内緒の花束

中庭のベンチに座ってお昼を食べていた和希と啓太の所にトノサマがやってきた 。
「あれ?トノサマ、何銜えているんだ?」
「…」
トノサマは何も言わずにそのまま啓太の側にくると口に銜えているものを受け取 れという仕草をした。
「えっ?」
「啓太、トノサマが受け取ってくれって言ってるんじゃないのか?」
「俺にこれを?」
「ああ、きっとそうだよ。そうだろう、トノサマ。」
和希がトノサマを見ながらそう言うとトノサマはそれを銜えたまま頷く。
「ほら、トノサマだってそうだって言ってるじゃないか。」
「でも…これを俺に?」
困惑した啓太の顔をジッと見つめるトノサマ。
その瞳に負けた啓太はトノサマからそれを受け取った。
「ぶみゃ!」
満足そうに鳴くトノサマに啓太は念を押すように聞いた。
「トノサマ。これを俺にくれるのか?」
「にゃにゃ」
啓太は不思議そうに、
「どうしてこれを俺に…?」
「そう言えば、昨日のお昼にトノサマに唐揚げをあげていただろう。そのお礼じ ゃないのか。」
「それだったら、和希だってトノサマに唐揚げをあげたじゃないか。」
「確かに俺もあげたけど、1つだけだったろう。それに啓太は普段から色々とト ノサマに食べ物をあげているからきっとそのお礼だよ。」
「そうなのかな?」

啓太はトノサマを見て言った。
「トノサマ、そうなのか?」
「ぶにゃにゃ」
そうだと言うような返事。
「それなら、ありがたくもらっておくね。ありがとう、トノサマ。」
「にゃごにゃご」
「トノサマ。俺もだけど、和希もトノサマに食べ物をあげてるだろう。今度和希 にも何か花を持ってきてあげてね。」
「えっ?何言ってるんだよ、啓太。俺はいいからな、トノサマ。」
「駄目だよ、和希。俺ばっかりじゃずるいじゃないか。」
「ずるいとかの問題じゃなくて…俺はもらっても困るからさ。」
和希は啓太がもらった物を見ながら言った。
「そうなの?だって嬉しいじゃないか。和希はこういうのもらうの嫌いなの?」
「いや、嫌いとかじゃなくて…」
和希は言葉を濁した。

啓太がトノサマからもらったのは1輪の黄色のバラ。
花言葉は『可憐』『友情』
トノサマからの感謝の意味で啓太のイメージに合うバラにしたのだろう。
感謝ならダリアとかフリージア、ミモザなどがあるが、せっかく渡すのならバラ が良かったのかな?
猫を相手にそんな事を自然に考えてしまう和希はその事に関しておかしいとも感 じていなかった。
「で、どうしてなの?」
啓太の声で現実に戻る和希。
どう言えばいいのだろうかと悩んだが、
「ほら、中嶋さんて結構やきもちやきなんだよ。他の人から花なんてもらってき たら大変な事になるからな。」
「…」
「啓太?何変な顔をしているんだ?」
「だって…中嶋さんがやきもちやくって何だか想像できない。クールそうなのに な。」
「まあ、傍目にはそう見えるよな。実際俺も付き合うまでそう思っていたし。で も、ふたを開けたら意外にも違っていたんだ。」
「ふ〜ん。そうなんだ。」
和希からの惚気話を啓太は微笑みながら聞いていた。
和希ってば、天然だから今、自分が惚気たって絶対に気が付いていないんだろう な。
そういう所は本当に可愛いけど、中嶋さんはそういう和希の事が心配でたまらな いんだろうなとも思っていた。
そんな和希と啓太の会話を聞きながらトノサマは心の中で呟いていた。
『俺様がわざわざ花なんて贈らなくても、花を定期的に贈ってくれる相手がいる のだから俺は渡さないぜ』

そう…
中嶋は卒業してから和希と会う時には必ず花束をもってきていた。
最初は驚いていた和希だったが中嶋から『好きな相手に花を贈るのは当たり前だ ろう』と言われ、毎回顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに受け取っていた。
もちろん、もらった花束は寮に持ち帰るとまずいのでサーバー棟に持って帰って いたので、その事を知っているのは和希の秘書だけだった。
中嶋に会った時、和希は中嶋の車でサーバー棟まで送ってもらっていた。
車を降りる時中嶋は必ず和希に濃厚なキスをしていた為、車から降りた和希の頬 はいつもほんのり薔薇色に染まっている。
そして、中嶋の車を見送った後もらった花束にソッと口付けを落としながら、
「愛してるよ、英明。」
とろけそうな顔でそう囁いた後、サーバー棟に入るのであった。
だが、その姿を何度もトノサマに目撃されているなど和希は知らないでいたのだ った。




『GO!GO!HEAVEN!!6』で月雫様から頂いたSOAF FLOWERから思いついた話です。
夏コミで私が啓太のコスプレで月雫様がトノサマのコスプレでしたので、頂いた
時トノサマから啓太に1輪のバラの花のプレゼントvvと密かにはしゃいでいま した(笑)
その時、トノサマが啓太にバラの花をあげる話を思いついたのですが、ここは和 希受けサイト。
どう和希を絡ませようと悩んだ結果、この話が誕生しました。
中和なのに、中嶋さんが出て来なくってごめんなさい。
月雫様、素敵なSOAF FLOWERと萌えをありがとうございました!!
月雫様に限りお持ち帰りO.K.です。
                        2010年10月18日