INDEX

風邪とタバコ

「ゴポッ」
「ほら、咳が出てるんですからタバコはやめた方がいいんじゃないんですか?」
「大丈夫だ。」
「もう…」
和希は呆れ顔で中嶋を見た。
中嶋は数日前から風邪を引いていた。
38度の熱は2日で引いたが、熱が引くと同時に咳が出はじめた。
熱があっても授業も学生会の仕事も出ていたので、和希は心配していたのだった。
だが、中嶋本人はいたって普通に過ごしていた。
そう…
普通に過ごしていたのだ。
だから当然タバコも吸う。
咳が出ていても平気で吸っているのだ。
「ゴホッ」
もう1度咳込む中嶋を見て、我慢の限界とばかりに和希は中嶋の手からタバコを取り上げた。
とたんに不機嫌な顔になる中嶋。
「どういうつもりだ、和希。」
「どういうつもりって、英明にタバコをやめてもらいたくて取り上げました。」
「ほう、随分といい性格をしているじゃないか。」
「英明と付き合うようになって俺も強くなりましたからね。」
いつもと違い、強気の態度の和希。
中嶋は面白そうに笑うと、
「お前も吸いたいなら、そう言え。」
そう言って、タバコを1本和希の目の前に差し出す。
ムッとした顔をして、
「俺はタバコが欲しくて取り上げたんじゃありません。英明にやめてもらいたくて取ったんです。」
「なぜやめる必要がある。」
「タバコを吸うのをもうやめろって言ってるんじゃないんです。咳が出ている間だけでもやめて欲しいって頼んでいるんです。」
「大した咳でもないのに、やめる必要はないだろう。」
そう言いながらも咳をする中嶋に、
「ほら、言ってる先から咳をしている。お願いですから、咳が収まるまでタバコをやめてもらえませんか?」
「無理だ。」
「…」

これは諦めた方が早いのだろうか?
いや、いくら風邪薬を飲んでいるって言っても、早く治す為にはタバコをやめた方がいいに決まっている。
悩んだ和希は1番使いたくない手でいく事にした。
「ねえ、英明。」
「何だ。そんな声を出しても俺はやめないぞ。」
「英明は風邪が治るまでって言って俺に触れないでしょう?俺、本当はそれが寂しいんです。」
瞳を潤ませながら、
「早く英明に治してもらってまた、いつものように抱いてもらいたいんだ。だから、お願い。早く治す為にも数日だけタバコを我慢して。ねっ。」
「…」
黙って和希を見つめる中嶋を見て、和希はこれでやめてくれると内心ガッツポーズを取った。
が、それが甘いとすぐに気づく事になる。
「ほぉ…俺に構ってもらえなくて、そんなに寂しいのか。」
「えっ?」
「和希に風邪を移すといけないと思って我慢していたのだが、それで欲求不満になるとは気づかなかった。」
「よ…欲求不満って…」
「そうか。そんなに身体が疼いて困っていたのか。それは気づかなくて悪かったな。」
中嶋は嬉しそうに和希の傍に寄った。
展開の速さについていけない和希は唖然として中嶋を見ていた。
「俺としては治るまでスル気はない。だが、浮気をされるのも困るからな。治るまでこれで我慢しろ。」
中嶋がポケットから取り出したものを見て、和希の顔色が変わる。
「ひ…ひで…あき…?」
「俺に比べれば小さいが、少しは身体の疼きも収まるだろう。」
「け…結構です…俺…」
「遠慮はするな。」
「遠慮なんてしてません。っていうかどうしてそんな物がポケットに入っているんですか!」
「細かい事は気にするな。」
「気にしますって…やっ…」
和希が中嶋にかなうわけもなく、余計な事を言ってしまった為にとんでもないお仕置きをされてしまう和希でした。

中嶋さんお誕生日月間、第1作目は風邪を引いた中嶋さんの話でした。
実は私が風邪を引いて咳が酷かった時に思いついた話ですww
中嶋さんなら咳をしていてもタバコをやめないだろうな…と思っています。
さて、中嶋さんがポケットから出したあるもの。
それが何かは皆さまのご想像にお任せします。
えっ?
ヒントですか?
お仕置きに使うものです(笑)
          2011年11月7日

INDEX

Designed by TENKIYA