Question

珍しく丹羽と和希2人きりの学生会室。
書類整理に嫌気がさしていた丹羽は和希に話掛けていた。
「なあ、遠藤。もしもだけどよう。ヒデに1年に1回しか会えなかったらどうする?」
「はい?」
和希はパソコンから顔を上げ、怪訝そうな顔で丹羽を見た。
「あの…王様?質問の意味がよく理解できないんですけど?そもそもどうして俺と中嶋さんが1年に1度しか会えないんですか?」
「だからもしもだよ。ほら、もうじき七夕だろう?もしもヒデと遠藤が彦星と織姫だったらよう、どうするのかな?と思ったんだよ。」
「ああ、そういう意味ですか?」
和希は納得した顔をした後、考え始めた。

英明と1年に1回しか会えない?
会えなくても電話やメールは可能なのだろうか?
もしも、それもダメだったら約1年間音信不通?
英明の声を1年も聞けない?
英明に1年も触れられない?
和希の目にうっすらと涙が浮かんできた。

それを見た丹羽は焦った。
「え…遠藤?どうしたんだ?」
「王様…俺、ダメです…1年も中嶋さんの声を聞けなかったり、触れられなかったら、俺…耐えられない…」
今にも涙が零れそうな瞳で和希は答えた。。
「落ち着け、遠藤。今のは例え話だから、現実にはありえねえ事だからな。」
「…そうなんですか?…」
「ああ。だからそんな顔をするな。」
丹羽の言葉を聞いて、和希は嬉しそうに微笑みながら頷いた。
それを見た丹羽はホッとする。
それと同時に遠藤の事を可愛らしいと思った。
もしもの例え話でここまで真剣になれるだなんて思わなかった。
遠藤のこんな素直で可愛らしい所にヒデが引かれているのかもしれないなと丹羽が思ったその時…

「丹羽。俺のモノを泣かしていい度胸をしているな。」
「ヒデ?いつ帰って来たんだ?」
いつの間にか会計室に行っていた中嶋が学生会室に戻って来ていた。
しかも底冷えしそうなオーラを出しながら立っている。
「いや…これはそのな…」
しどろもどろになる丹羽に和希が慌てて声を掛ける。
「中嶋さん。王様は何も悪くないんです。俺が勝手に涙を出しただけで。」
「和希、お前は何もなくても泣くのか?」
「違うんです。王様はもしもの話をしただけなんです。それに対して俺が過敏に反応しただけなんです。」
「もしもの話?」
「はい。もしも俺と中嶋さんが彦星と織姫みたいに1年に1回しか会えなかったらどうするって聞かれたんです。」
「ほう?それで?」
「俺…1年も中嶋さんの声が聞けなかったり、触れられなかったら耐えられないと思って…そうしたら自然と涙が出てきたんです。」

和希は思いだしただけでまた涙が出そうになった。
そんな和希の頬を中嶋は優しくさすった。
「お前は馬鹿か?」
「なっ…馬鹿って何ですか?失礼ですよ。」
「俺がお前を手放す訳ないだろう。」
「中嶋さん?」
不思議そうな顔をする和希に、中嶋はニヤリと笑うと、
「たとえ、世界中を敵に回しても和希を手放さない。お前はそんな簡単な事すら分からないのか。」
「英明…」
和希の頬を一筋の涙が流れた。
それを中嶋は優しく拭う。
「安心するがいい。俺はけして和希を手放さない。だから、安心して俺の側にいろ。」
「はい!」
和希はそう言うと中嶋の胸に飛び込んでいった。




七夕にちなんだ話を書こうと思ったらこんな話になってしまいました(苦笑)
もしも和希と中嶋さんが織姫と彦星みたいに1年に1度しか会えなかったらどうなるのかな?と思って書いてみました。
たとえ、そこがどこだろうと、誰がいようとも中嶋さんしか見えなくなった和希は思いっきり中嶋さんに甘えてしまいます。
この後王様はきっと申し訳なさそうにそっと学生会室を出ていくと思います。
後で中嶋さんからのお仕置きが待っていますが…頑張れ、王様!!
                         2009/7/6