Television

涙を流しながらテレビを見ている和希を丹羽は困った顔で見ていた。
今日は丹羽が子供時代にやっていたアニメが2時間の特別番組として放送していた。
しかも、未来を舞台にして作り直したものだった。
あの、懐かしい番組のキャラがどのように生まれ変わるか見てみたいと思った丹羽はテレビをつけてみていた。
ちょうど番組が始まった頃、和希が丹羽の部屋に訪れて一緒にその番組を見始めたのだが…
丹羽以上に真剣にテレビを見る和希に最初は可愛い奴と思って見ていた丹羽だったが、途中からその考えが変わった。
和希が番組にのめり込んでしまったからだ。
CMの途中に声をかけても『後にして下さい』といのめり具合だった。
さらにタオルを手に涙を流し始める和希をどうしたものかと思いながら丹羽は見ていたのだった。

ようやく番組が終わったので丹羽は和希に声をかけた。
「和希、面白かったか?」
「はい。こんなに考えさせられるとは思いませんでした。素敵なアニメでしたね。でも、人間って怖いですよね。傲ったりしてはいけないと思いました。」
タオルで涙を拭きながら和希は言う。
「いや…だからさ…そんなに真剣にならなくてもいいんじゃないか?」
「何を言ってるんですか!これってもしかしたら本当にありえる未来の姿なんですよ!」
和希は力みながら、
「人間って何でもできるってつい思ってしまうんです。でも、それって間違いなんですよね。人間は自然と共存してこそはじめて生きられるんです。自然をコントロールできると思った時点で人間は間違いに気付かないといけなかったんです。哲也もそう思いませんか?」
「あ…そうだな…」

丹羽は困ってそう言った。
実は途中からテレビどころではなかったからだ。
隣で涙を流しながら、番組に夢中になっている和希が気になってテレビに集中できなかったのである。
そんな事は知らない和希は、
「俺も気を付けないといけないと思いました。科学が進むと人間は傲慢になってしまう所がありますからね。この事を頭の片隅に常に置いて仕事に励みたいと思います。」
「お…おお…そうか…頑張れよ、和希。」
「はい。哲也、こんないい番組を教えてくれてありがとう。」
ニッコリと笑っていう和希に丹羽は複雑な思いを抱えていた。

その番組の話は人間が破壊してしまった自然を人工的に作るという話だった。
そして自然を人工的に作った人は自分は神をも超えた存在だと思うようになり、独裁者になっていく。
しかし、そんな独裁者はやがて皆に受け入れなくなり、更に人工的に作った自然のプログラムが自分の思い通りにならなくなったのでそれを自ら破壊してしまうという話だった。
その話に和希は経営者として何かを感じたのだろう。
「いつまでも人の意見を聞ける人間になりたい」
という新たな目標ができた和希はこれからの事を考えますと言って丹羽の部屋から出て行ってしまった。
今夜は久しぶりに和希と2人でゆっくりと過ごせる夜だった。
甘い夜を期待していたのに、それをテレビ番組で台無しにされた丹羽はこれからは和希が来る日にはテレビは絶対につけないと心に決めるのであった。







先日見たテレビで思いついた話です。
テレビに夢中になってタオルをもって涙を流す和希…
想像しただけで萌えでしまいました(笑)
王様じゃなくても、そんな和希に見入ってしまうと思いました。
                    2009/9/7