〜食事は大切です〜《松岡×和希》   (2009年7月に載せていた拍手ssです) 

「うぅ…松岡先生…お腹が痛いんですけど…」
そう言いながら和希は保健室に入って来た。
「どうしたんだい?遠藤君。腹痛かい?」
「…はい…おそらく食べ過ぎかと思うんですけど…」
「食べ過ぎ?ならコレを飲めばすぐに落ちつくと思うよ。」
松岡はそう言うと、水とクスリを和希に渡した。
それを飲んだ和希にベットで休むように言うと、
「午後の授業は休んだ方がいいね。ちょっと職員室に言って伝えてくるからゆっくりしてなさい。」
そう言って松岡は保健室を出て行った。
今日は7月だけれども、あいにくの雨。
小雨だけれども、窓から吹いてくる風が心地よい。
普段の疲れもあって、和希はベットの上でウトウトと寝始めた。

ちょうどその頃…
職員室を出た松岡は啓太に会った。
「あっ、松岡先生ちょうどいい所で会えました。」
「伊藤君?どうしたんだい?」
「あの…和希大丈夫ですか?顔色悪かったから一緒に保健室に行くって言ったんですけど、1人で行くってきかなくて。」
「ああ。お腹が痛いと言っていたんで、さっきクスリを飲ませてからベットに横にならせたよ。もう少ししたら落ちつくんじゃないかな?」
「そうなんですか?良かった。」
ホッとする啓太に松岡は聞いた。
「遠藤君から食べ過ぎでお腹が痛いって聞いたんだけど、何かいっぱい食べたのかい?」
「それが…」
啓太は困った顔で言った。
「和希の奴、最近暑いのと忙しのとで食欲がないって殆ど食べてなかったんです。で、今日のお昼も殆ど食べようとしなかったんですが、王様がそれに気が付いて無理矢理和希に食べさせちゃったんです。」
「ああ…なるほどね。」

松岡は納得した。
おそらくこの数日殆ど食べていなかったんだろう。
そこに大量に食べ物を胃に入れれば驚いてお腹も痛くなるだろう。
「一応俺も王様を止めたんですが、俺も食べる量が少ないって言われて…参っちゃいました。王様って暑くても食欲が落ちないんですね。ある意味羨ましいですけど。」
そう言って笑う啓太に、
「遠藤君はクスリを飲んだからもう大丈夫だと思うよ。それよりも午後の授業は休んだ方がいいと思ったから先程午後の担当の教師にその旨を伝えて来たから。」
「分かりました。俺、放課後になったら和希の鞄を届けに保健室に寄りますね。」
「そうしてもらえると助かるな。」
「はい。それじゃ午後の授業が始まりますので俺は教室に行きます。和希にお大事に…って伝えといて下さい。」
「分かった。それじゃ、放課後保健室で待っているからね。」
「はい、失礼します。」
啓太は頭を下げて教室に向かって言った。

保健室に戻った松岡は和希がいるベットのカーテンを開けた。
そこには気持ちよさそうに寝息を立てている和希がいた。
疲れが溜まっているのだろう。
ほんの少しだが、顔色が悪い。
けれども、寝息は規則正しいので松岡はホッとしていた。
「また、無理をしたんじゃないかと心配したんだよ。でも、食べる事は大切な事だからね。丹羽君には感謝をした方がいいかもね。」
この時期…梅雨の季節、和希の食欲はかなり落ちる。
仕方がないので、毎年栄養剤入りの点滴を何度が打っていた。
でも、無理矢理でも栄養剤入り点滴よりも食べ物を取った方が身体にいいに決まっている。
「和希に内緒で丹羽君に和希の食事の管理を時々頼もうかな?」
クスリと笑いながらそう言うと、松岡は眠っている和希の前髪にそっと触れた。





〜久しぶりの2人の時間〜 《丹羽×和希》  (2009年8月に載せていた拍手ssです) 

  8月1日は竜也の誕生日だった。
和希は毎年誕生日当日は避けて竜也の誕生日のお祝いの席を設けていた。
誕生日当日は奥様と一緒に過ごして欲しいと思っているからだ。
今年は竜也の都合により誕生日から1週間程遅れてお祝いをする予定だった。
別に一緒に食事をして飲むだけなでやましいことは何もない。
けれども、丹羽にとっては違っていたようだった。

「和希、お前今度親父と飲むって本当か?」
「あっ、はい。竜也さんのお誕生日のお祝いに一緒に食事をして飲みに行く予定です。」
「…それだけか?…」
「はい?」
和希は首を傾げた。
他にどんな理由があるのだろうか?
不思議そうに丹羽を見る和希に丹羽は信じられない一言を言った。
「まさかとは思うが、浮気じゃないだろうな。」
「はい?浮気?誰と誰がですか?」
「和希と親父に決まってるだろう。」
和希は驚いて目を見張って丹羽を見つめた後、ため息を付きながら、
「どうしてそうなるんですか?竜也さんは奥様をあんなに愛してるのに。」
「だってよう…」

丹羽は頭を掻きながら言った。
「夏休みは忙しいって言ってろくに寮にも帰って来ないじゃないか。それなのに、親父の為にわざわざ時間を取るなんて怪しいと思ったんだ。」
拗ねた感じで言う丹羽が可愛らしくて和希は微笑んでしまった。
「竜也さんにはお世話になっているんです。でも…哲也が言うのも一理ありますね。確かに俺は仕事が忙しくてなかなか哲也に会う時間が取れなかった。だから…」
和希は言葉をいったん切った。
その続きはわざと言わないで言おうと思った。

「今日はもう帰ります。」
「えっ?いいのか?」
「はい。本当は俺、哲也不足で死にそうなんです。俺を元気にしてくれますか?」
甘えるように丹羽の胸に頭をコツンとつけた。
丹羽は嬉しくて和希をギュッと抱き締める。
「俺もだ。和希が欲しくてたまらなかった。」
そう言って和希の身体に触れる丹羽。
和希は慌てて、
「やだ…哲也…ここじゃ…やっ…」
「悪い。我慢できないんだ。」
切羽詰まった顔をした丹羽に和希は困った顔をして、
「仕方のない人ですね。ここじゃ無理ですから、隣の仮眠室まで我慢してくれますか?そこなら構いませんので。」
「分かった。」

丹羽はそう言うと和希を抱き上げて急いで隣の仮眠室に入って行った。
暴走した丹羽が和希を手放したのは、翌朝の石塚が出勤してくる1時間前だった。





〜偶には甘えさせて下さい〜《七条×和希》   (2009年9月に載せていた拍手ssです)

「えっと…七条さん…」
「なんですか?和希。」
戸惑い気味に恋人の七条に声をかければ、耳元でそっと囁かれてしまい、身体がビクッと震えてしまう。
そんな和希の動きに気付かない七条ではない。
そのまま…後ろから抱き締めている和希の首筋にそっと唇を落とす。
「…やっ…」
和希は甘い声を出す。

先程まで散々求められた身体は、今さっきのシャワーで落ち着いてきていたがそんな事をされてはまた熱が再発してしまう。
困った和希は七条の手に触れると、
「今日の七条さんは少し変ですよ?何かあったんですか?」
「分かりませんか?」
「そうだな…夏休みに余り会えなかったせいですか?」
「確かに余り会えませんでしたが、その分会った時には濃い時間を過ごしたから大丈夫ですよ。」
「し…七条さん…」

和希は真っ赤な顔をして後ろの七条を振り返った。
そこにはいつもと同じ優しい笑顔をした七条がいた。
その笑顔を見た和希の頬は別の意味で色付いてきていた。
「和希?」
黙って七条を見つめる和希を心配そうに言った。
その声に気付いた和希はハッとしながら、
「え…えっと…なら、どうして?」

七条は和希の頬を優しく撫でながら、
「ちょっとしたやきもちですよ。新学期が始まってから和希は会計室ではなく、学生会室にばかり通っていますからね。」
「それは…」
「ええ、分かってます。会長がかなりの量の仕事をためていますからね。あの量ではいくら副会長が頑張っても無理だという事も理解しています。けれども、いくら頭で理解していても、心はついていかないんです。」
「七条さん。俺は貴方にそんな思いをされているなんて、考えもしませんでした。俺はどうしたらいいですか?どうしたら七条さんの心を安らかにできますか?」
「和希…」

七条を包み込むように見つめる和希に七条は言った。
「では…今だけでいいです。こうして和希を抱き締めさせて下さい。」
「はい。気の済むまでずっと…こうして俺を七条さんの愛で包み込んで下さいね………愛してます。」
囁くようにつぶやいた最後の一言を聞いた七条は、和希を少しだけ強く抱き締めた。






〜制服を初めて着た日〜《石塚×和希》  (2009年10月に載せていた拍手ssです)

クローゼットからクリーニングに出した制服のジャケットを取り出した。
明日は10月1日。
衣替えだ。
もっとも10月9日までは移行期間なので夏服、冬服、どちらでも構わない。
この数日は雨が降って寒いので長袖のシャツを着ている生徒も多い。
和希もどちらかと言えば、半袖よりも長袖を多く着ていた。
仕事柄、日焼けする事がない白い肌は陽に当たるとすぐに赤くなってしまうので半袖をあまり着ないで過ごしていた。
久しぶりに見る朱いジャケットは数ヶ月前、初めて袖を通した日を思い出させた。
「あの時の顔はおかしかったな…」
クスッと笑いながら和希はその日を思い出していた。


和希がベルリバティスクールに入学すると決まって制服が理事長室に届けられた日の事だった。
「和希様、ベルリバティスクールの制服が届きました。」
「ありがとう、石塚。悪いけど、そこに置いといてくれ。後で確認するから。」
「はい。」
石塚はそう答えると制服が入った箱を和希が指定した所に置いた。
「いよいよですね。」
「ああ。ようやく理事会の連中を説得して学園に潜り込む事ができるんだ。絶対に漏洩の原因を突き止めてみせる。」
目を輝かせながら言う和希に石塚は心配そうに、
「お気持ちは察しますが、あまり無理はなさらないで下さい。和希様はただでさえ忙しい立場なのですから。」
「それを言うなら石塚の方だろう?俺が学園に通うようになったら仕事の負担が増えるんだ。石塚にも岡田にも今まで以上に苦労をかけてしまうな。」
「それは構いません。私も岡田もその件については何の不満もありません。それよりも、和希様こそこらから大変な日々が待っているのですから、くれぐれも体調にはお気を付け下さい。」
「ありがとう。心配を掛けてしまって悪いな。」
和希はニコッと石塚に笑ってみせた。
その笑顔は恋人だけにみせる、とろける程甘い笑顔。
「そうだ。俺の制服姿を見てくれるか?」
「私でよろしければ。」
「似合わなくても笑うなよ。」
「はい。」
恥ずかしそうな顔をして言う和希に石塚は微笑みながら言った。

理事長室の隣の仮眠室でスーツからベルリバティスクールの制服に着替えた和希が戻って来ると石塚は驚いた顔をしてジッと和希を見つめていた。
和希は不安になった。
いくら童顔とはいえ、二十歳を過ぎている大人が高校生の制服を着るだなんてやはり似合わないのだろう。
和希がそう思ったその時、
「まさか、これ程お似合いだとは…」
「えっ?」
驚く和希に石塚は、
「想像以上にお似合いです。こんなに素敵に着こなしている生徒は滅多にいないと思います。」
「着こなすって…おかしくないのか?」
「とんでもない。とてもお似合いです。」
和希はホッとしながら、
「良かった。俺…似合わないと思われたと思っていた。」
「どうしてですか?こんなにもお似合いなのに。」
和希は困った顔で、
「さっき、制服を着て入って来た時、石塚は一瞬驚いた顔をして黙ってしまっただろう?だから似合わなくて呆れてたのかと思ったんだ。」
「それは…誤解させてしまったようですね。余りに可愛いらしくて言葉を失っていただけです。」
「か…可愛らしいって…」
顔を朱くさせた和希の頬を石塚は優しく撫でると、
「私の愛しい人は本当に可愛らしい方です。理事長の鈴菱和希も、生徒の遠藤和希もとても可愛らしいです。これ以上私を貴方の虜にしてどうしようと考えているんですか?」
「祐輔…」

呼び方が石塚から祐輔に変わったのは、上司と部下の関係から恋人の関係に変わったからだ。
そんな和希を嬉しそうに見ながら石塚は和希にキスを落とす。
「こんなに可愛らしい姿を見せられてはもう我慢できません。」
「うん…我慢なんてしないで…」
「まったく、貴方って方は…私を煽るのが本当に上手なんですから。今夜は歯止めが効かなくても知らないですからね。」
「…いいよ…祐輔になら何をされても…」
「それでは、お言葉に甘えさせてもらいます。」
和希をそっと持ち上げると石塚は仮眠室へと歩き出した。
今日出来上がったばかりの制服を汚すのは気にはなったが、予備の制服もあるからいいか…
そんな事を思いながら和希は石塚の胸に顔を埋めるのであった。



〜たくさんの思い出〜《中嶋×和希》 (2009年11月に載せていた拍手ssです)

   ドアをノックし、「遠藤です」と言っても声がしなかったので変だなぁ…と思いながら学生会室に入った和希は珍しいものを見てしまった。
ソファーに寄り掛かって寝ている中嶋だった。
「珍しい事もあるんだな。」
そう言いながら、中嶋の側に来てその寝顔を見ながら、
「英明、疲れているんだなぁ…」
和希が近づいても起きない中嶋に和希はそう呟いた。

学生会の引き継ぎは殆ど終わったが、丹羽がやり残した書類の整理が山のようにある。
受験にむけての勉強だってある。
なのに、どんなに忙しくてもいつでも和希の事を気遣ってくれた。
そんな中嶋の優しさについ甘えてしまう和希。
でも…
そんな生活も後少しだけだと思うと、和希は寂しくなってしまう。
春にはここを卒業して新しい世界に旅立っていくのだから。

後数日で学生会室も新役員と入れ替わる。
そうすれば、中嶋はもうここにはいない。
放課後、啓太と一緒に学生会の仕事を手伝いに来た事。
仕事が遅くなって急いで寮に向かって帰る途中で学生会室の窓の明かりがついていてまだ頑張っているんだと思った事。
休日も学生会で仕事をしている中嶋に差し入れを持っていった事。
学生会室にはたくさんの思い出がある。
もちろん楽しい思い出ばかりではない。
辛い思い出だってある。
でも、その1つ1つが今となってはかけがいのない思い出になっていた。

思い出がたくさん詰まった学生会室に来るのも後僅かなんだなぁ…と思いながら、和希は学生会室を見回していた。
そして、数ヶ月後には卒業してしまう中嶋と今までのように傍に居られない寂しさをしみじみと感じていた。
傍にいられなくても、いつまでも今のようにお互いの事を思いやれる気持ちを大切にしたいと思っていた。

和希はジャケットを脱ぐと、中嶋の身体にそっと掛けた。
「風邪を引くと困りますからね。仕事があるからもう行くけど、無理だけはしない下さい。」
そう囁きながら、中嶋の頬へキスを一つ落とすと、そっと学生会室を出て行った。






〜クリスマスのお願い事は何?〜《中嶋×和希》 (2009年12月に載せていた拍手ssです)

クリスマスだからといって2人きりで甘いムードで過ごしたいなんて考える人じゃない。
学生会の引き継ぎは終わっているけれども、前学生会会長がやり残した山の様な書類が残っているので今までと変わらずに学生会業務をしながら、その合間に受験勉強をしている。
もっとも、彼の実力ならそんなに躍起になって勉強しなくても第一希望の大学に合格出来ると思っているが、念には念を入れるのに越した事はないと思う。
それに、自分自身も忙しい。
特に新入生の選抜も大詰めにきているので、授業に出席するのもままならない状態だった。
そんな中でのクリスマス。
きっと一緒に過ごす事など不可能だと思いつつも、クリスマスは休みが取れるように仕事を調整していた。

「俺も諦めが悪いよな…」
和希はため息を付いていた。
今日は12月24日。
和希が何も言わなかったので中嶋からも特に連絡がなく、一応仕事は休みをもらったのだが和希は理事長室で仕事をしていた。
和希が理事長室に来た時、驚いた顔をした秘書には最初から予定がなくクリスマスなので何となく休もうかと思っていたと言ったら苦笑いをされた。
きっと中嶋さんとの約束がなくなったと思っていたのだろうが、元から約束なんかしていないので仕方ない。
書類から目を離して窓を見ると外には雪が降っていた。
和希は立ち上がり、窓の側まで歩いて行くとそっと窓に手を触れた。
「っ…冷たい…」
そう呟くと手を胸に当てる。
部屋の中は暖房がきいていて暖かい。
でも、和希の心はこの窓みたいに冷たかった。
「こんな気持ちになるなら、一緒にクリスマスを過ごして欲しいって言えば良かったなぁ…」

中嶋から告白されて付き合い始めて数ヶ月。
思った事はなんでも言え…と中嶋は和希に何度も言うけれどもなかなか素直に言う事はできない。
歳上としてのプライドと甘え方を知らないので素直になれない和希。
そんな和希を中嶋は辛抱強く待っていてくれる。
でも…
今回は思い切ってお願いをしてみたら良かった。

「…会いたい…」
「なら、もっと早くにそう言え。」
「えっ…?」
和希は声をした方を振り向いた。
そこには和希が会いたいと願っていた中嶋が立っていた。
「どうして?」
驚いた和希の側に中嶋は来ると、和希の頬を流れていた涙を拭きながら、
「お前がいつ、クリスマスを一緒に過ごしたいというか待っていたのに、まったく言ってこないからこちらから来たまでだ。」
「だって…」
「だって、何だ?」
「中嶋さんは忙しいでしょ?クリスマスに一緒にいたいだなんて俺の我が侭だから言えなかった。」
「まったく…」

中嶋は和希を抱き締めながら、耳元で囁いた。
「いつも言っているだろう?言いたい事は言えと。もっと俺に甘えろ。」
「…」
再度零れる涙は中嶋の服に吸い取られていく。
「…甘え方なんて…知らない…」
そう呟く和希に、
「知らなかったら覚えろ。和希だったらそのくらいできるだろう?」
「どうすればいいの?」
「思った事を言えばいいんだ。」
「それって、ただの我が侭じゃないの?」
「和希が俺に言うのは我が侭じゃない。甘えている事になるんだ。」
「…言ってもいいの…?」
「ああ。」
「思った事を何でも?」
「そうだ。」
「中嶋さんは呆れない?」
「呆れないさ。だから思った事を言え。言われない方がずっと辛いからな。」
「…ありがとう…」

和希は嬉しそうに中嶋に微笑んだ。
そんな和希に中嶋は、
「なら、どうして欲しいんだ?」
「一緒にクリスマスを俺と過ごして欲しい。」
「ああ。その願いなら今すぐに叶えてやる。さあ、寮に戻るぞ。」
「あっ…でも仕事が…」
「お前の秘書にはもう連絡済みだ。このまま連れて帰ると言ってある。」
クスッと和希は笑うと、
「さすがですね。中嶋さん。じゃ、一緒に寮まで帰ってくれますか?」
「ああ。」
中嶋は和希の腕を自分の腕に絡ませると、理事長室を後にした。