誕生日プレゼントに欲しいものは何?


始めに
この話は2007年8月にUPした『For You』の2話目と3話目の間の話です。
王様から「誕生日プレゼントにお前が欲しい!!!」と言われ、悩む和希の相談にのる啓太との会話になっています。
最後の方に王様が少しだけ登場しますが、殆どが和希と啓太の会話になっていますので、ご了承下さい。
なお、『For You』を読まなくても大丈夫な話になっています。



「はぁ〜」
「これで10回目。」
「えっ?何の話だ、啓太。」
ボゥ〜としていた和希は慌てて啓太に聞き返した。
「ごめん、啓太。俺、ちょっと考え事をしていて話を聞いていなかった。で、何が10回目なんだ?」
「和希のため息の数。和希ってば、さっきからずっとため息を付いてるだろう?」
「えっ?そうなのか?」 困った顔をした和希に啓太は、
「もしかして疲れてる?」
「いや…それ程じゃない。だって今は夏休みだから、仕事だけに集中できるだろう。」
「そうだよね。なら、何か悩み事?俺でよかったら相談にのるよ。」
「あ〜悩み事って言えば悩み事かもしれないんだけどな…」

和希は言葉を濁しながら言った後、チラッと啓太を見た。
この事を啓太に相談してもいいのだろうか?
でも、もしも話をして呆れられたらどうしよう…
第一いくら親友とは言え、今回の内容はあまりにもプライベートな事だ。
相談してもいい内容だろうか?
それとも、大丈夫だと言って済ます方がいいのだろうか?
黙りこんでしまった和希を啓太は心配そうに見つめながら言った。

「和希、無理に話す必要はないからな。」
「啓太…お前って優しい子に育ったんだな。」
しみじみと言う和希に啓太は苦笑いをする。
「何、それ?いくら和希が俺より年上だからってそんなに年上でもないのに。」
「だってさ。昔会った時も凄く優しい子だったのに、今はもっと優しい子になってるからカズ兄は感動してるんだよ。」
「まったく…」
啓太は笑いながら和希を見つめた。
和希は何かと昔出会った頃の啓太を思い出してはあの頃から啓太はいい子だった、優しい子だったと言う。
啓太にしてみれば、そんな昔の事はあまり覚えてはないし、和希から褒められれば恥ずかしくなってしまう。
でも、そう思いながらも和希の思い出の中に自分がいる事が嬉しく感じている啓太であった。

「で?悩み事は俺には相談できそう?」
「う〜ん…啓太…笑わないか?」
「えっ?人の悩み事に笑うわけないじゃないか?」
「本当に?」
「ああ。」
「なら…」
和希は啓太から視線をずらしながら、
「実はさ…もうすぐ王様の誕生日だろう。この間、王様に誕生日プレゼントに何が欲しいか聞いたんだ。」
「うん。王様は何が欲しいって言ったの?」
「…」
「和希?」
「…俺が…欲しい…って言うんだ…」
「和希が欲しい?」
啓太はちょっと考えた後、
「ちょっと待った!和希が欲しいって何!もしかして和希、まだ王様とシテないの?」
「ちょっ…啓太、声大きい。」
和希は慌てて啓太の口を手で塞いだ。

驚いた顔をしていた啓太だったが、徐々に落ち着きを取り戻すと、
「ごめん、和希。」
「いや…別にいいけど…」
気まずそうな顔をする和希に啓太は慌てて、
「本当にごめん。俺、ちょっと驚いちゃってさ。」
「驚く?」
「うん。だって和希と王様、付き合ってもうそろそろ3ヶ月経つだろう?まさか、まだだとは思ってなくて…本当にごめん。」
頭を下げる啓太に今度は和希が慌てた。
「啓太は悪くないんだから誤る必要はないよ。俺こそ、変な話をしてごめんな。」
「ううん。大丈夫。それで、和希は何を悩んでいるの?」
「だって…」
「だって?」

黙りこんでしまった和希に、
「もしかして怖いの?」
「いや…そりゃ、怖くないって言えば嘘になるけどな。」
「まあ、初めては誰でも怖いよね。俺も怖かったし。」
「啓太も?」
「ああ。だって告白されて付き合うって言ったらその場で押し倒されたからね。」
「…さすが、中嶋さんだな…」
「うん。中嶋さんらしいよね。でもね、その時言ってくれたんだ。『できるだけ優しくする。だから俺のものになってくれ。俺の一生をかけてお前を幸せにする』って。俺、その一言を聞いて全てを中嶋さんに委ねてもいいと思ったんだ。」
「そうか。よかったな。」
「うん。」

とろけそうな顔をして言う啓太。
この顔を見ていれば、啓太がどれほど中嶋さんに大切にされているかが分かる。
普段の2人の様子からも幸せだろうと思っていたけれども、今の啓太の言葉でさらに安心した和希だった。
しかし…
あの中嶋さんが『できるだけ優しくする』と言ったのか…
そして『俺の一生をかけてお前を幸せにする』とまで言わせた啓太ってある意味凄い奴だなと和希は思った。
「ごちそうさま。」
「えっ?あっ…俺、惚気たわけじゃないからな。」
「はいはい。」
一生懸命言い訳する啓太に和希は微笑んで受け答えをしていた。
いつか自分も啓太のように王様との事を話せるようになれたらいいなぁ…と思いながら。

「もう…和希ってばいつまで笑ってるんだよ。」
いつまでも笑い続けている和希に啓太は頬を膨らませてながら言った。
「ごめん。」
目に溜まっている涙を手で拭いながら謝る和希を見て啓太は面白くなさそうに、
「別にいいけどね。俺の事よりも和希の事を話さないと駄目だろう。怖いんじゃないなら何に悩んでいるの?」
「…」
「和希?」
「あのさ…俺って男だろう?」
「はい?今さら何言ってるんだよ。」
「だからさぁ。俺は男だし王様も男なんだよ。」
「そんなの俺だって知ってるよ。和希は男同士って事にこだわりがあるの?」
和希は首を振った。
「いや。好きになったら性別なんて関係ないと思っている。現に海外の知り合いにもそういう人もいるから。それは気にしないんだ。だけど…王様はどうなんだろう。」
「王様?だって王様は和希が好きなんだよ。大丈夫に決まってるじゃないか。」
「でも…王様って同性同士っておそらく初めてだろう?」
「あ…まあ、そうだろうね。」
「聞いたわけじゃないけど、過去に彼女はいただろうし…俺は男だから豊かな胸も細い腰もない。俺の身体を見て、萎えたらどうしようと思うと不安なんだ。」
「王様に限ってそんな事はないと思うんだけどな。」
「そうかな…脱いだ途端思い描いていたのと違うと思われたら…それに、俺は年上だから肌だって10代の王様に比べたら綺麗じゃない。王様に嫌われたらどうしようと思うと俺は怖いんだ。」

真剣に悩む和希を見て啓太は困ってしまった。
どう言えば、和希は安心するのだろうか?
確かに同性同士と言う事も年齢の違いもどうしようもできない事だ。
けれども、それを克服するのは本人同士の問題だから、啓太にはどうしようもできない。
でも、ほんの少しだけなら和希の心を軽くできる。
いつも和希に助けてばかりいるから、今度は自分が和希を助けてあげたい…啓太はそう思っていた。
「以前、王様に襲われそうになったって言ってたよね。」
「ああ。」
「それって、王様が和希を欲しいって思っているからじゃないかな。」
「王様が俺を望んでいるのは知っているんだ。だけど…いくら望んだからって言っても蓋を開けてみたら思っていたのと違うって事だってあるだろう?」
「それはそうかもしれないけど…でも、王様に限ってそれはないんじゃないかな?」
「俺もそう思いたいけど…自信がないんだ…」
瞳を伏せながら言う和希は啓太の目から見ても色っぽいと思った。
さて、どうしよう。
啓太はもう1度考える。
どうすれば和希が安心できるんだろうかと。
でも、いくら考えても何もいい案は浮かんでこなかった。

悩んでいる啓太に気づいた和希は、
「啓太。ありがとう。俺、もう大丈夫だから」
「でも…」
「本当に大丈夫だから。ダメだったら仕方ないと思う事にするよ。この問題はいつまでも先延ばしにしても仕方がない事だし、きちんと確かめてくるよ。」
「和希…」
心配そうな顔をする啓太の頬を和希はそっと撫でると、
「ありがとう。啓太のおかげで勇気がでたよ。あっ、それと今啓太の頬を触ったのは中嶋さんには内緒な。ばれたらお仕置きされそうだからな。」
「中嶋さんはそんな人じゃないよ。」
そう言った後、
「でも、独占欲が少し強いからやっぱり内緒にしておいた方が無難かもね。」
「だろう?」
顔を見合わせて笑う和希と啓太だった。


そして数日後の丹羽の誕生日の夜

「えっと、王様…」
「うん?何だ、和希?」
「あの…電気…消してくれませんか?」
「電気って枕元のライトだけだろう?いいじゃねえか。」
「でも…」
「でも?何だ?」
「…恥ずかしいです…」
顔を真っ赤にしながら答える和希が可愛らしかった。
こんな風に恥らう和希を見る事ができるだなんて自分は幸せだと丹羽は思う。
「和希のお願い事なら、何でも叶えてやりたいんだけどよう。こればかりは無理だな。」
「どうしてですか?」
羞恥で目に薄っすらと涙が溜まっていた。
その涙を丹羽は自分の唇で拭う。
ピクッと震える和希が愛しい。
和希の頬に触れながら、
「だってよう、これ以上暗くしたら和希の姿がはっきりと見えないだろう。」
「…っ…だから見て欲しくないんです…」
「どうしてそういう事を言うんだ。こんな綺麗な身体をしているくせに。」
「綺麗?」
「ああ。こんな綺麗な身体を見た事はない。」
「でも、俺は男だし、それに王様よりも年上だから肌だってそれ程張りがあるわけじゃない。女性みたいに豊かな胸もないし…」

丹羽は和希の唇を自分のそれで塞いだ。
舌を差込み、十分和希を堪能した後丹羽は言った。
「俺にとっては和希がこの世で1番魅力的なんだ。だからそう言う事はもう言うな。いいな。」
「…いいんですか?…後悔はしませんか?…」
丹羽は和希をギュッと抱きしめながら、
「お前がいい。いや、お前じゃなきゃ嫌なんだ。」
「俺も…」
和希も丹羽にギュッと抱きつきながら、
「俺も王様でなければ嫌です。王様以外の人に触られたくありません。」
「和希…」
「王様だから抱かれたいと思ったんです。だから俺を抱いて下さい。」
「いいのか?」
「はい。俺の中を王様でいっぱいにして下さい。俺は王様に幸せにしてもらいたい。そして王様を幸せにしてあげたい。王様と2人で幸せを築きたいんです。」
「俺もだ。俺が和希を幸せにしたい。そして和希に幸せにしてもらいたい。」
和希と丹羽はお互いの顔を見て幸せそうに微笑む。

付き合い始めてから3ヶ月。
身体を繋げるには時間がかかったのかもしれない。
けれども、その時間は和希と丹羽にとっては必要不可欠のものだから。
「王様、お誕生日おめでとうございます。」
「王様、生まれてきてくれてありがとう。」
「俺を愛してくれてありがとう。」
丹羽の耳元で囁く和希。
これからは今まで以上に幸せな時が刻まれる…
そんな未来を夢みながら2人は深く結ばれるのでした。




遅くなりましたが、王様、お誕生日おめでとうございます!!!
王様のお誕生日をお祝いするのも今年で4度目です。
という事で過去にどんな話を書いていたんだろうかと読み直したのですが、羞恥以外のなにものでもありませんでした(笑)
王様が大好きだから結ばれたい…
でも、自分の身体に自信がなくて悩む和希ですが、そんな悩みは必要ありませんでした。
王様にとって和希は誰よりも愛する人なのですからねvv
王様、これからは和希と幸せになって下さい♪
                       2010/8/23