Star Festival
夜の10時。
ここ丹羽の部屋のベランダで丹羽は和希と星空を見ていた。
「今夜はよく星が見えますね、王様。」
「そうだな。」
「今日は七夕だから晴れて良かったですね。雨が降ったら織り姫と彦星が会えないですからね。」
「遠藤って結構ロマンチストなんだな。」
「いけませんか?」
「いや、可愛いなって思ってさ。」
「なっ…その可愛いって言うの止めて下さいっていつも言ってるじゃないですか。」
「良いじゃないか。本当に可愛いんだから。」
「もう…」
和希は少し頬を膨らませると夜空を見上げた。
「王様、あそこに3つ明るい星がありますよね。あれを繋ぐと三角形になるので“夏の大三角形”って言うんです。」
「あの明るい星か?」
「ええ。あれがわし座のアルタイルで、あっちがこと座のベガ、そしてこれがはくちょう座のデネブです。彦星がアルタイルで、織り姫がベガなんです。ほら、二つの星の間にうっすらと細い川のようなものがあるでしょう。あれが天の川です。後、夏の星座で有名なのがさそり座なんですけど、この時間じゃ見えないかな?真南の高度の低い所に今はあるはずですから。」
指を指しながら星座の説明をしている和希は星空よりも綺麗だと丹羽は思った。
「遠藤は詳しいな。星が好きなのか?」
「う〜ん、どうだろう。知識として覚えた物だからな。」
好きとか嫌いとか考えた事はなかった。それが“鈴菱和希”として必要ならば何でも覚えてきた。星座の知識もそうだった。
「昔、幼い啓太に会った時も今夜みたいに二人で星空を見上げた事があったんです。星座なんて難しいのに啓太一生懸命俺の話を聞いてくれて…クスッ、本当可愛かったな啓太。」
懐かしむように、そして嬉しそうに話す和希。
「でも…」
そう言って和希は丹羽の方を向き、ふわりと微笑むと
「俺、王様と一緒に見上げる星空が一番好きです。」
顔を赤く染めながら和希は照れくさそうに言った。
「遠藤。」
丹羽はそっと和希の唇に自分の唇を重ね、すぐに離した。
何が起こったのか分からず、キョトンとした和希だったがすぐに気がつくとポロッと涙を流した。
「え…遠藤、ごめんな。そんなに嫌だったかのか?悪かった。」
「えっ…違います王様。俺、嬉しくて…」
「本当か?」
「はい、王様…」
止まらない涙を丹羽は手で拭いながら、
「もう一回いいか?」
触れるだけのキスをする。
一年に一度逢う織り姫と彦星に見守られながらのファーストキスでした。
七夕です。付き合ってもうすぐ2ヶ月になろうとしている丹羽と和希です。
でも、今時ファーストキスに、2ヶ月もかかるなんて…奥手な二人です。