Be Diffident 3

寮に着いた丹羽は和希の部屋へ行く途中に篠宮に会った。
篠宮の手にある氷枕に気付いた丹羽は
「誰か具合が悪いのか?」
「1年の遠藤だ。」
「遠藤が?」
「ああ、さっき寮の近くで会ってな。顔色も悪いし少し熱もあるようなので、これから寝かせようと思っていた所だ。」
「俺も一緒に行って良いか?」
「お前がか?別に構わないがどういう風の吹き回しだ?」
「いや、遠藤には学生会で世話になっているからな。」
「そういえば伊藤とよく学生会室へ手伝いに行ってるな。」
「ああ。」
丹羽と和希が付き合っている事を知らない篠宮は疑いもせずに丹羽と共に和希の部屋へ行きドアをノックした。
「遠藤、俺だ篠宮だ。入るぞ。」
中に入るとちょうどパジャマに着替え終わった和希がこちらを振り返り
「すみません、篠宮さん。」
そこまで言いかけて和希は顔を強張らせる。
「王様、なんでここに…」
「途中で会ってな。遠藤の事が心配だからと言ってついてきたんだ。」
「そうですか。」
丹羽を見ずに和希は答える。
「顔色がまだ悪いな。後でお粥を持ってくるから今はゆっくりと休むと良い。」
そう言いながら和希を寝付かせタオルケットを掛ける。
「はい、心配かけてごめんなさい、篠宮さん。」
「本当にそう思うなら、早く寝て直す事だ。だいたい遠藤は普段から無断外出、無断外泊ばかりするから体調を崩すんだぞ。もっと自分の身体を労らないといかんぞ。」
「はい…」
バツが悪そうに和希は答える。
「それじゃ丹羽行くぞ…丹羽どうした?」
「遠藤が寝付くまで俺ここにいるよ。」
「丹羽?」
「ほら、体調が悪い時って不安になるだろう?」
「ああ、丹羽にしては珍しく気がきくな。それじゃ頼むとするか。」
「任せとけ。」
篠宮が出て行くと気まずい空気が流れる。
「王様、もう授業に戻って下さい。俺一人で大丈夫ですから。」
「遠藤俺は…」
「一人にして下さいって言ってるでしょう!!」
ベットの上で上半身を起こしながら和希は声を荒げた。
「俺は今一人になりたいんです!お願いだから俺一人にして下さい!」
俯いていても分かる和希の涙声。
また泣かせてしまった。俺はどうしてこう、いつも遠藤を悲しませる事ばかりしてしまうんだろう。遠藤にはいつも笑っていて欲しいのに。丹羽はそう思いながら和希の側に行くと跪いて話し出した。
「遠藤さっきは本当に悪かった。別に本気でお前の事疑ったわけじゃないんだぜ。でもお前はいつも俺に何も言わないだろう。」
「だって俺年上だから。」
和希は顔を背けてボソッと言う。
丹羽はため息をつきながら
「いつも言ってるだろう。そんな事は気にするなって。」
「でも…」
「お前の恋人は誰なんだ?」
「…」
「遠藤!」
「王様…です。」
「なら、意地を張らないで俺に何でも話せ。」
「無理です。」
「できるだろう。」
「やった事ないから自信がありません。」
他人に心を許す事など許されずに育ってきた和希にとってそれは未知の世界だ。だから、どうしていいか分からなかった。
「じゃあ、やってみろ!」
「え?」
驚いた和希が顔を上げると、そこには自信たっぷりの笑顔をした丹羽の顔があった。
「やった事ないんだろう?だったらやってみろ。お前なら必ずできる。おれはそう信じている。」
「王様。」
「なっ、やってみろ。」
「あなたって人は…」
和希はそう言うと、丹羽の頬にそっとキスをする。
「分かりました。努力します。」
和希の笑顔が、キスが嬉しくて丹羽はガバッと和希を抱きしめる。
「お…王様、苦しいです。」
「お前が悪いんだよ、可愛い事するから。それよりもさっきの答え教えてくれるか?」
「なんの答えですか?」
「プールに入らない理由だ。」
「誰にも言いませんか?」
「おう、男の約束だ。」
和希は顔を赤らめながら丹羽の耳元で答えた。
「16歳の子の前で水着姿になる自信がなかったんですよ。」




最後のセリフを和希に言わせたくて書いた話です。
ただそれだけなんです。
プールの話というより単なる痴話ゲンカの話になってしまいました。
でもプライベートでは王様や啓太、中嶋さん達と一緒にプールや海に入って楽しく遊んでいると思います。

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