Business 1

“コンコン”
「遠藤です。失礼します。」
会計室のドアをノックし、和希は中に入って行った。
「和希!」
啓太が嬉しそうに和希の所まで走って行き、抱き締める。
和希も嬉しそうに啓太を抱き締めた。
「久しぶりだな。元気だったか?」
「うん!和希は?出張大変じゃなかった?」
「平気だよ。今回は10日でちょっと長かったけどな。長期出張はこんな時じゃないといけないから仕方ないさ。それよりもお土産買ってきたんだ。」
「ありがとう、和希。でも、俺お土産よりも和希が元気で帰って来てくれた方が嬉しいよ。」
「啓太…お前って奴は…こんないい子に育ってくれてお兄ちゃんは嬉しいよ。」


「いい加減にしないか、遠藤。」
和希に向って西園寺が言う。
「西園寺さん…」
「いくら久しぶりとは言え、少しやりすぎではないのか?」
「そうですか?嬉しくてつい…」
「全く…」
呆れてため息を付く西園寺に七条は、
「まあいいではありませんか?郁。啓太も遠藤君も10日ぶりの再会なんですから。きっと嬉しいんですよ。」
「臣。貴様が甘やかすからよくないんじゃないか?」
「恋人を甘やかすのは当たり前の事でしょう?僕はどこかの誰かとは違いますからね。」
そのどこかの誰かって間違いなく中嶋を指してるよな…とその場にいた全ての者は思ったが誰も口には出さなかった。


「遠藤君、10日間の海外出張お疲れ様でした。今日はこの後は自由なんですよね。今アイスティーを入れますので、ゆっくりして下さいね。」
「また、俺の予定を調べたんですか?もう…」
「可愛い啓太が遠藤君の事を心配しますからね。仕方なくした事ですので気になさらないで下さいね。」
「気にって…まいったな。七条さんには本当に敵わないんだから。」
「フフッ…」
「和希、俺七条さんと一緒にお茶入れてくるから待っててね。」
そう言うと七条がいる簡易キッチンに啓太は向って行った。
「今回の海外出張は上手くいったのか?」
「あっ、はい。今回は鈴菱本社の件で行ってきたので、少し大変でしたが何とか無事に済みました。」
「そうか。だが、こんな所で道草をしていていいのか?学生会室で中嶋が待っているんではないか?」
「えっ…」
和希の顔を少し赤くなる。
「だ…大丈夫ですよ。これから行きますから。最初に啓太にお土産をどうしても渡したかったんです。西園寺さんと七条さんの分もありますからね。」
和希は鞄の中からお土産を取り出すと机の上に置いた。

「和希、お待たせ。」
啓太が七条と一緒にアイスティーを持って来た。
「郁にはアイスティーではなく、ホットにしましたので。」
七条はそう言うと西園寺の前にカップを置いた。
「美味しい。啓太、紅茶入れるの、上手くなったな。」
「本当?俺七条さんに教わってるんだけどなかなか上手くいかなくて…」
「そんな事ないよ。凄く美味しいよ。」
「ありがとう、和希。」
和希に向って啓太は嬉しそうに笑う。
そんな啓太を和希も嬉しそうに微笑んでいた。
「相変わらず啓太が1番という所は変わりないのだな。それではあの男も苦労するだろうな。」
ボソッと西園寺は呟いた。
和希は無意識に中嶋よりも啓太を優先する。
それは構わないのだけれども、中嶋はそれが面白くないらしい。
いくら和希が啓太を優先しても、それは大切な存在だからであって愛する存在である中嶋よりも上になる事はない。
そんな事は解りきっているのにそれが許せない中嶋。
中嶋の以外な独占欲の強さには正直西園寺も驚いていた。


楽しそうに話していた和希はチラッと時計を見ると、
「啓太、俺そろそろ行くな。」
「えっ?どこに?理事長室?}
「いや…」
「啓太。遠藤君は学生会室に行くんですよ。」
「あっ…」
啓太は慌てて和希に言った。
「ごめん、和希。早く中嶋さんに会いたかったんだよね。俺嬉しくてつい引き止めちゃってごめんね。」
「なんで啓太が謝るんだよ。俺が啓太に会いたくて来たんだから気にするなよ。それじゃ、西園寺さん、七条さん失礼します。」
「ああ。帰ってきたばかりだ。あまり無理はするなよ。」
「はい。」
「遠藤君、お土産ありがとうございました。」
「いいえ。お口に合うといいんですが。」
「ここのチョコは美味しいと有名じゃないですか。嬉しいですよ。後で啓太と一緒に頂きます。」
「啓太、また後でな。」
「うん。食堂でね。」
「ああ。夕食一緒に食べような。」
そう言って会計室を出る和希を見送る啓太。
「夕食を食べに食堂にこられればいいのですがね。」
ボソッと七条は呟いていた。




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