Two Persons
日本に帰って来て、本社で初めて会った自分付きの秘書…それが石塚だった。
非常に優秀な人材で、社長である父が手放すのが惜しいくらいだと笑って言っていた。
俺も数年ぶりの日本で途惑う事も多いと思っていたので石塚の存在はとても助かっていた。
「これからよろしくお願いします。」
そう言って手を差し伸べてくれた石塚に俺の心臓の動きは速くなっていた。
「今思えば、あれって一目惚れだったのかな?」
ソファーに座ってコーヒーを飲んでいた和希は首を傾げながらそう石塚に尋ねた。
石塚はいきなり何を言い出したんだと言う顔をして、
「和希様、話がいきなりすぎて私には理解できません。」
「えっ?ああ、そうだよな。」
和希は1人納得して頷いていた。
そんな和希を石塚は途惑った顔で見ていた。
「和希様、誰に一目惚れなさったんですか?」
「えっ?誰にって…石塚以外に誰がいるんだ?」
「…私…ですか…?」
「ああ。誰を想像していたんだ?」
悪戯っ子のように微笑みながら和希は石塚に聞き返す。
困っている石塚の手を和希はそっと握ると、
「今、初めて石塚に会った時を思い出していたんだ。」
「私とですか?」
「うん。本社の社長室で社長から俺の秘書だって紹介されて会った時、ドキッとしたんだ。こんな綺麗な人が俺の秘書だなんてさ。」
「それは…」
石塚の頬がほんのり赤くなる。
「綺麗って言うのは和希様に使う言葉で、私には勿体ないお言葉です。」
「だって、本当にそう思ったんだから仕方ないだろう?その時石塚が笑って“よろしくお願いします”って言って手を差し伸べてくれたんだ。」
「よく覚えています。」
「本当に?」
「はい。私もこんな可憐な方の秘書をさせてもらえるかと思うと嬉しくてドキドキしていたんですよ。」
「石塚…」
嬉しそうに微笑む和希に石塚はソッと触れるだけのキスを落とす。
「その上こんな可愛らしい方の恋人になれるだなんて、あの時は想像もしていませんでした。」
「…俺も…」
真っ赤な顔のまま、和希は答える。
「石塚…今日はもう仕事終わりにしていい?」
「はい。大丈夫ですが…」
「良かった。」
和希は安心した顔をした後、
「祐輔、お誕生日おめでとう。今日1日と言っても後数時間だけれども2人きりで祐輔のお祝いをしたいんだ。」
「和希様…」
「様はいらない。」
頬を少しだけ膨らませて和希は答える。
「分かりました、和希。で、どんなお祝いをして下さるのですか?」
「まずは食事に行こう。レストランを予約しているんだ。その後はホテルの部屋でワインとケーキで2人きりで祐輔のお祝いをしたいと思ってるんだ。」
「ケーキとワインだけですか?」
「えっ?他に何か欲しかった?」
困った顔をする和希の耳元に石塚はそっと囁いた。
「和希も頂きたいのですが、よろしいですか?」
「馬鹿!そんな事わざわざ確かめなくても当たり前だろう。」
真っ赤になりながら視線をずらして答える和希が可愛らしくて石塚はクスクスと笑っていた。
そんな石塚を少しだけ睨みながら、
「ほら、もう行くからね。レストランの予約に遅れるから。」
「はい。」
まだ笑っている石塚に背を向けて立ち上がった和希は耳まで赤くなっていた。
石塚祐輔さん、お誕生日おめでとうございます。
お誕生日当日にお祝いできて嬉しかったです。
これから和希ときっと甘いお誕生日を過ごすのでしょうね。
幸せな時間をお過ごし下さい。
2009/4/27