☆ホワイトデー☆

もうじきホワイトデー。
バレンタインに和希は恋人の石塚から手作りのチョコをもらった。
石塚はとても器用で料理はもちろんの事、お菓子作りも得意だ。
石塚らしく、チョコはビターなトリュフチョコ。
ほんのり香るブランデーの香りがおいしさをさらに引き立てていた。
もらった時、手で食べようとした俺に口移しで食べさせてくれた石塚。
ただでさえ柔らかいトリュフなのにこれ以上柔らかくしてどうするんだと突っ込みたかったけれどもそれはやめにした。
キスとチョコで2重に甘い幸せ。
本当に自分は幸せなのだとあの時痛感した。

そして、ホワイトデーが近づくにつれ焦ってきていた。
和希は石塚のように器用ではない。
いや…編み物に関しては器用なのだが、それ以外ではからっきし駄目なのであった。
お菓子を作ってあげたいけど…
そう思った和希だが、この時期は仕事が忙しく授業にでるのも一苦労な日々を送っている。
悩んだ和希はそれでも何とか時間を作り、手作り菓子を用意した。

そしてホワイトデー当日。
仕事が終わった和希に石塚は可愛くラッピングされた箱を和希に手渡した。
「これは?」
「今日はホワイトデーなので、和希様に私からの贈り物です。」
「えっ?だってバレンタインにもチョコをくれたじゃないか。」
「はい。でも、それはそれ。これはこれです。私の思いを受け取ってもらえますか?」
「当たり前じゃないか。開けてもいい?祐輔。」
和希の顔が上司から恋人の顔に変わった。
それに合わせて石塚も変わる。
「もちろんです。和希にあげたんですからね。」
嬉しそうに箱を開けた和希は中から出てきたケーキに見とれてしまった。
それは抹茶のシフォンケーキ。
小さいけれどもちゃんと丸い形をしていた。
「美味しそう…ありがとう、祐輔。」
「どういたしまして。」
和希はケーキをジッと見つめたまま動かない。
不審に思った石塚が和希に声をかけた。
「どうかしましたか、和希。」
「ううん。」
首を振るが明らかに様子が変なのは一目瞭然。
「何か私に隠していますね。正直に仰らないとお仕置きしますよ。」
「…祐輔の…意地悪…」
「意地悪で結構です。さあ、何を隠しているのですか?」
石塚に見つめられ、困った顔をしていた和希だが観念したように机の引き出しから紙袋を取り出した。
「それは?」
「祐輔へのホワイトデーのプレゼント。クッキーを作ってみたんだけど、上手く出来なくて…こんなのでごめんなさい…」
石塚が袋を開けると中には少し焼きすぎたクッキーが入っていた。
俯きながら言う和希を石塚はギュッと抱き締める。
「祐輔?」
「嬉しいです。まさかこんな素敵な贈り物をもらえるとは思いませんでした。」
「素敵なって…でも、不味いかもしれないよ。」
「いいえ、和希が作った物です。美味しいに決まっています。」
そう言うと石塚は袋の中からクッキーを取り、一口食べる。
少しパサついてはいるけれども、甘過ぎないで上品な味だった。
「美味しいです。」
「本当?」
嬉しそうに和希は言う。
「はい。折角和希が作ってくれたので紅茶を入れてきますね。2人でお茶会をしましょう。」
ホワイトデーの甘い夜はまだ始まったばかり…
                  終わり




2009年3月15日『COMIC CITY HARU 14』で無料配布したペーパーの小説です。
ホワイトデーを意識して書いた話です。
私の中の石塚さんはとても器用なので何でもそつなくこなしてしまいます。
石塚さんが『お仕置き』と言うと思わずドキッとしてしまいます。
中嶋さんとは違う『お仕置き』にドキドキしてしまうのは私だけかもしれませんね(笑)
                   2009/12/7