お正月と言っても今日は1月3日。
年末年始、仕事の付き合いで忙しかったが今日は1日休みをもらったので、丹羽と一緒に初詣に行き、今は丹羽の家にいる和希だった。
今日は丹羽の両親は親戚の集まりに夜まで出かけているので、丹羽は和希を誘ったのだった。
両親が留守なのにお邪魔するのは申し訳ないと言って最初は断った和希だった。
だが、丹羽の両親が和希が来る事を知っているので問題ないと丹羽に言われても和希は悩んでいたが、最終的には竜也からの電話で丹羽の家に行く事を決めたのであった。
もちろん、竜也からの電話で行く事を決めたのは丹羽には内緒だ。
知ったら機嫌が悪くなるのは目に見えているからだ。
こたつで丹羽の母親が用意した御節を食べた和希は嬉しそうに微笑んだ。
「ごちそうさまでした。」
「もういいのか?」
「はい。お腹いっぱいです。」
「しかし、和希は相変わらず食が細いよな。」
「俺は普通ですよ。哲也が大食いなんです。」
「そうか?」
少し納得の行かない顔をする丹羽を見て、和希は苦笑いをする。
「哲也のお母さんは料理が上手ですよね。」
「普通だと思うぜ。」
「そんな事ありません。凄く美味しかったです。哲也は幸せですよね。こんな素敵な料理ができるお母さんがいるんですから。」
「和希がそんなに喜んだって知ったらお袋、きっと喜ぶぜ。和希が来るって聞いて張り切って料理を作っていたからな。」
「哲也のお母さんにはいつもよくしてもらって申し訳ないです。」
「そんな事ないぜ。親父が和希は俺の娘だっていつも言っているから、お袋も和希の事を自分の子供のように思っているんだぜ。」
「娘って…竜也さんてば、俺の事をそんな風に言ってるんですか?」
和希はため息を付いた後、
「でも、仕方ないか…留学中、よく親子に間違えられた上に竜也さんの娘だと思われていたからな。」
「そうなのか?初めて聞いたな。」
「そう言えばあんまり留学中の話はした事がなかったですね。」
「ああ。」
「日本人って幼く見えるじゃないですか。しかも竜也さんはガタイがいいし、男らしいし。悔しいけど、当時の俺は小さくて幼い顔をしていたから竜也さんと一緒にいるとよく間違えられたんです。竜也さんも否定しないで可愛い娘だろうって言うんですよ。最初のうちは後で文句を言っていましたが途中から言うのを辞めました。」
「何でだ?」
「竜也さんが嬉しそうな顔をして言うからです。きっと離れている息子を思い出してるのかな?と思ったら文句も言えなくなっちゃって…竜也さんは俺にとってただのSPじゃなく、父親みたいな存在だったんです。本当の父親は仕事が忙しくてめったに会えなかったので、竜也さんは俺にとって大切な人だったんです。竜也さんにはたくさん甘えてしまって…でも、哲也は寂しい思いをしていたんですよね。」
「寂しい?」
「だって、まだ小さかったのにお父さんと離れて暮らしていたんですから。」
「俺は精々していたぜ。あの時期から親父は俺にとっては倒すべき相手だったからな。」
「そんな子供時代から?」
「ああ。それから…」
丹羽は和希の手を握ると、
「そんな顔をして親父の話をするな。」
「えっ?俺、どんな顔をしているんですか?」
驚いた顔をした和希に丹羽は少しふてくされながら、
「嬉しそうな顔だよ。」
丹羽の拗ねた顔を見て和希はクスッと笑った後、
「馬鹿ですね。竜也さんは父親みたいな存在だって言ったでしょ。俺が愛しているのは哲也だけです。」
「和希?今何て言ったんだ?もう一度言ってくれ。」
「嫌です。恥ずかしいですから。」
「ちぇっ。めったに聞けない言葉だったのによう。もっと心して聞けば良かったぜ。」
「仕方ないですね。お年玉代わりにもう一度言いますから、ちゃんと聞いてて下さいね。」
和希はふわりと笑いながら、
「愛してます、哲也。今年もよろしくお願いします。」