Be Diffident 1

「あーあ、眠くなっちゃったよ。」
昼食を食べた後、中庭の木陰に座っていた啓太があくびをしながら言った。
隣に座っていた和希はクスクス笑いながら
「啓太プールではしゃいでいたからな。」
「だってこんなに良い天気なんだよ。気持ちいいじゃないか。」
「それで疲れたんだろう。でも、お腹一杯になって眠くなるなんて子供みたいだな。」
「なんだよ、和希大人ぶってさ。」
「悪い、気を悪くしたならごめんな。」
「別にいいけどさ。ところで和希、体育プールになってから一度もプールに入ってないよね。どうして?」
「え…そうだっけ?」
「とぼけるなよ。」
「え〜と、それは…」
和希が困っていると
「キスマークがあるから服が脱げないんだろう、遠藤。」
「え?」
背後に中嶋と丹羽がいた。
啓太は嬉しそうに
「どうしてここに、中嶋さん。」
「教室に戻ろうとしてたらお前達の姿が見えたんで来たんだが、随分面白い話をしているじゃないか。」
「そうなんですよ、中嶋さん。和希ってばまだ一度もプールに入ってないんですよ。」
「やはりキスマークか。」
「違います、中嶋さん!啓太の前で妙な事言わないで下さい。」
「むきになって否定する所が怪しいな、遠藤。」
「そうなの?和希。」
怪訝そうな顔で啓太が聞く。
「そんなわけないだろう。」
「じゃあ、なんでプールに入らないの?」
「うっ…だから…それは…」
いままで黙っていた丹羽が和希に声を掛ける。
「遠藤、本当の事言ってくれないか?」
「王様?」
「疑いたくはないが、このままだと妙な勘ぐりをしちまいそうだ。」
「な…何言ってるんですか。王様まで俺の事信じられないんですか?」
「信じたいから聞いてるんじゃないか。」
「なんだかんだって言って、俺の事疑ってるんですね。」
「そうじゃねえよ。」
「そうです。最低ですね、王様。」
「なんでそうなるんだよ。おれはお前を信じたいだけなのによう。」
「だったら黙って信じて下さい。」
「それが無理だから、こうして聞いてるんじゃないか。」
険悪なふいんきな丹羽と和希を見て啓太はオロオロし、中嶋に助けを求めた。
「中嶋さん、何とかして下さい。」
「俺がか?」
「そうです。このままじゃ和希と王様、仲違いしちゃいますよ。」
「そうだろうな。」
「だから、中嶋さんなら二人をうまく仲直りさせられるでしょう。助けて下さい。お願いします。」
「ふぅ…仕方ない。お前の頼みなら何とかするか。」
「本当ですか?」
啓太の顔がパッと明るくなる。
揉めている丹羽と和希の側に中嶋は行く。
「いい加減にしないか、二人共。啓太が心配するだろう。」
「だってよう、ヒデ。遠藤の奴怪しくないか?本当にキスマークがあるかもしれないだろう。」
「王様、やっぱりあなたって人は俺の事そういう目で見てたんですね。」
「あ…いや…それは…」
「信じてるって言ったのに…」
そこまで言うと和希の目から涙が溢れてきた。
「え…遠藤…」
丹羽は慌ててしまった。
遠藤を信じてないわけじゃない。遠藤が簡単に他の男に身体を預けたりするわけがない。そんな事は分かっている。でも、真実が知りたいだけなのだ。それがどんなに些細な事でも。遠藤の口から直接聞きたかったんだ。
溢れる涙が止まらなくて和希は、俯いてしまった。
「俺…寮に帰ります。午後の授業…出ないから、啓太、後頼むな。」
「和希…」
それだけ言うと和希は寮に向かって走り出した。




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