ふとを覚ますと目の前には端整の顔があった。
眼鏡を外し、伏せられた長い睫毛。
規則正しい息遣い。
いつもは大人びて見えるのに、こうして寝顔を見るとまだ17歳なんだと思える幼い顔付きをしている。
いつの間にか、こうしてこの人に抱かれて眠る事に慣れてしまっている自分がいる。
優しく自分を抱き締めて寝ているこの人の傍で寝るのは、和希の数少ない安心できる場所だった。
自然と顔が綻ぶ。
何時だろうかと時計を確かめるとまだ起きるまでだいぶ時間がある。
もう一寝入りしようと思った和希の目に映ったのは窓の外の満天の星空。
和希は中嶋の腕をそっと外すと、床に落ちていたシャツを羽織り窓の側まで行った。
「わー。綺麗だ。」
そう囁く。
空気が澄んでいるせいか、今夜の星空はいつもよりも鮮明に見えていた。
手を伸ばせば、1つくらい星が取れそうな気になる。
嬉しそうに星空を見つめていた和希は近寄ってくる気配に気が付かなかった。
後ろからギュッと抱き締められる。
「何をしている?」
「星空を見ていたんだ。」
「星空を?」
「うん。ほら、英明も見て。今夜の星空はとっても綺麗だから。」
「ああ、そうだな。だが、俺にとってはお前の方がもっと綺麗だ。」
「…」
まったく、この人は…
偶にこういう風に聞いているこちらが恥ずかしくなる言葉をサラッと言う。
英明に顔を見られてなくてよかった、と和希は思った。
今の自分はきっと真っ赤な顔をしているだろう。
しかし、耳まで真っ赤になっているのに和希は気がついていなかった。
そして、耳まで真っ赤になっている和希を見て中嶋が嬉しそうに微笑んでいるのも知らなかった。
「星に願いをかけようとしていたのか?」
「えっ?どうして解ったの?」
中嶋はフッと笑うと、
「和希の考えそうな事だからな。」
「もう…英明には本当に隠し事ができないんだから参るな。でも、残念な事に星は流れませんでしたけどね。」
「流れ星か…天界からこぼれる光だ。そうそう見えるはずないだろう。」
「英明?英明もその言い伝えを知ってるの?」
「ああ。神が夜空をめくって地上を見た時に天界からこほれた光が流れ星という、中央アジアのアルタイ地方の言い伝えだろう。」
「そう、つまり流れ星が流れている時間は神様が見てくれている時間だから、その時にお願いをすれば神様が願いを聞いてくれて願い事が叶うっていうロマンチックな言い伝え。」
嬉しそうに言う和希に、
「いい歳をして、その言い伝えを信じているのか?」
「うっ…いい歳をしてって…いいじゃないですか。When you wish upon a star,Your dream comes trueって言うじゃないですか。」
「フッ…で、どんな願いをかけるつもりたったんだ?」
「それは秘密です。だって、願い事は秘密にしないと叶いませんからね。」
いたずらっぽく笑う和希。
「そうか。まあ、いい。お前の願い事くらい全て俺が叶えてやる。手始めにまずはお前を満足させてやろう。」
「えっ…」
中嶋はシャツを羽織っているだけの和希の白い身体に手を這わせた。
優しく撫でまわす手は先程まで散々愛された身体に再び熱をともす。
「…あ…あん…」
キュッと胸の飾りをつかまれると甘い声が和希の口から洩れる。
「やっ…英明…や…やだ…」
「嫌じゃないだろう?ここだってもうこんなになっているだろう?あれだけやったのにまだ欲しいとは相変わらず貪欲だな。」
「…うっ…」
熱を帯びているそこをダイレクトに揉まれると身体に電流が走ったように感じ、ビクッと身体が跳ねる。
「わざわざ俺のシャツを羽織って、俺を誘っていたのだろう。」
「ち…違っ…暗かった、から…」
「フッ…暗かったから間違えたと言うのか。まぁいい。そういう事にしといてやろう。」
「あっ…ああ…ひで…あき…」
和希は窓に手を付いて必死に立っているが脚がガクガクと震えていた。
それに気が付いた中嶋は、
「ベットに戻るか?」
和希は首を縦に振る。
「分かった。」
中嶋はそう言うと和希を横抱きにする。
瞳は潤み、高揚とした頬は赤く染まり、うっすらと開いた口は乱れた息を整えようをしている。
そんな艶のある和希の額に中嶋はキスをする。
ベットにソッと和希を降ろすと、和希は微笑んで言った。
「英明、星に願わなくても俺の願いは叶うと思う?」
「ああ。俺が必ず叶えてみせる。だが、ロマンチックに夢を叶えたいと思うなら星に願いをかけてみるんだな。」
和希はクスッと小さく笑う。
きっと、中嶋なら和希の願いを叶えてくれるだろう。
けれども、その夢はとても難しい願いだから…
神様にもお願いした方がいいのかもしれない。
いつか流れ星を見つけたら願い事をしよう。
中嶋の首に手を回しながらキスをする和希は星に願おうとしていた願い事を心の中でそっと呟いた。
…いつまでも英明と一緒にいられますように…
When you wish upon a star,Your dream comes true 〜星に願いをかける時、夢は叶う〜