Massage
「和希、お前疲れてないか?」
「えっ?」
丹羽にそう聞かれ、和希は困った顔をした。
すぐに「違うんです。」と言えなかったのは本当に疲れていたから。
今日はベルリバティスクールの始業式。
1時間目は始業式、2時間目は避難訓練、3〜6時間目は授業と慌ただしく時間は過ぎ、今は放課後、ここは学生会室。
啓太と中嶋さんは会計室へ書類を届けに行き、今は丹羽と和希の二人きりである。
和希の様子が少し変だなと思っていた丹羽だが、
「王様、和希今日疲れているみたいなんです。授業中なんて寝てたし、“早く寮に帰れ”って言ったんですけど、どうしても学生会の手伝いをするって言い張って俺の言う事きかないんです。王様からも早く帰って休む様に言って貰えませんか?」
学生会室を出る時啓太から頼まれた一言。
よく見れば顔色もあまり良くない。
「やっぱり疲れてるんじゃないのか?」
丹羽は椅子から立ち上がると、ソファーに座っている和希の後ろに立つ。
「そ…そうですか?気のせいですよ、王様。」
「だからぁ、二人きりの時に“王様”って呼ぶなよ。」
「あっ…ごめんなさい。て…哲也。」
顔を赤く染めて答える和希。
いい加減その呼び方になれろよ、と丹羽は思う。
二人きりになっても、なかなか“王様”から“哲也”に呼び方が変わらない。
やっと言ったと思っても恥ずかしいのか小声で言う。
呆れつつもそんな和希が愛おしくてたまらない。
「お前、肩こってるな。」
いきなり和希の肩をもむ丹羽。
「痛っ!」
顔をしかめる和希。
「じっとしてろって。すぐに気持ち良くなるぜ。」
丹羽の言う通り、少しほぐれると気持ち良くなってきた。
「哲也って肩もむの上手いんですね。」
「ああ。ガキの頃よく親父の肩をもまされたからな。」
「竜也さんの?」
「うるさいんだぜ、あの親父。もっと強くもめないのかとか、押す所が違うとかよう。」
ふて腐れて言う丹羽にクスクスと笑いながら和希は言う。
「何となく二人のそんな姿が見える様ですよ。」
「そんな下らない想像なんてするなよ。それより和希、仕事忙しいんじゃないのか?無理して学生会の手伝いなんかしなくてもいいんだからな。」
「無理なんかしてませんよ。俺が哲也の側にいたいから勝手にここに来て手伝ってるんです。それとも迷惑ですか?」
「ばか。迷惑のはずないだろう。」
「良かった。」
ホッとした和希は小さな欠伸をした。
「ほんと、気持ち良いです。」
「そっか?」
「はい。」
暫く無言のまま時が経つ。
和希の肩をもんでいた丹羽は小さな規則正しい息づかいに気付く。
「和希?」
手を止めて和希を見ると、気持ち良さそうに寝ている。
「まったく。」
呆れた顔で丹羽はソファーに座ると自分の膝に和希の頭を乗せる。
余程よく寝てるにのだろう。
頭を動かされても目覚める気配すらない。
丹羽は和希の髪を撫でながら、
「そういえば、昨日も一昨日も忙しいからって外泊届けを出して、サーバー棟に泊まりこみだったな。
どうせまた寝ないで仕事してたんだろうな。まったく、少しは自分の身体を労れよな。」
気持ち良さそうに寝ている和希の額にそっと口付けをする。
「ヒデ達が戻るまでの僅かな時間しかねえが、ゆっくり休めよ和希。」
おまけ
学生会室のドアが僅かだか開いて、そこには啓太と中嶋がいた。
「ねぇ、中嶋さん学生会室に入りますか?」
「はぁ〜、仕方ない。今日の仕事はもう終わりだ。」
「本当ですか?良いんですか?中嶋さん。」
嬉しそうな顔で中嶋を見つめる啓太。
中嶋はそんな啓太に優しく微笑み、
「さっきまで、遠藤が疲れてるからどうしたらいいんだろうと、散々俺にこぼしていただろう。丁度良い。このまま丹羽の膝枕で暫く寝せてやれ。疲れも取れるだろう。」
そう言うと啓太の頭をポンと叩く。
「これからどうするんですか?」
「折角時間が空いたんだ。俺の部屋にでも来るか?」
「えっ…」
顔を赤くする啓太。
そんな啓太に中嶋はニヤッと笑うと、
「無理にとは言わないがな。」
そう言うと寮に向かって一人歩きだした。
ハッとした啓太は直ぐに中嶋の後を追う。
「待って下さいよ、中嶋さん。俺の事置いて行かないでください。」
2学期が始まったので、今日からまた学生会の手伝いをしようと張り切った和希。
張り切ったのは良いんですが、頑張って仕事を片付けた為、寝不足と疲れが出てしまいました。
「ヒデと啓太の奴、遅いな。何やってるんだ?」とぼやく王様。
その内王様も寝てしまい、学生会室のソファーで二人仲良くお昼寝です。
その頃啓太と中嶋さんは、中嶋さんの部屋でお互いを確かめ合ってます。