Another Addition1
〜この小説をお読みになる前に〜
この話は2007/11/5にUPした『Another』の元となった話です。
中嶋さんに恋をした和希が想いを告げられぬまま失恋をし、和希に想いを寄せている王様が和希を励まし、慰め、
そして和希と恋人になる…という話です。
『Another』を書いた時、N様からコメントで「どうやって王様が和希をおとしたのしょうか?」と言うお言葉を
頂いて書いてみたくなり、できたのがこの小説です。(N様ありがとうございました)
少し長い連載になると思いますが、良かったらお付き合い下さい。
なお、この小説はいつもの続き物とは違いますので、ご注意下さい。
初めて貴方の存在を知ったのは、入学者選抜リストだった。
まだ幼さが残る、でもとても綺麗な15歳の少年…それが貴方、中嶋英明だった。
一目で引きつけられたと言っても間違い無い程、貴方は俺の心を捕らえた。
そして入学式の日、理事長室のモニターから見た貴方はあれから数ヶ月しか経ってないのに、更に美しくそして大人になっていて、俺の心に恋と言う形で入り込んできた。
時は流れ…あの入学式から2年経ち、俺“鈴菱和希”は“遠藤和希”としてここベルリバティスクールの1年生として学園に在籍している。
転入したての啓太と一緒に和希は学生会の手伝いをしていた。
「和希、ここなだけど…」
「うん?ああ、これはこうすればいいんだよ。」
「あっ!そうか!ありがとう和希。」
「いや、それよりも今の説明で解ったか?」
「うん。」
時々和希にやり方を聞きながら啓太は仕事を進めていく。
初めの頃は右も左も解らなかった啓太だが、今では少しやり方を聞けば殆どの仕事をこなせる様になっていた。
そんな2人を学生会の2人…丹羽と中嶋は微笑ましく見守っている。
と言っても、丹羽は和希を、中嶋は啓太をそれぞれ見ているのだが、1年生の二人は気付いていない。
「そう言えば遠藤。」
丹羽が和希に声を掛ける。
「はい、何ですか?王様」
首を傾げて答える和希に丹羽はドキッとする。
「お前、最近ここに来てばっかりだろう?手芸部の部長に遠藤を返せって言われたぜ。」
「あっ…ごめんなさい、王様。」
「いや、謝って貰いたくて言った訳じゃないんだ。俺は遠藤がここに来てくれて凄く助かってるんだぜ。でもよ、遠藤が無理してるんじゃないかと思ってさ。」
「俺が?」
「だってお前、そっち方面でここに入学したんだろう?だったらその腕を磨きたいだろう?」
和希はクスッと笑う。
「王様は優しいんですね。でも気にしないでいいんですよ。ここには、学生会室には俺の意志で来ているんですからね。」
「そうか?ならいいが…」
そう言いながらも不安そうな顔をする丹羽に、和希は微笑んで答える。
「本当に気にしないで下さいね。あっ!でも本当に悪いと思ってるんだったら学生会の仕事をサボらずにちゃんとして下さいね。」
「クックッ…」
中嶋から笑いがこぼれる。
「あ〜ヒデ?何笑ってるんだよ。」
「いや…1年にサボらないで欲しいとお願いされるとはな。さすがだな、丹羽哲也生徒会長殿。」
「なっ…ヒデ、てめえ。」
「何だ?的を得すぎて何も言えないのか?哲っちゃん。」
「う…勝手に言ってろ。」
「ああ、そうして貰おうか?」
そんな丹羽と中嶋のやりとりを見ていた1年コンビ和希と啓太は顔を見合わせて笑う。
楽しそうに丹羽と中嶋を見ている啓太。
でもその目は丹羽を見てはいない。
中嶋だけを目で追っていた。
中嶋だけを見詰めている啓太を見て、和希は少し複雑な気持ちになるが、その思いを振り切る様にチラッと中嶋を見た。
その綺麗な横顔を心に刻み込む。
恋なんてしてはいけない…本当の自分は鈴菱和希なんだから
恋なんかに溺れてはいけない…自分は鈴菱グループを背負う身なんだから
でも今だけは…来年の3月までは遠藤和希として貴方を、中嶋英明を見ている事を許して欲しい
告白する気なんて無い
恋人として側にいる気も無い
ただ後輩として側にいる事だけを許して欲しい
願いはただそれだけ
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