ去ってしまった。


「和希、貴方に聞きたい事があるのですが、今聞いてよろしいですか?」
「はい。何ですか?七条さん。」
七条は和希の髪を撫でながら聞いてきた。
「“遠藤君”の時と“理事長”の時とどちらの時がより一層感じますか?」
「はぁ?」
和希は言われている意味が理解できずにいた。
「ですから、どちらがより抱かれて気持ちがいいのかと思いましてね。」
ニコッと笑う七条に和希は頭を抱えたくなった。
どっちと聞かれてもどちらも同じ人物なのだから答えようもない。
ため息をつきながら和希は答えた。


「あのですね、七条さん。“遠藤”も“理事長”もどちらも俺なんですよ?その…七条さんから同じように愛されてるんですから変わるわけないじゃありませんか?」
「いいえ、違います!」
キッパリと七条から言われ和希は戸惑ってしまう。
「どこが違うんですか?俺にはさっぱり解りませんが?」
「“遠藤君”の時は可愛らしいんです。とても恥じらいますしね。でも“理事長”の時は余裕たっぷりで僕に抱かれていますよね?」
「そ…そうですか?」
「はい。で、どちらの方がより強く僕を感じるのか知りたいんです。」
「え〜と…」
そう言われても解るわけがない。
確かに“理事長”の時は年上としてのプライドが先に立って少々気が強いかもしれない。
でも、それも最初のうちだけで抱かれているうちに何も解らなくなってしまう。
七条さんに溺れてしまうからだ。
考えても答えはでない。
困った和希は逆に聞いてみた。


「そう言う七条さんはどちらの俺により感じるのですか?」
「“遠藤君”と“理事長”にですか?」
「はい。」
和希は興味津々な顔をするが、七条はいつもの笑顔で答えた。
「フフッ…それは秘密です。」
「はい?」
「聞こえませんでしたか?」
「いえ…聞こえましたが、どうしてですか?」
「それは和希の答えを聞いてないからですよ。さあ、答えて下さいね。」
「うっ…」
暫くしてから、
「どっちもと言ったら駄目すか?」
「どちらもですか?」
「はい。“遠藤”の時は七条さんは優しく抱き締めてから始めてくれますよね。“理事長”の時は少し意地悪な抱き方から始まりますが、どちらも俺への愛情が込められているので同じくらい好きです。それに…」
「それに?何ですか?」
和希は顔を赤くして答えた。
「どっちの七条さんも情熱的で俺は好きです。」
「そうですか…」
俯いてしまった和希を嬉しそうに見つめる七条。


そう…“遠藤”でも“理事長”でも和希は和希であって変わらない。
抱かれた瞬間は少し性格が違ってもすぐに素の和希になる。
可愛くて、でも少し意地っ張りな和希。
甘えたいのに甘えられない和希。
そんな和希を見ているとちょっといじめたくなる。


顔を上げた和希は
「さあ、今度は七条さんの番ですよ?どちらの俺がいいんですか?」
「さっき秘密だと言いませんでしたか?」
「えっ?それは俺の答えを聞いてないからだって言いませんでしたか?」
「そうでしたっけ?」
「そうです!もう!七条さんてば、すぐそうやって誤魔化すんだから。俺だけ答えるなんてずるいです。七条さんもちゃんと答えて下さ…」
その続きは唇を塞がれて言えなかった。
口の中を隅々まで舐められて、先程までの熱がまた和希の身体に戻ってくる。
「んんっ…」
和希の口から漏れる甘い声。
七条は和希の耳元で囁く。
「ねぇ和希。いいですよね?」
潤んだ瞳で頷く和希。
腕を七条の首にまわし、甘えた仕草を見せると七条は嬉しそうに微笑む。
そして和希の首筋から胸へと唇を移動させる。
息が上がる和希を楽しそうに見ながら心の中で呟いた。
「僕はどっちの和希も大好きですよ。」…と。







七条さん相手で思いついた話がこれでした(笑)
結局七条さんは何を聞きかったのでしょうか?
和希は理事長でも遠藤君でもどちらでも可愛いです。
今回の和希聖誕祭の中で唯一のベットシーンでお届けしました。
アンケートでは『曲者ぷりを十二分に発揮して欲しい』とのコメントを頂いて頑張ってみましたが、これが限界でした(苦笑)
               2008年6月7日