Later

この話を読まれる前に…
この話は2009年1月11日に発行したオフ本『デート日和』の続編です。
『デート日和』を読んでいなくても通じる話になっています。
『デート日和』は王和話です。
王様が和希の初体験の手助けをする話です。
初体験と言っても、和希が今までに行った事のないテーマパークとファミレスに王様が和希を連れて行ってあげる話です。
甘々のデート話です。






「和希、昨日は楽しかった?」
「うん。凄く楽しかったよ。」
啓太の質問にまんべんな笑顔で答える和希。
そんな和希の笑顔を見た啓太は自分の事のように嬉しくなっていた。

昨日和希は丹羽と一緒にテーマパークに行って来た。
最近忙しい2人にとっては久々のデートだった。
天気もとても良く、絶好のデート日和。
和希は昨日のデートが予定が決まったその日からとても楽しみにしていた。
特殊な環境で育った和希は啓太達一般人が知っている事を殆ど知らない。
だから、テーマパークにも行った事がなかったのである。
その事を知った丹羽が和希をテーマパークに連れて行くと言ったのだった。
そのデートの日を確保する為に丹羽はこの数日間、本当に真面目に学生会の仕事をしていた。
その努力に免じて中嶋も許可を出したのだった。

丹羽からテーマパークに誘われた和希は啓太にあれこれと聞いてきた。
啓太もテーマパークが好きなので、自分の分かる範囲で和希に話をしていた。
目をキラキラさせながら啓太の話を聞いていた和希。
子供とまったく変わりないその様子に啓太は密かに微笑んでいた。
それと同時に、当日丹羽は大変な思いをするだろうなぁ…と啓太は思った。
話だけでああなのだ。
きっと、一緒に行った丹羽は瞳を輝かせて周りを見ている和希に見とれてるのは間違いない。
その時の様子を思い浮かべて啓太は思わず笑いそうになった。

「で、どうだった?初めてのテーマパークは?混んでいた?」
「う〜ん。初めてだったからよく分からなかったけど、王様は空いてて良かったなって言ってたよ。殆どのアトラクションに乗れたし、ショーも結構見れたし。あっ、啓太のお勧めの夜のショーは良かったな。感動したよ。」
「和希も?あれは凄くいいよね。」
「うん。最後の締めにはちょうどいいよな。俺なんて感動して涙まででちゃったよ。」
「そうなの?それは…王様困ったんじゃない?」
「困る?王様が?どうして?」
不思議そうな顔をする和希に啓太は苦笑いをする。
本当にこういう事に関しては鈍いんだから。
ショーを見て感動のあまり涙を流す和希を王様が見たらきっと手を出したくなると思うんだけどな…
「和希が感動して涙を出していたら、王様どうやって接していいか迷わないかな?と思ったんだ。」
「なんだ。そう言う事か。確かに焦っていたな。まあ、そんな王様も可愛かったけどな。」
とろけそうに甘い顔をした和希を見て、聞かなければ良かったと思う啓太。
だが、そんな啓太を更に追い打ちをかける人物が現れた。

「おっ、和希に啓太じゃないか。」
「あっ…王様、中嶋さん。」
「今から夕食ですか?王様、中嶋さん。」
「ああ、学生会の仕事がやっと今終わったんだ。」
食堂に丹羽と中嶋が入ってきた。
「相変わらず凄い量ですね、王様。」
「おう。今までヒデに捕まってこき使われたから腹が減ってな。」
「何を言っている。昨日の内に帰ると言ったのに、今日の午後まで帰らなかったのはどこの誰だ。しかも携帯の電源は切ったままで連絡は取れないし。」
「だから悪かったって言ってるじゃねえか。その分今まで仕事をしてたんだからそれでチャラだろう?」
「あれくらいでチャラになると思うな。」
中嶋に睨まれ、丹羽は困った顔をした。

「あれ?そう言われれば、和希が帰って来たのも今日の午後だったよね?予定を変更したの?」
「えっ…その…つい楽しくて閉園までいたんだ…寮の門限に間に合いそうになかったから泊まってきたんだ。」
「違うだろう、和希。」
「王様?」
和希は焦っていた。
丹羽は時々馬鹿正直に本当の事を言ってしまう。
今回もなにか言いそうな嫌な予感がした。
「閉園までいなかっただろう。シタくなったから泊まったんじゃねえか。」
「…」
バシッという音が食堂に響いた。
啓太が気付くと、頬を真っ赤にした丹羽と顔を真っ赤な顔をした和希がいた。
「痛てぇ…何するんだよ、和希。」
「何するんじゃありません!王様にはデリカシーってものがないんですか!!」
「デリカシーくらい持ってるぜ。」
「持ってません!俺、もう部屋に帰ります!中嶋さん、失礼します。啓太、また後でな。」
和希はそう言うと急いで食堂から出て行った。

唖然としている丹羽に呆れ顔の中嶋が一言言った。
「相変わらず遠藤の尻に引かれているな、哲っちゃん。」
「何だよ、それ…」
「言葉の通りだ。だが、遠藤の言う事も一理ある。丹羽、もう少しデリカシーってものを持て。」
「ああ?それをヒデにだけは言われたくないぜ。」
食事を食べながら会話を続ける丹羽と中嶋を見て、啓太は気付かれないようにため息をついた。
王様にデリカシーを求めるのは無理じゃないかなと思う。
だって、王様は和希の事になると周りが見えなくなるからな。
まあ、それだけ和希が王様に愛されているって事なんだろうけど。
それにしても王様のあの頬…痛そうだな。
和希って結構容赦ないよね。
和希も王様に対して周りが見えなくなるのは一緒か。
結局はお似合いな恋人なんだな…
啓太はそう思っていた。





初めて体験のその後の話でした。
今日も平和なBL学園でした(笑)
啓太の語り話になってしまいましたが、王様と和希はお似合いだという事でまとめさせてもらいました。
しかし…
啓太の冷静な突っ込みには書きながら思わず笑ってしまいました。
                    2009/7/2