Rainy Season

「王様、もうそろそろ学生会室に戻ったらどうですか?」
理事長室のソファーに座ってコーヒーを飲んでいる丹羽に和希は話しかけるが、見事に無視される。
和希はため息を付ながらもう1度言った。
「王様。俺の話聞いてますか?」
「ああ…」
気の乗らない返事が帰ってくる。
「聞いてるんならそろそろ戻ったほうがいいんじゃないんですか?」
「和希、ここのコーヒーってやっぱり美味いよな。さすが、理事長室のコーヒーだよな。良いコーヒー豆使ってるんだろう?」
「もう、王様ってば。話ずらさないで下さいよ。」
「だってよう…」
丹羽は面白なさそうに言う。
「最近ずっと雨なんだぜ。昼寝にもいけないから毎日ヒデに捕まって仕事ばっかりやらされてるんだ。いい加減、嫌になるぜ。」
「だって、それが学生会会長の仕事でしょう?」
「解ってるけどよう。どうしても苦手なんだよ。」
頭をガシガシ掻きながら丹羽は言う。
そんな丹羽を見て和希は仕方が無いな…という顔をした。


丹羽がデスクワークが苦手なのは和希にだって解っている。
だけど、苦手だからといって逃げていいわけじゃない。
いくら優秀な学生会副会長の中嶋がいるとは言え、最終的には学生会会長の丹羽に全てがかかってくる。
もちろん、丹羽だってやらなくてはいけない事くらい解っている。
が…数日前に梅雨入りしたせいか、この数日毎日が雨だ。
最初のうちは雨だからと仕方がなしに仕事をしていた丹羽だったが、さすがにもう限界らしい。
まあ、和希も丹羽にしては今回はかなり頑張ったと思っている。
けれど…
王様がここにいる事など、おそらく解っているであろう中嶋さんからは何の連絡もない。
きっと怒ってるんだろうな。
王様だけでなく、俺にも…
そろそろ王様を学生会室につれて行かないとまずいだろう。
啓太だって待ってるだろうし。


和希は内線を押して秘書室に繋ぐ。
「和希様、何か御用ですか?」
「石塚、悪いが1時間半程席を外す。戻ってきたらまた連絡する。」
「解りました。」
内線を切ると和希は王様が座っているソファーに座る。
「王様、俺も一緒に学生会室に行きますから、戻りましょう。」
「和希?」
「仕事があるから、1時間だけしかいられませんけど、それでもいいですよね?」
そう言って丹羽に触れるだけのキスをするとスクッと立ち上がる。
「今着替えますから待ってて下さいね。」
スーツから制服に着替え始める和希。
理事長から1年生の遠藤和希に変わる瞬間だ。


着替え終わった和希は丹羽の側に行き、
「お待たせしました。行きましょうか?」
丹羽はそんな和希の腕を引っ張る。
丹羽の膝の上に座る和希。
「もう、何するんですか?王様。」
「まだここにいたい。」
「何我侭言ってるんですか?もうタイムリミットです。学生会室に戻りますよ。」
「もう少しだけ。」
「王さ…」
丹羽にキスをされ言葉を続ける事ができない和希。
しかも、いきなり舌を入れ、和希の舌に絡みつくキス。
「…んんっ…」
和希の口から甘い声が漏れる。


どれくらいの時間キスをしてたのだろうか?
ほんのりと頬を赤くさせ、潤んだ目をした和希がそこにはいた。
そんな和希を丹羽は嬉しそうに見詰める。
「和希、俺1人で学生会室に戻るな。」
「えっ…俺も…」
そう言って立とうをしたが足に上手く力が入らない。
「…どうして…」
困った顔をする和希に丹羽は嬉しそうに言う。
「直ぐには立てないだろう?」
「何で?」
「何でって。ずっとキスしてたからな。」
「ずっとって…」
和希は腕時計を見て呆然とする。
こんなに長い間キスしてたなんて。
恥ずかしさで更に顔を赤くする和希。
そんな和希の頭を撫でながら、
「充電もしっかりさせてもらったし、俺もう戻るな。早く戻らないとヒデの奴が煩いしな。」
何も言えずにいる和希の口にもう1度軽くキスをすると丹羽は理事長室から出て行った。


後に残った和希がその日の仕事をミスばかりして、秘書に呆れられるのはもう少ししてからの出来事である。






久々の王和話です。
梅雨入りしましたが、最近は良い天気が続いています。
気温も高くもう夏ですか?と言う気分です。
という事で、梅雨の話を書いてみました。
雨で逃げ場がない王様は恋人の和希がいる理事長室に逃げ込んでます。
王様がいつも逃げ回っている事は知っていますが、さすがにかくまってあげるのはどうかと悩む和希。
結局王様と一緒に学生会室に戻ろうとしますが、王様の方が上手でしたね(笑)
どこでも甘々な王様と和希でした♪
                 2008年6月16日