過去拍手ss 2010/7〜2010/12

〜我慢しないで偶には素直に〜《丹羽×和希》(登場人物は和希と啓太と石塚さんです。)(2010年7月に載せていた拍手ssです)

「ねっ!この通り!お願い!和希!!」
自分の顔の前で両手を合わせて和希にお願い事をしている啓太。
その姿はとても可愛い。
やっぱり俺の啓太(あくまでもカズ兄として)は可愛いと思いながら和希は啓太を見ていた。
大好きな啓太のお願い事は何だって聞いてあげたい。
啓太には中嶋さんという恋人がいるのは知っている。
でも俺は、たとえ中嶋さんに睨まれたって恨まれたって啓太のお願い事なら叶えてあげたいと思っている。
まあ、今回のお願い事は恨まれはしないだろうけれども…
どちらかといえば、感謝されるだろう。
だが、今の和希は本来の理事長の仕事が忙しくて啓太のお願い事を聞く余裕はない。
忙しくて授業にも出られない状態なのだ。

和希はため息を付いて言った。
「啓太。俺は啓太の頼みだったら何でも聞いてあげたい。けどな…それは無理だ。」
「…どうしても?…」
潤んだ瞳で見つめられて決心が緩みそうになる和希。
けれども、今の和希は“遠藤和希”ではなく“鈴菱和希”なのだ。
仕事に対して責任がある。
「それって、メールじゃまずいのか?」
「うん。」
「なら、電話だったらいいだろう?声を直接聞く事ができるんだから。」
「駄目だよ。ちょっとでいいんだ。王様に直接会って欲しいんだ。」
「そりゃ、俺だって王様には会いたいけど、今は無理だ。それに仕事が忙しい時は会えないって王様だって分かってるいるはずだ。メールか電話で十分だろう?」
啓太は首をブンブンと横に振りながら、
「王様は和希が忙しいって分かってるから『会いたい』なんて一言も言ってないよ。でも…分かるんだ。王様、和希に会いたくてたまらないんだ。そんな風に堪えている王様が不憫なんだよ。お願い、和希。少しでいいんだ。王様に会ってくれない?」

啓太がそこまで言った時、そのやり取りと黙って聞いていた石塚が声を掛けた。
「和希様、僅かな間でしたら我々で仕事をこなしますので丹羽君に会っていらしたらどうですか?」
「石塚?」
「伊藤君がここまで粘るなんてよっぽどの事だと思います。1時間くらいでしたら大丈夫ですから学園の方にいらして下さい。」
「しかし…」
「遠慮はなさらないで下さい。大丈夫ですから。」
和希は少しだけ考えた後、
「悪いな、石塚。1時間もしないで帰ってくるからその間は頼む。」
「はい。ごゆっくりと言えないのは申し訳ないのですが…和希様も丹羽君に会って元気を貰ってきて下さいね。」
「えっ?」
不思議そうな顔をする和希に石塚は微笑みながら、
「和希様も丹羽君と同じでしょう?」
「どういう意味だ、石塚?」
「分からないなら結構です。それよりも時間がなくなってしまいますよ。早く制服に着替えた方がよろしいかと思いますが。」
石塚の言葉で和希は慌ててスーツから制服に着替えると、啓太と一緒に理事長室を出て行った。

理事長の机の上にいる青いクマのぬいぐるみの頭を撫でながら、石塚は先程の会話を思い出してクスッと笑った。
先程理事長室に入って来た啓太が最初に言ったのは…
『王様が和希不足で仕事がはかどらないって言うんだ。和希の事抱き締めたら元気が出るんだけどなぁ…てため息混じりに何度も呟いてるんだよ。だから、ちょっとでいいんだ。和希の顔を見て、和希に触れたらきっと王様は元気になって仕事をしてくれると思うんだ。だから、お願い、和希。忙しいのは分かっているんだけど、学生会の仕事がはかどるように協力して!』
それを思い出しながら、
「丹羽君も和希様も似たもの同士なんですね。和希様は大人なので口には出しませんでしたが、時々ため息を付きながら学園の方を切なそうに眺めていたのですから。伊藤君が来られなかったら、私から丹羽君に会いに行くように言っていましたよ。丹羽君から元気を貰って早くいつもの和希様に戻って欲しいですね。君も和希様の笑顔を見たいでしょう?」
石塚はクマのぬいぐるみにそう話かけていた。





〜放課後のひととき〜《学生会(丹羽+中嶋)×和希》    (2010年8月に載せていた拍手ssです)
「やっと見つけた!」
和希は芝生の上で昼間をしている丹羽を見つけてホッとしながら言った。
和希の声が聞こえた丹羽は閉じていた瞳を開きながら、
「和希?本物か?」
「本物ですよ。寝ぼけてるんですか、王様?」
クスクスと笑いながら答える和希の腕を丹羽は引っ張った。
中腰で丹羽を見ていた和希はバランスを崩し、丹羽の身体に抱き付く形になった。
「な…何するんですか!」
真っ赤な顔で怒る和希だが、その表情すら丹羽には可愛らしくしか映らなかった。
「何って…一緒に昼間をしないかって誘ってるんだ。」
「今ですか?こんなに暑いのに?」

後数日で夏休みをむかえる最近の気温は、連日30度を越す暑さである。
いくら今が放課後とはいえ、まだかなり暑い。
現に丹羽を探していた和希は汗をかいていた。
なのに、丹羽は汗をかいていない。
日陰で風も心地よくふいているので汗をかくほどの暑さではないのだろう。
でも…
よくわからないが、面白くない気分に和希はなった。
自分は丹羽を探して汗だくになっているのに…

「さぁ、中嶋さんが待ってますから、学生会室に帰りましょう。」
「せっかくヒデがいないんだぜ。もう少しこうやってゆっくりしようぜ。」
「ほぅ。ちっとも帰ってこないと思ったら、こんなところで丹羽といちゃついていたとはな。」
「げっ!ヒデ!」
「なっ…中嶋さん…」
突然中嶋が現れて焦る和希と丹羽を中嶋は冷ややかな目で見つめる。
「和希。ミイラ取りがミイラになってどうする。」
「うっ…ごめんなさい…」
「丹羽、夏の合宿の追加申請の書類を片付けろと言った筈だが、それをしないで何をしている。」
「え〜と…その…」

中嶋は一通り言うと、再び和希の方を振り向き、
「和希。さっき学生会室で俺の事を拒んだのに、丹羽には許すのか?」
「えっ?」
「俺よりも丹羽の方を選ぶのか?」
ため息を付く中嶋を見て和希は慌てて首を横に振ると、
「そんな事ありません。」
「だが、この状態は何なのだ?」
「それは…」
言い訳など出来やしない。
和希は芝生に寝転がっている丹羽に抱きしめられているのだから。

「えっとですね、これは、不可抗力です。」
「不可抗力?」
「はい。俺が転びそうになったんで王様が支えてくれたんです。そうですよね、王様。」
「ああ?」
いきなり話を振られて驚く丹羽だったがすぐに和希の話にあわせた。
「そうなんだよ、ヒデ。和希っておっちょこちょいだからな。」
「そうか。まぁ、いい。そういう事にしておこう。」
疑ってはいるが、話をあわせてくれた中嶋にホッとした和希だった。

「だが、丹羽を連れ戻さずに、丹羽に抱きついていたお仕置きはしなくてはな。」
「えっ…」
和希の背中を嫌な汗が流れる。
中嶋は和希を横抱きにすると、学生会室に向かって歩き出した。
「やっ…中嶋さん。恥ずかしいので放して下さい。」
「駄目だ。お仕置きと言っただろう。学生会室までこのままだ。」
「そんな…王様、助けて下さい。」
「悪いな、和希。そりゃ無理だ。」
「どうしてですか!」
「だって、さっきまで俺が和希を抱きしめていただろう?ヒデにもいい思いをさせないと後が怖いからな。」
「…王様…」

丹羽の言葉を聞いて中嶋は嬉しそうに笑うと、
「フッ…諦めろ。俺達2人に愛されたのだからその覚悟はできているのだろう。」
「そうそう、急いで仕事を片付けるから待ってろよ。俺とヒデで可愛がってやるからな。」
「遠慮します。俺、これから仕事があるんです!」
本気を出した丹羽が1時間ちょっとで仕事を片付けたので、その後学生会室で丹羽と中嶋に美味しく頂かれてしまった和希でした。






〜手放さないから覚悟してね〜《成瀬×和希》    (2010年9月に載せていた拍手ssです)
「ねえ、和希。もしも僕と君が『ロミオとジュリエット』のような関係だったらどうする?」
「はい?貴方は何を考えているんですか?」
「何をって…」
「また変な事を考えているんじゃないんでしょうね。」
疑わしそうな目で成瀬を見つめる和希に、
「酷いなぁ、和希は。僕は単にもしも僕らの関係が『ロミオとジュリエット』のようだったらどうしようと思っていただけなのに。愛し合っているのに家の事情で結婚できないだなんて悲しいと思わない?」
「別に、特には思いませんが。」
「え〜、そうなの?」
「仕方がないと諦めるか、全てを捨てて相手を選ぶか…彼らにはその2つの選択がありますからいいんじゃないんですか。」
「それはそうだけどさぁ。でもね、和希。せっかく愛し合ったなら皆にも祝福されたいと思わない?」
「…」

少しだけ切なそうな顔をして黙り込んでしまった和希を成瀬は心配そうな顔で見つめた。
「和希?大丈夫?」
「えっ?何がですか?」
「だって、凄く寂しそうな顔をしている。どうしたの?」
和希は驚いた顔をした後、ニコッと笑うと、
「まったく、貴方って人は…」
「うん?何?」
「いいえ、何でもありません。で…成瀬さんだったら間違いなく後者の方でしょうね。」
「後者?」
不思議そうな顔をする成瀬に、
「『ロミオとジュリエット』の話ですよ。全てを捨てて相手を選ぶと思うんですけど、違うんですか?」
「僕は全てを捨てはしない。全てを手に入れるよ。」
「成瀬さん?」
「だって諦めるのも相手を選ぶ為に全てを捨てるのも嫌だ。どうすれば2人にとって幸せになるか考える。その為の努力は惜しまない。」
「成瀬さん…」

成瀬は和希をそっと抱きしめながら囁いた。
「だから…そんな顔をしないで。和希にはいつも笑っていてもらいたいからね。」
「俺は貴方がいるからいつでも笑っているでしょう?」
「うん。それは知っている。だけどね、和希。僕は知ってるんだよ。和希が僕の手を取った事で苦しんでいる事も…」
「えっ?」
驚いて顔を上げた和希に成瀬は微笑みながら、
「鈴菱の後継者である和希が一介の男子高校生に恋をしたんだよ。普通なら許されない関係だよね。」
「成瀬さん…」
「きっと和希の中では凄い葛藤があったと思う。けれども和希は僕を選んでくれた。ばれたら全てを捨ててもいいという覚悟でね。」
「どうしてそれを…」

成瀬はフッと笑うと、
「僕を誰だと思っているの?和希の考えている事なら何でも分かるよ。和希は僕の為に全てを捨てる覚悟をしてくれた。だから、僕は和希が全てを捨てないで済む努力しようと思っているんだ。」
その言葉を聞いて和希は成瀬をギュッと抱きしめると、
「本当、貴方って馬鹿ですね。」
「馬鹿?酷いなぁ。」
「馬鹿を馬鹿って言って何が悪いんですか?」
そう言った後、成瀬の顔をジッと見ながら、
「俺を誰だと思っているんですか。成瀬さんを手放す真似などけしてしません。そして今の地位もね。本当は貴方を選ぶ為なら全てを捨ててもいいと思って付き合ったんですが、貴方の性格が移ったみたいなんです。」
「僕の性格?」
「はい。欲張りな成瀬さんの性格がね。だから俺は貴方も鈴菱も両方共手に入れます。」
「和希。」
「だから、覚悟して下さいね。俺を本気にさせた責任はしっかりと取ってもらいますから。」
成瀬は破顔しながら、
「もちろん、大丈夫だよ。和希こそ覚悟してよ。僕を本気にさせた責任を取ってもらうからね。」
「はい。愛してます、由紀彦。」
嬉しそうに微笑む和希に成瀬は極上のキスを落としたのでした。





〜愛しい存在はこの腕の中〜《河本×和希》    (2010年10月に載せていた拍手ssです) 
ふと目を覚ますと、腕の中には愛しい人が寝ていた。
その愛しい人を起こさないようにそっと時計を取って時間を確認すると、4時ちょっと過ぎだった。
起きるにはまだ早いが、何故だか目が冴えてしまっていた。
どうしようかと暫く天井を見ていたが、その内暗闇にも目が慣れてきたのでもう1度腕の中で寝ている愛しい人…和希を見つめた。

気持ちよさそうに寝ている和希。
その顔は実年齢よりも幼く見えた。
鈴菱グループの後継者である和希。
今はBL学園の理事長と研究所の所長、そして遠藤和希と名前を偽ってBL学園の生徒をしている。
ただでさえ仕事が忙しいのに、学生として生活を送っている為、自由になる時間など殆どない。
睡眠もまともに取れていない状態だ。
それなのに、どんなに忙しくても大変でも自分の所に来てくれる。

以前、無理をしてまで会いに来る必要はないと言った事があった。
その時、『好きだから会いたかった。貴方の側にいるとどんな疲れも飛んでいく。でも、貴方にとって俺がこうしてここに来るのは迷惑ですか?』
泣きそうな顔で言われた時、自分の言葉が和希を傷つけたと気が付き後悔した。
自分はただ、和希に休んでもらいたかっただけだったのだ。
だが、自分の言葉は和希を不安にさせただけだった。
好きだから会いたい…
単純な事だった。
それは自分も同じだった。

規則正しく息をしている和希の唇に自分のそれを一瞬だけ重ねた。
すると白雪姫のように和希の目がゆっくりと開く。
「…義孝さんだ…」
にっこりと微笑みながら和希は河本にキスをすると、
「孝義さん、大好き!」
そう言って顔を河本の胸に埋めた。
突然の出来事に唖然としていた河本だったが、気が付くとスースーと気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。
「和希?」
河本が和希の名前を呼んだが、眠ってしまった和希は当然答える筈がなかった。

恥ずかしがりやで、『好き』と言う言葉もあの最中にしか言わない和希。
だが、『好き』は聞いた事はあったが『大好き』は初めてだった。
たとえ、寝ぼけていたとはいえ河本にとってはとても嬉しい言葉だった。
「私も大好きだよ、和希。」
和希の額にキスを落としながらそう呟くと、再び和希を抱きしめて河本も眠るのであった。





〜後少しだけ〜《中嶋×和希》    (2010年11月に載せていた拍手ssです)
学生会室のドアをノックしながら、
「遠藤です。手伝いに来ました。」
後数回しか言えないこの言葉を口にした。
季節は冬。
学生会も新役員と交代の時期に入り、今は引き継ぎなどで新旧学生会役員が入り交じっているがもうじき旧役員…中嶋・丹羽…はこの学生会室からいなくなる。
だだし、丹羽が今までやっていない書類は山の様に残っているので今後は会議室に場所を移して書類制作をしなくてはならない。
会議室に移ったら今度はそちらの部屋をノックして『遠藤です。手伝いに来ました。』と言っているとは思うけれども…
そんな事を考えながらドアを開けるとまだ中には中嶋しかいなかった。
「和希。今日はあっちの仕事はいいのか?」
「はい。と言っても1時間程しかこちらにはいられないんですけど。」
「そうか。忙しいのなら無理する事はないんだぞ。」
「無理なんてしていません。俺が英明と一緒にいたいからここに来たんで…」

そう言った途端、しまったという顔をして黙り込んでしまった。
急いで背けた顔は真っ赤になっていた。
中嶋はそんな和希を見て嬉しそうに微笑む。
付き合い始めた頃はなかなか本音を見せなかった和希。
それは年上という事を気にしてか、それとも感情を表す事を知らなかっただけなのか…
そんな和希が少しづつだが、自分の感情を表してくれるようになった。
中嶋は恥ずかしそうにしている和希に近づくとその唇に自分のそれを落とす。
触れるだけのそれに驚いた和希の反応に中嶋はニヤリと笑うと和希の顎を掴み、再度唇と落とす。
今度は触れるだけのキスではなく、十分味わうキス。
そのぬくもりはドアのノックの音と共になくなってしまった。

「あれ?和希ってばもう来てたの?」
「あ…ああ…」
「何だ。学生会室に来るなら言ってくれれば良かったのに。俺だって来るんだからな。」
「ごめん。藤田達と話し込んでいたから邪魔をしたら悪いかなぁって思って先に来たんだ。」
「そうなんだ。でも、話かけてよかったんだぞ。藤田達だって邪魔だなんて思ってないからな。」
「そうだな。今度から声を掛けるから一緒に来ような、新学生会役員。」
「なんだよ。それを言うなら和希だって新学生会役員だろう。」
騒がしくなっ2人の会話に中嶋が口を挟む。
「和希、伊藤。口を動かす暇があるのなら手を動かしてもらおうか。」
「はい。」
「何をすればいいですか?」
後少しだけこうしていられる時間。
そんな時間を大切にしていきたい…
和希はそう思いながら中嶋から書類を受け取っていた。 





〜僕の色に染まって欲しいから〜《成瀬×和希》    (2010年12月に載せていた拍手ssです)
空からふわふわと舞い降りてきた雪を成瀬は手で受け止めながら、和希の事を思い出していた。
真っ白な雪は和希の心のようだ。
真っ白だけれども、和希の白色はほんの少しだけ成瀬の色に染まってきている。
成瀬と付き合うようになって和希の色が変わったからだ。
かつて和希にこの色の話をした事があった。

「白?俺のイメージが?」
「うん。和希の心は真っ白だと思うんだ。」
そう言った成瀬に和希は苦笑いする。
「買いかぶりですよ、成瀬さん。俺はそんな綺麗な人間じゃない。」
「謙遜しなくてもいいんだよ?」
「謙遜じゃありません。俺は鈴菱の利益の為ならどんな汚い事だってして生きてきました。俺のせいで人生を狂わされた人は1人や2人じゃない。今だって俺の事を恨んでいる人がいるはずです。こんな俺が綺麗なわけないでしょう。」
自嘲気味に言う和希を成瀬はギュッと抱き締めた。
驚く和希に、
「そんな事ないよ。それは仕事だからやっているんだろ。だから、関係ないよ。」
「貴方に何が分かるって言うんですか?まだ学生の貴方に…」
「うん。和希の言う通りに僕はまだ学生だから、社会人の本当の大変さや辛さは知らない。でも、これだけは分かる。本当に非道な人間は自分のした事を後悔なんてしないし、相手を思って苦しまない。」
「何が言いたいんですか?」
「和希が苦しんでる事を僕は知っているよ。きっと今の僕では何の役にもたたないけど、こうして君の傍にいる事はできる。」
「まったく、貴方って人は…」
クスッと笑った和希を見て成瀬は安心する。
「やっぱり、和希の心は真っ白だよ。」
「また、その話ですか?今の俺の話を聞いてましたか?」
「もちろん!」
「なら、どうして?」
「何度でも言うけど、和希は真っ白だよ。守るものがあるからどんな事も出来る。自分の志を貫く事が出来る。それは誰にも染められない色だ。」
「成瀬さん…」
「そんな純白な君を僕の色に染めたいと思っているんだ。今はまだ無理だけど、いつかきっと僕の色に染めてあげるから楽しみに待っていてね。」
成瀬の言葉を聞いた和希は綺麗に微笑みながら、かすめるだけのキスをする。
「本当に貴方は馬鹿ですね。俺はもうとっくに貴方の色に染まっています。」
「和希…」
「違いますか?」
不安そうに聞く和希に今度は成瀬からキスを落とす。
それは触れるだけのキスから深いキスに変わっていく。
キスの合間に呟かれる言葉は愛してる…

そんな過去の出来事を思いながら成瀬はベランダから部屋に戻り、ベッドに腰掛けた。
出張中の和希は今はここにいない。
成瀬はそっと布団を撫でながら囁いた。
「早く帰ってきてね、和希。僕色に染まった君を見たいから。」   

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