Christmas Eve3
今日は12月24日。
今年は3連休なので、金曜の夕方から外泊している生徒も例年よりかなり多かった。
啓太と中嶋も昨日から1泊2日で旅行に行っている。
和希も昨日までに何とか仕事を仕上げて、今日1日の休みを貰った。
と言ってもサーバー棟から帰って来れたのは朝方の5時過ぎだった。
ふらふらになって寮の自分の部屋に入ると、制服のままベットに倒れ込み、すぐに寝てしまった。
机の上には、編み上がったセーターが綺麗にラッピングされて、カードと共に大事そうに置いてあった。
ふと目を覚ました和希は、外が暗くなっているのに気が付いた。
「えっ?今何時?」
慌てて時計を見ると、もう5時過ぎだった。
という事はあれから12時間も寝ていた計算になる。
「はぁ〜参ったな。こんなに寝るつもりじゃなかったのになぁ。哲也は今頃どうしてるだろう?」
和希が忙しいのを知っているのであまり連絡を寄越さない丹羽。
気を使ってくれるのは嬉しいんだけれども、時々寂しくなる。
もっと強引でもいいのに…と思う時もあるが、それはそれで困る事になるだろうなぁと思ってもいる。
そんな事を思いながら、起き上がった和希は携帯の着信ランプに気が付いた。
急いで携帯を開くと、それは丹羽からのメールで、内容を見て和希はクスッと笑った。
「良かった。」
そう言うと和希は制服を脱いでシャワーを浴びに部屋の浴室に入って行った。
メールには…
『ヒデに今日中に仕上げる様にと、一昨日に山の様な書類を貰った。何とか夜までには終わらせるから、それまで待ってくれ。終わったらすぐに連絡するからな。折角のイブなのに本当に悪い!!』
7時頃携帯がなって丹羽からの連絡が来たので、和希は食堂へと向かった。
「王様!」
丹羽の姿を見つけた和希は嬉しそうに言って走って丹羽の側に来た。
食堂の入り口にいた丹羽はバツが悪そうな顔をして立っていた。
「どうしたんですか?王様。そんな顔して。」
「いや…折角のイブなのに学生会の仕事でお前の側にいてやれなくて悪かったと思ってさ。本当なら夕食ぐらいどこか外の洒落たレストランでもと思ってたんだけどさ。悪いな、ここで。」
「俺は王様と一緒ならどこでも構いませんよ。それに今夜はどこに行っても混んでいるから、ゆっくりとできないし。俺は寮の食堂で十分ですよ。今夜のメインは何でしょうね。王様、早く食べに行きませんか?俺お腹が減ってるんです。」
「そうだな。俺もだ。昼飯抜きで仕事してたからな。」
「えっ?王様がお昼ご飯抜き?何があったんですか?具合でも悪かったんですか?」
驚く和希に丹羽は頭を掻きながら言う。
「お前…酷い言い方だな。早く仕事を終わらせて和希と一緒にいたかったんだよ。」
「王様…」
和希は丹羽の手をソッと握る。
人前では触れる事を嫌がる和希にしては珍しい行為に、丹羽は少々驚く。
「どうしたんだよ、和希。」
「王様の気持ちが嬉しかったんです。俺も王様に凄く会いたかったんですよ。だから今日は仕事を休みにして貰ったんです。」
「えっ?休みだったのか」
「はい。」
「何だよ、それならそう言ってくれればいいのによぅ。悪かったな、折角の休みにどこにも連れてってやれなくてさ。」
「いいんですよ。実は俺今日1日中寝てましたから。」
恥ずかしそうに和希は笑いながら言った。
「でも、今は側にいてくれるでしょう。この後の時間は俺と2人で過ごしてくれますか?」
「ああ、仕事も全部終わらしてきたから大丈夫だ。ならさっさと飯を食って俺の部屋に行こうぜ。2人きりでイブのお祝いをしようぜ。」
「はい!」
少し頬を赤くして和希は答えた。
夕食後に1度部屋に戻ってから和希は丹羽の部屋に行った。
手には丹羽へのプレゼントのセーターとカードが入った紙袋を持っていた。
ノックをして部屋に入ると、卓上の机の上には小さなホールのケーキが置いてあった。
「哲也、このケーキ…」
「ああ、今夜の為に予約したんだ。このくらいの大きさなら2人で食べられるだろうと思ってさ。折角のクリスマスなんだ、ホールのケーキがあった方がいいだろう。」
「これを取りに行って、お昼ご飯食べ損ねちゃったの?」
「まあな。でも仕事を溜めたのは俺だから仕方がないさ。」
「ありがとう、哲也。」
和希は丹羽の頬にそっとキスをして微笑む。
丹羽は、和希にキスをされた頬をさすりながら、
「飲み物、コーヒーでいいよな?」
「あっ、うん。」
照れを隠す様に備え付けのミニキッチンへ向かう丹羽を見て、和希はクスッと笑うと机の側に座った。
直径10cm程の小さな苺のショートケーキ。
クリスマスらしくメレンゲの小さなサンタとトナカイ、『Merry Christmas』と書かれたチョコのプレートがのっている。
丹羽がこれを自分の為に用意してくれたと思うと、無性に嬉しくなる和希だった。
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