Sweet

「和希、今日忙しい?」
「いや、大丈夫だけど。啓太何かあるのか?」
「うん。」
「仕方ないなぁ。また学生会の手伝いか?」
呆れ顔で言う和希に啓太は、
「違うよ、和希。今日は街にお菓子を買いに行きたいんだ。」
「お菓子?」
「うん。」
「それって橋向こうのコンビニじゃ駄目なのか?」
「駄目だよ。だってハロウィンのお菓子を買うんだから。」
「ハロウィン?」
和希は頭を傾げながら啓太に尋ねた。
「啓太。ハロウィンって、あの『トリック・オア・トリート』って言うあのハロウィンか?」
「そうだよ。さすが和希。アメリカに行ってただけはあるよね。ちゃんと知ってるんだ。」
感心して言う啓太に和希は苦笑いをする。
「そりゃ、一応はね。でも、日本じゃそんなに盛んじゃないだろう?」
「最近はそうでもないよ。それにそういうイベント時って友達同士でお菓子の交換をするんだ。だから俺も何か買って用意しとこうと思ってさ。そうだ!和希も一緒に買い物しようよ。」
「俺?いや、俺は別にいいよ。」
「ノリが悪いぞ、和希。こういうのはお遊びなんだから一緒にやろうよ。俺がどういうのがいいか教えてあげるからさ。」
「そうか?うん。啓太がそう言うなら俺もやってみるよ。啓太、色々と教えてくれよ。」
「もちろん!」
そう言って笑い会う和希と啓太だった。


そして10月31日、ハロウィン当日。
啓太のアドバイスのお蔭で和希はクラスメートと上手くお菓子の交換ができて楽しいひと時を過ごしていた。
「和希、楽しかった?」
「啓太。啓太のお蔭でもの凄く楽しかったよ。」
「そうか。良かった。」
「ああ。ありがとうな、啓太。」
「どういたしまして。それよりもそろそろ学生会室に行って王様にお菓子を渡してきたら?王様、きっと喜ぶと思うよ。」
「うん。じゃあ、俺行ってくるな。」
「いってらっしゃい。」
嬉しそうに学生会室に向う和希を見て啓太も嬉しそうに微笑んだ。
「あ〜あ。あんなに頬を染めちゃって。和希ってば本当に王様の事が大好きなんだね。さてと…俺も英明さんにお菓子を届けに行ってこようと。」
啓太はそう言うと3年生の教室に向って行った。


学生会室の前に来た和希は少し緊張しながらドアをノックした。
「遠藤です。失礼します。」
そう言って扉を開けた和希は中に丹羽がいるか確認する。
珍しく学生会室にいた丹羽は和希に気付くと、嬉しそうに笑った。
「おう、和希。よく来たな。今日は1人なのか?」
「はい。でも、後から啓太も来ますけど。」
そう言いながら、和希は丹羽の側に行くと、
「トリック・オア・トリート!」
と言った。
丹羽は驚いたまま、何も言わない。
クラスメートとは違う反応に和希は戸惑ってしまう。
「あの…王様?」
「あ…ああ。悪い、和希。まさか和希が『トリック・オア・トリート!』なんて言うとは思わなくってさ。」
「俺が言うと変ですか?」
不安そうに言う和希の頭を丹羽は撫でながら、
「別に変じゃないさ。ただ、和希がこういう高校生らしい事を知っているのが珍しいと思ったんだ。悪かったな。変な事を言ってさ。」
「ううん。実は俺も知らなかったんです。啓太が教えてくれたんですよ。」
「そうか、啓太が。和希、いい友達を持って幸せだな。」
「はい。」
和希は嬉しそうに笑った後、もう1度言った。
「王様、トリック・オア・トリート!」
「ほら。」
丹羽は会長席の引き出しの中からお菓子を取り出して和希に差し出した。
「ありがとうございます。」
和希はそう言ってお菓子を受け取ろうとしたが、その手を引っ張られキスをされる。
驚いて見開いた目は暫くするとその甘いキスの為にそっと閉じられる。
今日食べたどんなお菓子よりも甘く優しいそのキスに和希は酔いしれた。




少し早いですが、ハロウィンの話にしました。
女の子ってこういうイベント時に仲の良い子とお菓子の交換をしますよね。
その事を思い出して書いてみました。
王様から和希へのお菓子は甘いキスでした。
書いてて私の方が恥ずかしかったです(笑)
             2008年10月20日