Afterwards 2

学生会室でご機嫌良く丹羽は仕事をしていた。
その手際の良さで、いつも仕事をこなせばこんなに書類はたまらないはずだ…と丹羽を見ながら中嶋は思う。
部屋を出る時「いってらっしゃい。」と言ってくれた和希。
部屋に戻れば「おかえりなさい。」と言ってくれるだろうか?
お昼まで後一時間。
今頃和希は何をしているだろうかと丹羽は想像する。
さっさと片付けて、お昼を持って部屋に戻ろう。
ニヤニヤしながら考えている丹羽に中嶋は声を掛ける。
「いやに機嫌がいいな、哲っちゃん。」
「あーそうか?うん、そうだな、今の気分は最高だぜ!」
「昨夜、いい事でもあったか?」
「まあな、ヒデのアドバイスのお陰でな。」
「ほう。という事はついに遠藤とできたんだな。」
「露骨に言うなよ、ヒデ。」
「本当の事だろう。」
「まあな、そうだけどよう…」
丹羽は嬉しそうに言う。
「遠藤は今日も仕事か?」
「いや、俺の部屋にいる。」
「お前の部屋にか?」
「ああ、ちょっととばしすぎてな、動けなくて休んでいる。」
「で…どうだった?」
「へっ?どうだったって何がだよ。」
「言わなくたって解るだろう?」
「…?」
「フッ、俺をじらしているつもりか?哲っちゃん。」
「じらすって…あっ!まさかお前夕べの事聞こうとしている訳じゃないよな。」
「そうだが。」
シラッと言う中嶋に顔を真っ赤にして丹羽は叫ぶ。
「ま…まさか本気か?本気で俺と和希の事聞くつもりなのか?」
「和希ねぇ…一晩で“遠藤”から“和希”に呼び方が変わるとはな。」
「わ…悪いかよ。」
「いや、遠藤も“王様”から“哲也”に変わったのか?」
チクッと胸が痛む。
「あいつはまだ“王様”って俺の事呼んでるよ。」
「何だ?まだ“王様”なのか?」
「仕方ないだろう。あの和希にあれもこれも一変に変えられる訳ないだろう。」
ふて腐れて言う丹羽に中嶋はニヤッと笑い、
「そう拗ねるな。困ったらまた助けてやる。」
「本当か?ヒデ。」
パアーと明るい笑顔になる丹羽を見て、中嶋はため息を一つ付く。
本当にこの二人、丹羽と遠藤には手を掛けさせられる。
別に無視しても構わないのだが、そうはいかない訳がある。
恋人の啓太が遠藤の親友なのである。
人が良い啓太は丹羽と遠藤を何とかしようと走り回るが所詮一人ではどうにもならず、俺に泣きついてくる。
その結果がこれだ…俺は丹羽の恋愛相談役になってしまった。
「で…夕べは心置きなくできたのか?」
「おう、聞いてくれるか、ヒデ?」
機嫌が良くなった丹羽は調子良くベラベラ話出した。
それを聞きながら、これをネタに遠藤に、いや、理事長に何ができるかと中嶋は考えていた。


翌日の昼、なんとか動ける様になった和希はサーバー棟へ行く為、寮を出た。
啓太と早めの昼食をとり、丹羽にはメールでサーバー棟へ行く事を伝えた。
啓太に一昨日の丹羽の誕生日に何があったのか散々聞かれ、逃げる様に食堂から出てきた。
啓太には色々心配掛けたからある程度は話す予定だったが、あそこまで聞かれるとは思ってなかったので、少々面食らった。
食堂を出る時、“後は部屋でゆっくりと聞かせてね”とさりげなく言われて、少し複雑な心境になった。
身体はまだきついけど、昨日よりはまだましだ…そう思いながらゆっくりと歩いていた和希は、丁度学生会室から帰ってきた中嶋に会った。
「何だ遠藤、こんな時間に何処に行くつもりなんだ?」
「サーパー棟です、中嶋さん。」
和希はニコッと笑いながら言う。
そんな和希を中嶋はニヤニヤ笑いながら見つめ、
「そういえば遠藤、丹羽から面白い話を聞いたぞ。」
「えっ?面白い話?王様から?」
「ああ、一晩寝ずに丹羽に可愛がれたそうだな。」
「なっ…」
「随分と良い声で鳴くそうだな、遠藤は。」
「ど…どうしてそれを…」
「丹羽が昨日嬉しそうに俺に話してくれたぞ。」
「お…王様が…?」
「ああ、よほど嬉しかったんだろうな。聞かない事までペラペラと喋ってくれたぞ。もっと話そうか?」
「い…いえ、もう十分です。まったくあの人は…」
和希は頭を抱えた。
確かに王様には我慢をさせたと思っている。
だから一昨日だって王様の気の済む様にしたつもりだった。
自分としてはもう少し手加減して欲しかった。
なのに…
いくら嬉しかったとはいえ喋るか?普通、他人にそういう話を。
いや、中嶋さんは他人と言っては失礼にあたるだろう。
俺達が今こうしていられるのは、中嶋さんと啓太のお陰なのだから。
でもだからといって、言って良い事と悪い事があるだろう?
和希が考え込んでいると、ククッと笑いながら中嶋は言った。
「まぁ、それだけ丹羽は嬉しかったんだろうな。」
「中嶋さん…」
「気にするな。誰にも言うつもりは無い。一人を除いてはな。」
「一人?」
「ああ、こんな面白い話を理事長に話さない訳ないだろう。」
「あ…貴方は何を考えているんですか?」
「さあな、だが利用できる物は利用しないとな。」
「…」
「フッ、いい目をするな、遠藤。別に俺は無理矢理丹羽から聞き出した訳じゃない。あいつが勝手に喋ったんだからな。」
「中嶋さん…王様は今どこにいますか?」
「丹羽ならまだ学生会室だ。」
「そうですか。ご親切にありがとうございました。」
「サーバー棟へは行かないのか?」
「ご心配頂かなくても、学生会室へ行った後に行きますよ!」
そう言い放って和希は学生会室へと向かう。
そんな和希を面白そうに中嶋は見つめながら呟いた。
「さぁ、どうする?哲っちゃん」




王様の誕生日の翌日と翌々日の話です。
思いが叶って結ばれた和希と王様。
幸せのはずが王様の一言(?)でとんでもない事になってしまいました。
中嶋氏にからかわれただけなのに、真剣に王様を怒りに行く和希。
和希、あんまり王様の事怒らないであげて下さいね。
「Echo」のトーコ様から頂いた拍手コメントから考えついた小説です。
トーコ様どうもありがとうございました。




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