Newly Married Couple
朝から超ご機嫌な人物がいた。
まあ、いつも元気なのだが今朝のパワーは通常よりも凄かった。
その人物とはここBL学園では知らない人はいない。
BL学園学生会会長丹羽哲也だった。
朝から山盛りのカツ丼を食べ、その上A定食まで食べていた。
丹羽の前ではそんな丹羽に驚きもせず、黙々と朝ご飯を食べている学生会副会長中嶋英明。
そして丹羽の斜め前、中嶋の隣に座っている中嶋の恋人の伊藤啓太は丹羽の食欲に唖然とした顔で見ていた。
その啓太の前に座っているのは丹羽の恋人の遠藤和希。
先程隣の丹羽に何か耳打ちされてから、真っ赤な顔で俯きながら食べている。
その風景に本来なら混んでいて満席のはずなのに、なぜかその周りの席は全て空いていた。
そして放課後…
雨が降るのではないだろうか…と啓太が心配する程、丹羽は真面目に学生会の仕事をやり、先程1人先に寮に帰って行った。
今学生会室にいるのは、啓太と中嶋だけだった。
「ねえ、中嶋さん。聞いてのいいですか?」
「丹羽の事か?」
「えっ…?何で俺の考えている事が解るんですか?」
驚いた啓太の頭を軽く叩くと、
「単純なお前の考えている事なんて手を取るように解るさ。」
「もう…中嶋さんてば。俺ってそんなに単純かな?」
少し不服そうに言いながら、でも嬉しそうに啓太は言った。
「中嶋さんは理由を知っているんですか?」
「ああ。聞きたくもなかったが丹羽が喜んで喋ったぞ。」
「王様が?よっぽど嬉しい事なんでしょうね。それて何だったんですか?そのわけって?」
中嶋は啓太の顔を見て言った。
「お前は遠藤から何も聞いてないのか?」
「はい?和希からですか?別に特には。やっぱり王様のご機嫌の理由って和希が関係していたんですね。」
「決まってるだろう?だから丹羽は今日あんなに真面目に仕事に取り掛かったんだ。」
「そうですよね。言われて見ればその通りですね。」
啓太は笑いながら答えていた。
その頃、丹羽は寮の自分の部屋に帰って来ていた。
ご機嫌でドアをノックすると中からエプロンをつけた和希がドアを開けた。
そして真っ赤な顔でボソッと言った。
「…おかえりなさい…」
そんな和希を丹羽は嬉しそうに見つめる。
「おう!ただいま!やっぱいいなぁ。部屋に戻ったら和希がそう言って出迎えてくれるのは。」
満足そうに言いながら部屋に入った丹羽に対して、引きつった笑顔をする和希。
実は先月の初めに和希は丹羽に尋ねた。
「ねえ、王様。もうすぐ王様の誕生日ですけど、何か欲しい物はありませんか?」
「欲しい物?」
「はい。何かありませんか?」
丹羽は嬉しそうに微笑む。
「本当に何でもいいんだな。」
その笑みに何か嫌な予感がした和希は慌てて、
「え〜と…何でもっていうわけにはいきませんが、俺にできる事でしたらいいですよ。」
丹羽は益々嬉しそうな顔をした。
「簡単な事だ。1日俺の嫁さんになってくれ!」
「えっ…?お嫁さん…?」
訳が解らないという顔をした和希に丹羽は続きを言った。
「ああ。新婚夫婦みたいに1日一緒に過ごすんだ。いいだろう?」
和希は開いた口が塞がらなかった。
そんな和希に丹羽はさらに追い討ちを掛ける。
「で、いつなら都合がいいんだ?夏休み中は仕事が忙しいんだろう?」
「えっ、ええ…9月に入って暫くしてからでもいいですか?」
「おう!楽しみにしてるぜ!!」
そして今日がその約束の日だった。
この日の為に丹羽が用意したレースのたくさんついた白いエプロン。
丹羽好みの服。
和希は辞退したくてたまらなかったが、約束は約束だ。
丹羽よりも先に寮に戻り、丹羽の用意した服を着てエプロンをつけて、丹羽が帰ってくるのを待っていた。
そして約束どおりの台詞を心を込めて言った。
丹羽の唇に自分の唇をそっと触れさせると、その一言を小声で囁いた。
「おかえりなさい、あなた。寂しかったです。これから食事にしますか?お風呂が先ですか?それとも…俺ですか?」
偶にはこんな話もいいかなぁ…と思って書いてみました。
さて問題です。
王様は最後の和希の台詞のどれを選ぶのでしょうか?
私は最後の和希を選ぶと思うのですがね♪
皆様はどうでしょうか?
2008年9月11日