☆お誕生日☆

あの頃はこんな未来が待ってるとは思わなかった…
啓太はそう思いながら、見つめていた。

「だから違いますって、王様。」
「そうか?これでいいんだろう。」
「駄目ですよ。こうした方がいいんです。」
「あ〜あ、夫婦喧嘩なら他所でやってよね、会長に遠藤。」
「なっ!誰が夫婦ですって!」
「王様と遠藤に決まっとるやないか。今さら何照れてるんや。」
「もう、俊介まで何言ってるんだよ。」
真っ赤になって成瀬と俊介に食ってかかっている和希を丹羽は楽しそうに見ている。
窓の側では煙草をふかせながら、またかという顔をして中嶋が見ていた。

啓太がベルリバティスクールを卒業してもう3年が経っていた。
今啓太は大学3年生になっている。
そして恋人である中嶋と一緒に暮らし始めて3年が経つ。
中嶋は今は法律事務所で働いている。
毎日夜遅くまで仕事をしている。
成瀬はプロのテニスプレイヤーになり、世界で活躍している。
俊介は大阪の実家に帰り、大学に通いながら自転車トライアル競技で活躍している。
丹羽は父親と同じ警察官になって現在は街のお巡りさんをしている。
和希はベルリバティスクールの理事を辞め、鈴菱の子会社の金融部門で活躍している。

今日は偶然にも皆が集まれるというので和希と丹羽の家に集まって啓太の誕生日会をする事になった。
しかし、その準備も一騒動である。
啓太は寮にいた頃を思い出し、1人微笑んでいた。
「啓太も何とか言ってくれよ。」
和希は啓太に救いを求めて声を掛けてきた。
「何で?」
「何でって、成瀬さんも俊介も言いたい放題で酷いだろう。」
「そう?2人の言ってる通りだと思うけれども。」
「さすがだね。僕のハニーはよく分かってる。」
「ハニーって…成瀬さん、いい加減にそれ止めてくれませんか?」
「どうしてだい?悔しいけど、副会長のものになったってハニーはハニーだよ。」
「由紀彦、もうそれくらいにせいや。」
「何だよ、俊介。これからって時に。」
「いいからもうよせや。ええかげんにしないと命がのうなっても知らないからな。」
俊介はそっと中嶋を指しながら言った。
相手を凍らすような瞳でこっちを見ている中嶋にさすがの成瀬も大人しくしたがった。

「しかし、遠藤はえらい豪華な所に住んどるな。確か高卒で仕事に就きはったんやろう。そんなに給料いい会社に入社したんだっけ。」
「ははっ…」
和希は笑って誤魔化した。
まさか言えるわけがない。
和希が天下の鈴菱グループの後継者だなんて。
これでも住まいはかなりレベルを下げたのだった。
けれども、どれほどレベルを下げようとも安全性は大切なのでどうしても庶民では手が届きにくい物件になってしまう。
「おい、サル。そろそろ始めるぞ。」
「あ〜!もう勘弁して下さいよ、その呼び方。」
「ああ、何でだ?お前にはピッタリじゃねえか。」
「ピッタリなんかじゃない!」
そう言って騒ぎ出す俊介。
「また、始まったな。」
何時の間にか啓太の側に来ていた和希が言った。
「うん。あの頃と変わりないね。」
「そうだな。あの頃と同じだ。」
顔を見合わせて笑い合う和希と啓太。
「いつまでもあの頃のままの気持ちを大切にしていきたいね。お誕生日おめでとう、啓太。」
「ありがとう、和希。」
暖かい日差しがさす午後のひととき。  






2009年5月3日『SUPER COMIC CITY18』で無料配布したペーパーの小説です。
5月3日だったので啓太のお誕生日まで後2日という事で啓太のお誕生日ssにしました。
BL学園を卒業しても皆で会えばあの頃と何も変わらない…
そんな一コマを書いてみました。
                 2010/1/4