「痛いか?」
「ちょっとね。」
苦笑いしながら言う和希を丹羽は見つめていた。
最近、忙しくてろくに眠る時間も取れない状態の和希は無理が祟ったのか腰を痛めてしまった。
念の為に病院に行ってきたが、炎症を起こしているだけなので電気と湿布での治療となった。
だが、忙しくて病院にも1度行ったきりで後は湿布で治そうとしていた。
大人しく寝ていれば治りも早いのかもしれないが、仕事で動きまわり、更に授業もできるだけ受けているので治るものもなかなか治らないでいた。
そんな日々を見かねた石塚から、『今日の仕事はもう終わりで構いませんので早く寮に戻って休んで下さい』と言われて和希は寮に戻ってきていた。
サーバー棟を出る時に丹羽にメールをしたので丹羽は和希が部屋に戻る頃に和希の部屋に来ていた。
部屋に入った丹羽は疲れ切ってベットで横になっている和希に声を掛けた。
「風呂には入ったのか?」
「まだ。」
「なら、入れ。」
「…」
「和希?」
「疲れたから嫌。」
「風呂に入ったらさっぱりするぞ。そうしたら湿布を張ってやるから、とにかく入って来い。」
「…後で…」
和希はあくびをしながら答えた。
これは放っておいたら確実に風呂に入らずに寝てしまいそうだ。
別に風呂に入らなくても構わないのだが、やはり湯船に沈んで身体を温めてから湿布を貼った方がいいに決まっている。
仕方がないと思い、
「今、俺が入れてやるからな。」
「はい?」
眠そうな顔をした和希がベットの上から起き上がった。
「な…何してるんだよ、哲也。」
「何って、一緒に風呂に入る準備。」
そう言いながらすでに上半身裸の丹羽を直視できなくて顔を反らす和希に丹羽は微笑んでしまう。
もう何度もお互いの裸姿なんて見ているのに、今だに恥じらう和希が可愛らしかった。
「ほら、和希もさっさと脱げ。」
「って…人の部屋で何裸になってるんですか!!」
顔を真っ赤にさせて抗議する和希。
「風呂に入るんだ。おかしくもないだろう?それよりもお前もさっさと脱げ。なんなら俺が手伝ってやろうか?」
「い…いいです…自分で脱げます。」
そう言うと慌ててベットから降りようとしたが、
「痛っ…」
腰を抑えて和希の動きが止まった。
「おい、大丈夫か?」
「っ…はい…何とか…」
「無理するなよ。いくら歳だからって言ってもその歳で腰痛持ちっていうのも不便だろう。」
「…その歳ってどういう意味ですか?」
キッと丹羽を睨む和希を見て、丹羽は失言したと気が付いた。
「あ…その…何だ…とにかく腰痛っていうのは癖になりやすいから気を付けないとな。」
まだ、睨んでいる和希に参ったなという顔をしながら、
「そうだ。マッサージをしてやる。」
「マッサージ?」
「ああ。上手いんだぜ。あの親父に鍛えられたからな。」
「竜也さんにですか?」
「そうだ。あの親父、家にいる時は疲れているマッサージしろってうるさくてよう。仕方がないからやってやったら下手くそだとか言いやがるから悔しくて上手くなろうと色々と勉強したんだ。」
「へえ。そんな事があったんですか。」
「ああ。」
「それじゃ、哲也のマッサージは竜也さんお墨付きの上手さなんですね。」
「そういう事だ。」
「なら、安心かな…」
ホッとした顔で言う和希に丹羽はムッとする。
「どういう意味だ?」
「えっ…えっと…とにかくお願いします。」
そう言ってベットに横たわる和希。
その姿に思わず欲しいと思ってしまったが、この状態でできるわけないと分かっている。
しかし、和希が腰痛になって以来ご無沙汰しているのでかなりつらいものはあるが、丹羽もそこまで人でなしではない。
和希が治るまでの我慢と心に決めている。
「それじゃ、やるか!」
丹羽は勢いよく和希の腰を押した。
数分後、とある病院に和希と丹羽はいた。
「鈴菱さん、何をしたんですか?」
「その…ちょっとマッサージをしたんですけど。」
和希の言葉を聞いた医師はため息を付きながら、
「今夜は入院して下さい。しかし…どういう風にしたらここまで悪化させられるのか私は知りたいですね。」
「…」
医師の言葉に和希は引きつる事しかできなかった。