Reluctance

「和希、お前俺に何を隠しているんだ?」
「えっ…」
中嶋の質問に和希は焦った顔をした。
「な…何の事ですか?俺…中嶋さんに隠し事なんてしてませんけど?」
笑顔で答える和希。
これが啓太や王様だったらあっさりと騙されてくれるのだが、今回は相手が悪かった。
そんな作った笑顔なんかで簡単には騙せるわけがなかった。
「ほう…そんな顔をしても無駄だと解ってないのか?」
中嶋に詰め寄られ和希は無駄だと解っていても後ずさりをした。


「和希、俺に隠し事をするとお仕置きだと教えなかったか?」
「えっと…そうでしたっけ…?」
あくまでもシラをきろうとするが、そんな事で騙されてくれる可愛い人物でない事くらい和希にだって解っていた。
が…今回は何としても隠したかったのだ。
理由が解れば待っているのはお仕置きだ。
いや…この場合、言っても言わなくてもお仕置きが待ってる事は決定事項のようだった。
それでも…和希は悪あがきをするのだった。


「中嶋さん、俺の事信じてくれないのですか?」
少し首を傾けて下から覗き込むように中嶋を見つめる和希。
いつもの中嶋ならこれで大抵許してくれるのだが、やはり今回はこの手も効かなかった。
「いつから、そんな手を使って誤魔化す事を覚えたんだ?」
「…」
こうなるともうどうにもならない。
「和希。この頃伊藤とかげでコソコソと動き回っている理由をあくまで隠すのなら、その身体に効いてみるだけだ。」
「えっ…と…中嶋さ…」
その後は唇を塞がれて何も言えなかった。


お仕置きという情事が終わり、疲れきって学生会室のソファーにぐったりと横になっている和希はキッと中嶋を睨みつけた。
「中嶋さん…酷い…」
いくら睨んでも潤んだ瞳では余り効果はなく、中嶋はニヤリと嬉しそうに笑いながら言った。
「最初から素直に言えば良かったんだろう。」
「素直に言ったって、どうせお仕置きはしたんでしょ?」
「まあな。」
「…酷い…」
「酷い?それはこちらの台詞だ。なぜ、お前が会計の犬の誕生日祝いなどするんだ?そんな必要はないだろう?」
和希は頬を膨らませて言った。
「七条さんにはいつも色々お世話になってるからお礼がしたかったんです。」
「お礼?そんなものは必要ない。」
「もう…どうして七条さんの事になるとそう目くじらをたてるんですか?七条さんはちょっと変わってるけど、良い人なのに。」
「…」
中嶋の顔色が変わるのに気付いた和希は慌てて話を変える。


「中嶋さん、俺これじゃ寮まで歩いて帰れそうにありません。どうしてくれるんですか?」
「俺が連れてってやるさ。」
「えっ…それってまさか…」
「何だ?不服か?」
「だって…」
和希は顔を赤くさせる。
中嶋は間違いなく横抱きにするはずだ。
そんなのは恥かしくて嫌だと和希は思っていたが、歩けないので拒否もできない。
そんな和希の考えなど解りきっているかのように中嶋は和希に制服を着せると、和希を抱き上げる。
これで、明日は確実に皆にからかわれるなと思いながら、そっと和希はため息を付いた。




七条さん、お誕生日おめでとうございます。
今年2度目のお祝いです(?)
和希は啓太と2人で七条さんのお誕生日の計画をたてていました。
でも、中嶋さんにばれると拙いので極秘に行動してたのですが、やはり無駄でした(笑)
お仕置きって言っても和希を溺愛している中嶋さんの事ですから、惨い事はしなかったとは思いますが、きっとかなりしつこかったのでしょうね。
お疲れ様です、和希。
                 2008年9月15日