和希お誕生日おめでとうございます!!

告白 (丹羽×和希)

「遠藤、お前が好きだ。俺と付き合ってくれ!」
「えっ…」
放課後の学生会室で丹羽に突然に告白された和希は固まってしまった。
真剣な眼差しで和希を見詰める丹羽。
和希は目を大きく見開いて、何て返事をしていいのか途方に暮れていた。

         * * *

それは昼休みの事だった。
和希は啓太と食堂で楽しく話ながら昼食を取っていた。
そこに丹羽がやって来た。
丹羽に気付いた啓太は、
「あっ、王様。王様もこれからお昼ですか?」
「いや、ちょっと遠藤に話があってな。」
「俺にですか?」
和希は少し驚いた顔をした。
和希が理事長だと解ってから、丹羽はどちらかと言えば和希を避けていたからだ。
“一発殴らせろ!!”と騒いだわりには、その後何の音沙汰もなしだった。
なのに、何故…?


和希は丹羽に聞き返した。
「何でしょうか?王様。」
「いや…その…なあ…遠藤…」
「はい?」
「え〜と…」
「王様?用件は何ですか?」
はっきりしない丹羽の態度に不思議に思いながら和希は先を急かした。
丹羽は頭を掻きながら、
「今日は仕事は忙しいのか?」
「いえ、特には…ああ、学生会のお手伝いですか?俺は大丈夫ですよ。啓太は?」
「うん。俺も平気だよ。」
「いや…啓太はいいんだ。」
「「えっ?」」
和希と啓太は驚いた顔をして同時に言った。
学生会の手伝いなら1人でも多い方が助かる筈なのに、丹羽は啓太はいいと言う。
「あの…王様?学生会のお手伝いなら1人でも多い方が助かると思うんですけど。」
和希の問いに、
「いや…今日は学生会の仕事じゃないんだ。今日はヒデが用でいないんだ。」
「はあ…なら何の用ですか?」
「だから!話があるんだよ!いいか、遠藤!放課後必ず1人で学生会室に来いよ!待ってるからな!」
それだけ言うと丹羽はその場からいなくなった。


「なあ、啓太。今の王様少し変じゃなかったか?」
「和希もそう思う?俺もそう思って見ていたんだ。」
「何だろうな、話って。やっぱり例の件(理事長)かな?」
「う〜ん。その可能性は高いよね。どうする、和希。不安だったら俺一緒に行こうか?」
「いや、いいよ。いくら王様だってあんまり酷い事はしないだろうし。」
「うん、解った。でも何かあったらちゃんと俺に言えよ、和希。」
「ああ、頼りにしてるよ、啓太。」
顔を見合わせて2人は微笑んだ。

          * * *

丹羽をジッと見詰めながら何も言わない和希に丹羽は声をかける。
「遠藤、返事をもらえないか?」
ハッとして我に返った和希は、
「王様…俺の事からかってますか?」
「なっ…そんな訳ねぇだろう!人の告白をなんだと思ってるんだよ!」
「だって…俺…王様の嫌いな理事長なんですよ?」
「ああ、解ってる。確かに殴りたいくらい嫌いだったが、理事長がお前だって解ったらその気が失せた。」
「俺…男だし…王様よりも年上だし…」
「あのなぁ…遠藤が男だなんて解ってるよ。そんなの当たり前だろう?それに俺は遠藤が好きだから歳なんて気にしないぜ。」
「…」
「遠藤?」
「俺には…無理…です…」
俯いて答える和希に丹羽は、
「何が無理なんだ?」
「俺は…理事長です…生徒とは…付き合えません…」
「そんなの関係ないだろう?それよりも大切なのは気持ちだろう?遠藤は俺の事をどう思ってるんだ?」


和希は手をギュッと握った。
気付かれてはならない、この想いは。
俺が王様の事を想っている事はけして悟られちゃいけないんだ。
王様の将来を考えれば、俺はここで黙って身を引くのが1番いいんだ。
それに王様と付き合ったら竜也さんに顔向けできない。
竜也さんの大切な1人息子である王様とそんな事になったら竜也さんが悲しむに決まっている。
和希はそう思いながら、顔を上げた。


「俺は、王様の事は先輩として尊敬しています。また理事長としても学生会会長として頑張ってくれて助かってます。」
「俺はそんな答えが聞きたいんじゃねぇ!!」
丹羽は和希の肩を強く掴むと、いきなりキスをした。
触れるだけのキスからだんだんと深いキスをする。
舌を和希の口の中に入れ、和希の口の中を堪能する。
突然の出来事に和希はろくに抵抗もできない。
大好きな王様からのキス。
でも、俺はその想いには答えちゃいけないんだ。
和希の目から一筋の涙が零れる。


和希は丹羽を思いっきり押した。
この細い身体のどこにそんな力があるんだろうかと丹羽は驚く。
「止めて下さい、王様。俺は…王様とは付き合えません。」
「何でだ?今俺のキスを受け入れただじゃないか?俺の事が好きなんだろう?なのにどうして付き合えないとか言うんだ?」
和希の目がら耐え切れずに涙が溢れる。
「無理なんです…」
「何が無理なんだ?」
「理事長が生徒と付き合うなんてそんな真似できません。」
「何でだ?お互いに好きなら拙い事なんてないだろう?」
「無理です。世間はそう見てはくれません。それにそんな事になったら竜也さんが悲しみます。」
「親父?なんで親父が出て来るんだよ。」
「俺は竜也さんには数え切れないくらい恩があるんです。ですから竜也さんの大切な1人息子である貴方とそういう関係にはなれません。」
「そんなの関係ないだろう。親父は親父。俺は俺だ。」
「でも…俺には無理なんです…」


このままでは埒があかないと丹羽は思った。
俯いて涙を流す和希。
そんな和希を見たくて告白したわけじゃない。
自分のこの手で和希を幸せにしたかっただけなのに。
丹羽は決心して言った。
「なら、俺は学園を辞める。そして親父に全て話す。それで親父が認めてくれなかったら勘当でもして自由の身になる。それなら俺と付き合ってくれるな?」
「王様…」
弾かれたように顔を上げる和希。
その瞬間見た丹羽の目に和希は何も言えなかった。
こんなにも真剣に自分を愛してくれている王様。
俺だって王様に負けないくらい王様の事が好きだ。
リスクを恐れているだけでは何も始まらない。
和希も心を決めた。


「王様、俺…王様が好きです。」
「遠藤?」
「だから、学園を辞めるだなんて2度と言わないで下さい。俺の事を本当に好きなら、俺の傍にずっといて下さい。」
「いいのか?」
丹羽は和希を見詰めて言った。
和希は微笑みながら言った。
「はい。王様には負けました。リスクばかり考えちゃ駄目なんですよね。俺は…自分の幸せを考えてもいいんですよね?」
「何当たり前の事言ってるんだ?そんなの決まってるだろう?」
和希は嬉しそうに言った。
「今まで誰もそんな事俺に言いませんでしたよ。」
「そうか…なら今度から俺がいくらでも言ってやる。大好きだ遠藤。俺の傍にいていつも笑っていろ。いいな。」
「はい、王様。」
ふわりと笑う和希に嬉しそうに笑う丹羽。
「王様、実は今日は俺の誕生日なんです。」
「えっ?そうなのか?」
「はい。こんなに素敵なプレゼントを貰って俺は幸せ者ですね。」
「何言ってるんだ。これからもっともっと幸せにしてやるよ。」
「王様…」
「お誕生日おめでとう、遠藤。」
「ありがとうございます。」
和希に優しくキスをする丹羽。
幸せを抱き締めながら、和希は丹羽の背に手を回した。







和希お誕生日おめでとうございます。
和希のお誕生日をお祝いできてとても嬉しいです。
そして、今日で和希聖誕祭も終了です。
今日まで8日間読んで下さった大勢の方、本当にありがとうございました。
また、アンケートにもご協力頂いてありがとうございました。
アンケートでは「JUNEブライト的な甘いお誕生日話を」とのコメントを頂いたんですが、あまり甘い話にはなりませんでした(笑)
色んなCPで書かせて頂いてとても楽しかったです。
でも、私はやっぱり王和が1番好きなんだなって改めて思いました。
                  2008年6月9日