Christmas Eve4

コーヒーを持ってきた丹羽は和希に1つコーヒーカップを渡すと、和希の向かい側に座った。
丹羽が座ると和希は、
「メリークリスマス!」
とふわりと笑って言った。
「メリークリスマス、和希!お前と一緒にクリスマスイブを祝えて嬉しいぜ。」
そんな丹羽の台詞に顔を瞬時に顔を赤らめた和希は少し照れくさそうに言う。
「哲也…それ…恥ずかしい…」
「そうか?別にいいだろう?」
「そうだけど…」
言い淀む和希を無視して丹羽は言う。
「さあ、食おうぜ!」
ケーキを半分に切る前に、丹羽は和希に、
「トナカイとサンタどっちがいいか?」
「えっ?どっちでもいいけど…」
「そうか?ならおれがトナカイでお前がサンタでいいな。」
そう言いながら、丹羽はチョコのプレートを口に入れる。
「あ…」
「どうした?和希。」
「俺、チョコ食べたかったのに。」
ふて腐れて言う和希に、
「子供みたいに頬を膨らます事ないだろう?」
「だってさ…一言ぐらい聞いたっていいじゃないか!」
「まったく…」
そう言うと丹羽は和希に口付けをする。
暫くしてから、丹羽は唇を離すと、ニカッと笑い、
「旨かったろう?」
「…」
真っ赤な顔をした和希は、恥ずかしそうに下を向きながら頷いた。
まさか口の中に入れたチョコをそのまま口移しで食べさせられるとは思わなかった和希は呆然としてしまい、チョコの味なんか解らなかった。
半分に切ったケーキをそれぞれのお皿に載せる。
ケーキを和希は一口食べると、
「あっ…これ、凄く美味しい…」
「だろう?七条に教えて貰った店で買ったんだ。」
「七条さんから教えて貰った店?だったら人気店だから今日なんて混んでただろう?」
「ああ、凄かったぜ。俺ケーキ買うのにあんなに並んだの初めてだぜ。」
「哲也…」
「でも並んだ価値はあったな。こんなに旨いんだからな。」
和希は嬉しそうに微笑む。
「うん。ありがとう、哲也。」
ふと、気付くと、丹羽の頬にケーキのクリームがついていた。
和希はクスクス笑いながら、
「哲也、顔にクリームが付いてるよ。まったく子供みたいなんだから。」
そう言いながら、顔を近づけるとペロッと舐めると、
「ごちそうさま。」
いたずらっ子の様に笑いながら言う和希に、丹羽は我慢出来ず、その場に和希を押し倒す。
食い入る様なキスをしながら、
「和希が悪いんだぞ。俺を煽るから…」
「んっ…何言っ…て…あん…」
丹羽は角度を変えながら何度もキスをする。
そして首へと唇を這わせ、舐めたり甘噛みする。
「はぁ…もう…やっ…」
「何が嫌なんだ、和希?こんなにしといて、嫌じゃないだろう?」
和希の顔をのぞき込みながら丹羽は言う。
拗ねた様な顔をする和希に、
「1回だけいいだろう?和希だってこの状態じゃきついだろう?」
布越しに和希自身を触りながら丹羽は言う。
「…1回…だけ…なら…」
ぱあっと明るい顔になった丹羽は、
「約束する!今は1回だけな!」
堪え性の無い恋人を持ったと密かにため息を付きながら、丹羽によって和希は快楽の世界に入って行く。


服を整えた後、和希は袋を丹羽に差し出す。
「哲也、これクリスマスプレゼントなんだ。」
「サンキュウ、和希。これは俺からだ。」
「ありがとう、哲也。開けてもいい?」
「ああ。」
四角い箱の中には丸いドームが入っていた…それは家庭用プラネタリウム『ホームスター』
「これ…」
「暗くするか?綺麗な星空が見えるぞ!」
そう言って立ち上がった丹羽は、部屋の電気を消し、『ホームスター』のスイッチを入れると、部屋の中なのにそこは星空だった。
「…綺麗…」
うっとりと見ている和希を嬉しそうに丹羽は見詰める。
「初めて2人で見た星空を思い出すな。」
「うん。確か七夕の夜だったよね?」
「ああ、和希があんなに星座に詳しいなんて驚いたぜ。」
「だから、あれは…」
「解ってるよ。“知識”として覚えていただけなんだろう?でも星空には大切な思い出があるんだろう?」
「哲也、覚えててくれたの?」
「もちろんだよ。和希にとっての大切な思い出は、俺にとっても大切な思い出だ。」
「ありがとう。でも今は啓太との思い出だけじゃない。哲也、貴方との思い出も沢山あるんですよ。」
「えっ?」
「七夕の夜に俺の大切な思い出を哲也が聞いてくれた事、学生会業務で遅くなって夜遅くに星空を眺めながら2人で寮まで帰った事、他にも沢山の思い出がありますよね。」
「ああ…そう言えばそうだな。」
「ええ、星空は俺と哲也の事いつも見守ってくれてましたから。」
「そうだよな。」
丹羽はそう言うと、和希の唇にあの時と同じ様にそっとキスをした。
「初めてのキス、思い出すな。」
「なっ…」
恥ずかしそうに俯いた和希に、
「さてと、俺も和希のプレゼントを開けてもいいか?」
「あっ…うん。」
丹羽が包みを開くと中から出てきたのは、真っ白なセーターだった。
「これって、和希が編んだのか?」
「うん。時間がなくてシンプルなデザインのものしか編めなくて、ごめんなさい。」
「何言ってるんだよ。凄くいいデザインじゃないか。和希、あの時の事覚えててくれてたんだな。嬉しいけど、もう無茶はするなよ。この間倒れた時は本当にびっくりしたんだからな。」
「えっ?どうして知ってるの?」
「どうしてって、俺が保健室に運んだからさ。」
「えっ…」
「和希達と別れて直ぐに啓太の叫び声が聞こえたから、ヒデとお前達の方にいったんだ。そうしたら真っ青な顔してお前が倒れて、側で啓太が泣きそうな顔してお前を支えて座り込んでているじゃないか。驚いたぜ。」
「…」
だからか…和希は思った。
啓太に黙っていて欲しいと頼んだ時、いやに歯切れが悪かったんで気にはなってたんだけど、まさか俺を運んでくれた人が哲也だったとは思わなかった。
迅さんも人が悪いよな。
全てを知っていて、啓太に黙っててあげる様に言うんだから。
「松岡先生には散々お説教されたけどな。」
「迅さんに?」
「ああ、俺のせいで和希が倒れたって。学習しない奴だ、それでも学生会会長なのかってボロクソに言われたぜ。」
「そんな…哲也のせいじゃなにのに。悪いのは俺なのに。」
「いいんだって。俺だって和希が疲れているか、いないかなんて解るんだ。だけど…悪いな、押さえがきかない時があってさ。」
「哲也だけじゃない。俺だって、どんなに疲れてたって哲也が欲しくて仕方がない時があるんだ。」
「和希…」
「大好きだから…哲也と出会えてこうして2人でクリスマスイブを迎えられて、俺、もの凄く幸せなんだ。」
「俺もだ、和希。愛してる。」
部屋いっぱいの星空の下で幸せいっぱいの恋人達は最高のクリスマスイブを迎え様としている。




「Christmas Eve」最後までお付き合いして読んで下さってどうもありがとうございました。
2人で迎える初めてのクリスマスイブ。
実は、チョコプレートを食べるシーンなんですが、予定にはなかったんです。
ナツ様のコメントで「チョコプレートは是非二人で…」と書かれているのを見て、思わず書き加えてしまいました。
ナツ様のお陰で素敵な作品に仕上がりました。
本当にありがとうございました。
和希から王様へのプレゼントはセーターと早くから決まっていたんですが、王様から和希へのプレゼントがなかなか決まらず苦労しました。
悩んだ末、家庭用プラネタリウム「ホームスター」にしたんですが、ネットで値段を調べたら結構なお値段で少し驚きました。
この後の続きを本日同時にUPしたお題「愛がたりないぞお前」に書いてみました。
もし良かったらそちらも読んでみて下さい。
皆様にも素晴らしいクリスマスが来ます様に願ってます。

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