Pocky
「中嶋さん。今日って何の日か知っていますか?」
中嶋の部屋にいきなり押しかけてきた和希は嬉しそうな顔をして中嶋に問いかけてきた。
和希がこういう顔をしてきた時はろくでもない事に決まっていると中嶋は知っていたので、
「知らん。」
一言そう言い放った中嶋に和希は頬を膨らませて言った。
「中嶋さん、冷たい。」
「冷たい?俺が冷たかろうと暖かろうと和希に何の関係があるんだ?」
「大有りです。中嶋さんは俺の恋人なんでしょう?」
「そうだが?」
「なら、もっと俺に優しくして下さいよ。」
むくれてそう言う和希の顎を中嶋は掴むといきなりキスをした。
巧みな動きで和希の口内を動きまわり、舌を絡められると和希の身体はピクッと震え、中嶋の腕をギュッと掴む。
そんな和希の反応を楽しむかのように中嶋は暫くキスを楽しんでいた。
クチュと音をして中嶋が唇を離すと和希はその場にペタンと座り込んでしまった。
中嶋の巧みなキスによって腰が抜けてしまったのだ。
和希は潤んだ目で中嶋を睨むと、
「いきなり何するんですか?」
そう怒鳴った和希に中嶋はニヤリと笑って、
「キスをしただけだ。和希が望んだからな。」
「俺はそんな事、望んでません!」
「そうか?今さっき自分で言った事をもう忘れたのか?」
「えっ?俺何を言ったんですか?」
「もっと優しくしてくれと俺に頼んだじゃないか?」
「確かに言いましたけど、そういう意味じゃありません。」
「ほう…ならどういう意味か、俺に教えてくれるか?」
今にも押し倒しそうな勢いを感じた和希は慌てて、
「中嶋さん、今日って何の日か知ってますか?」
最初と同じ質問をした。
「いや、知らないと言ったはずだが。」
「なら、俺が教えてあげます。」
和希は中嶋の気がそれたのにホッとしながらポケットにしまってあったそれを中嶋の目の前に出した。
怪訝そうな顔をする中嶋を無視して和希は嬉しそうに言った。
「今日は『ポッキーの日』なんですよ。」
「…それで…」
「もう、中嶋さんってば。ポッキーの日にはポッキーゲームをするんでしょ?だから俺ポッキーを持ってきたんですよ。」
「…」
中嶋は呆れた顔をして和希を見た。
前から少し変わった奴だとは思ったが、ここまで馬鹿だとは思わなかった。
そもそも和希がポッキーゲームなんて言葉を知っているわけがない。
どうせ、伊藤か誰かに聞いたのだろう…
しかもそれを間に受けてわざわざポッキーまで持ってくるとは。
呆れてものが言えないとはこの事だと中嶋は思った。
中嶋はため息をつきながら、
「和希。そのポッキーゲームの事を誰から聞いたんだ?」
「えっ?啓太と七条さんにですよ。このポッキーも七条さんが用意してくれたんです。本当に七条さんは親切ですよね。」
「…」
どこが親切なんだ…中嶋は思った。
俺が甘い物を嫌いなのを知っていてわざと和希を煽ったのだろう。
和希はこういうイベントは大好きだからな。
まったく俺と付き合って何ヶ月経っていると思ってるんだ。
いい加減に恋人の好みくらい覚えたらどうだ…と中嶋は思っていた。
そんな風にイラついている中嶋の気持ちなどにちっとも気付かない和希は少し困った顔をして、
「えっと…もしかして中嶋さん、ポッキーゲームを知らないんですか?」
まったく、どうしてそういう風にしか考えられないのか中嶋は呆れてしまう。
そんなものを知らないのはお前くらいだろう…と中嶋は思いながら、
「知っているが興味がない。それよりも話はもう終わりか?」
「えっ?」
「俺はさっきの続きをしたいんだ。」
「さっきの続き?…えっ?…ちょっと…中嶋さん…待って…」
待ってといわれて待つ中嶋なわけはなく、そのまま和希は中嶋においしく頂かれてしまったのであった。
情事の後、疲れきってベットで熟睡している和希の頭を中嶋はそっと撫でる。
先程までの行為で湿っているその髪を優しく撫でながら、中嶋は先程和希が持ってきたポッキーの箱を床の上から取った。
普通見かけるポッキーの赤い箱とは違い、青い箱のポッキー。
箱には『メ○ズポッキー』と書いてある。
中嶋はその箱を開け、中から1本ポッキーを取り出した。
「まったく、こんな子供騙しのお菓子を喜んで持ってくるんだからな。」
中嶋は和希を見ながらそう言った。
そして一口口に含むとふわっとほろ苦いチョコの味がした。
中嶋はフッと微笑むと、
「偶に食べるとそこそこに美味いものだな。」
それから和希に向って呟いた。
「ポッキーゲームなんかはしないがこれだったら一緒に食べてやってもいいぞ。」
中嶋のその言葉を深い眠りの中にいた和希は知らないでいた。
今さらですが、11月11日はポッキーの日でした。
去年は王和で書かせて頂いたので、今年は中和で書かせてもらいました。
ポッキーを食べる中嶋さんはちょっと想像しずらかったのですが、まあこれも和希への愛という事で見逃して下さいね(笑)
今回で11月の中嶋さん月間は終わりです。
僅か4回でしたが、月曜日UPの小説は全て中和にしてみましたがいかがでしたでしょうか?
楽しんで頂けだら嬉しいです。
2008年11月24日