Stage

「なんや、このキャスティングは?」
「見て分かりませんか?滝君。3年生を送る会でやる劇のキャスティングが書いてあるのですが。」
「そりゃ、見れば分かる。何で俺がシンデレラをやらんとあかんのや。」
「仕方ありませんね。投票で決まったんですから。」
「そうそう。もう諦めなよ、俊介。」
憤慨する俊介に冷静に答える七条に成瀬。

今日は先日決まった3年生を送る会でやる劇のキャスティングが発表されていた。
劇は『シンデレラ』
キャストは1、2年から投票により選ばれる事になった。
ただし、普通の投票では面白くないので一工夫されている。
投票できるのは3年生のみ。
1人1票劇に出てもらいたい人の名を書く。
投票数が多い人にやってもらう。
ただし、投票数が多いからといって主役のシンデレラをやる訳ではない。
実行委員の方で投票数の多い順にやる役を決めていた。

このルールの元、劇の役者が決まる。
ある意味とても怖い決め方だったが、そこはお祭りとして片付けてしまえば構わない事。
投票する3年生も面白半分で投票していた。
そして決まったキャスティングがこれだった。
シンデレラ…滝俊介
王子様………遠藤和希
魔法使い……伊藤啓太
義母…………西園寺郁
姉その1……七条臣
姉その2……成瀬由紀彦
以下省略(ごめんなさい。他には王様役とかお付きの役とか色々あります)

俊介が嘆いている所に和希と啓太が来た。
「あ〜あ、やっぱり俺選ばれちゃったか。」
「仕方ないだろう。啓太は学園MVPなんだから。」
「そういう和希だって選ばれてるじゃないか。」
「えっ?俺も?」
驚く和希に啓太は言う。
「いいなあ。和希は王子様で。俺なんて魔法使いだよ。」
「魔法使いだって可愛いじゃないか。啓太の魔法使い、似合うと思うけどな。」
「可愛いって…俺男だぞ。」
「だって可愛いじゃないか。中嶋さん、啓太の事惚れ直してくれるかもしれないぞ。」
「それを言うなら和希だって同じだろう?王様、和希が王子様役だって聞いたら喜ぶんじゃないかな。」

楽しそうに会話をする和希と啓太に俊介は話し掛ける。
「啓太、遠藤。お前ら、何楽しそうに会話しとるんや。」
「えっ?劇のキャスティングについてだけど。」
「何でそんなに落ち着いとるんや。」
「だって…仕方ないじゃないか。投票で決まったんだから。」
「そりゃな、啓太は魔法使いで、遠藤は王子役だから構わへんだろうけど、俺なんかシンデレラやで。」
「俊介のシンデレラって似合いそうだな。なあ和希もそう思うだろう。」
「ああ。頭にリボンなんか付けたら可愛いだろうな。」
「アホか。シンデレラは頭にリボンなんかつけとらん。」
怒る俊介に和希はすぐに謝った。
「ごめん、俊介。」
「いや…俺も怒鳴って悪かった。」

「でも、頭にリボンを付けた滝君は可愛らしいんでしょうね。いっそうの事そうしましょうか。」
ニコッと笑って言う七条に成瀬が同意した。
「ああ。それはいいかも。さすが七条だね。目の付け所が違うよ。」
「いいえ。最初に気付いたのは遠藤君ですから。」
「折角だからドレスとお揃いの色のリボンがいいよね。」
「由紀彦、何楽しそうに考えてるんや。」
「何って、俊介の衣装についてだよ。」
「だから!!なんで頭にリボンなんや。」
「そりゃ、似合うからだろう?」
当たり前のように言われ、ガックリと肩の力を落とす俊介。
しかし、そんな俊介に関係なく俊介の衣装は七条と成瀬によって決まっていくのであった。

「ねえ、和希。仕事大丈夫?」
「うん。多分平気だと思う。それに王子様役だったらそんなに出番はないだろう。きっと何とかなるよ。」
「そっか。良かった。俺、和希と一緒に劇に出られて嬉しいよ。」
「俺もだよ、啓太。お互いに頑張ろうな。」
「うん。」
嬉しそうに会話をする啓太と和希。

後日…
和希が王子様役で俊介がシンデレラ役だと聞いた丹羽が俊介に和希にあまり触るなだとか、見つめ合うなだとか色々と注文を付けた事を和希は知る事になる。
その事を知った和希は劇の妨害になるから余計な事を俊介に言わないで欲しいと丹羽に注意をした。
が、それを丹羽が素直に聞く筈もなかった。
散々揉めた後、和希はついにキレてしまう。
そして…
頬を真っ赤に張らした丹羽が和希に必死に謝る姿が学園のあちらこちらで見られるようになる。




サイト1周年記念に書きました。
と言ってもすでに11ヶ月経っているので、あんまり意味がないかも知れません。
でも!!
ブログでいつか書きますって言ったので約束通り書かせてもらいました。
この話は4月24日にブログに載せた【新境地発掘バトン】から思いつきました。
バトンではシンデレラが俊介、姉Aが成瀬さん、姉Bが七条さん、義母が王様、魔法使いが啓太、王子が海野先生でした。
話の都合上義母役と王子役を変更してしまいました。
当日、どんな劇になるか想像しただけでも楽しくなりそうです。
          サイト1周年 2008/6/20  サイト1周年記念小説UP日 2009/5/18